ロールスクリーンを現場で確実に納めるための基礎知識と実務ポイント
「ロールスクリーンってブラインドと何が違うの?」「正面付け・天井付けってどっちがいいの?」「下地がなくてビスが効かない…」——初めての内装現場だと、こうした疑問や不安がつきものです。この記事では、建設内装現場で職人が実際に使う言い回しや注意点を交えながら、ロールスクリーンの基礎から施工のコツまで、やさしく丁寧に解説します。読み終える頃には、採寸・発注・取付・納めの流れが具体的にイメージできるはず。迷いやモヤモヤを一緒に解消していきましょう。
現場ワード(ロールスクリーン)
| 読み仮名 | ろーるすくりーん |
|---|---|
| 英語表記 | roller screen / roller shade(roller blind) |
定義
ロールスクリーンとは、生地(布や樹脂フィルムなど)を上部のパイプに巻き取り、上下に昇降させて採光や目隠しを行う内装用の窓装飾・間仕切り製品の総称です。操作はチェーン式・スプリング式(プルコード)・電動式が一般的。住宅・オフィス・商業施設で広く使われ、窓だけでなく収納の目隠しや簡易間仕切りにも採用されます。カーテンと比べて見た目がすっきりし、ブラインドよりも柔らかい表情が出せるのが特徴です。
ロールスクリーンの種類と機能を理解する
操作方式の違い
操作方式は現場の納まりと使い勝手に直結します。メリット・注意点を把握して選定しましょう。
- チェーン式:最も一般的。停止位置の微調整がしやすい。子どもが触れる場所ではテンションプーリー等の安全対策を併用。
- スプリング式(プルコード):引き下げると自動で巻き上がる。配線不要でスッキリするが、サイズ・重量が大きいと操作が重くなることあり。
- 電動式:リモコン・壁スイッチ・タイマー・一部スマート連携などが可能。開口が大きい場合や高所に有効。電源位置や配線経路を事前調整することが重要。
生地の機能(選定の目安)
生地は空間の快適性に直結します。用途に応じて次を検討しましょう。
- 遮光:1級(ほぼ光を通さない)〜3級(やわらかく光を通す)目安。寝室や映像室は高遮光、リビングやオフィスは眺望とバランスを取りやすい中間が人気。表記はメーカーごとに基準差があるため、サンプルで確認が確実。
- 採光・ミラーレース:日中の眩しさを和らげつつ視界を保つ。外からの見え方は時間帯で変化するため、プライバシー重視なら夜間の透けもチェック。
- 遮熱・UVカット:窓辺の熱負荷軽減。西日や大開口サッシに有効。
- 防炎:オフィス・商業施設などでは実質必須。防炎表示のある製品を選択。
- 耐水・汚れに強いタイプ:キッチン・水回り・多目的室に。強溶剤での拭き取りは不可が多いため、手入れ方法も事前確認。
取り付け方式・納まり
同じ製品でも取り付け位置が変わると見え方と性能が変わります。代表的な納まりは次のとおりです。
- 天井付け(内付け):窓枠内や天井面にブラケットを固定し、枠内に収める。見た目がスッキリ。隙間光が出やすいので遮光重視には工夫が必要。
- 正面付け(外付け):壁面や窓枠正面に固定し、開口より大きく覆う。隙間光を抑えやすい。窓ハンドル・巾木・カーテンレールとの干渉に注意。
- ボックス内・埋込:カーテンボックスや天井内のスクリーンボックスに納める。意匠性が高いが、ボックス寸法(奥行・高さ)と製品サイズの事前擦り合わせが必須。
隙間光対策として、正面付けで左右・上下に生地を開口より大きく被せる、またはサイドガイド(サイドカバー・チャンネル)付きの仕様を選ぶ方法があります。
現場での使い方
ロールスクリーンは「ロール」や「ロールブラインド」とも呼ばれます。ただし「ロール」は他の巻き物資材と混同しやすいため、図面・発注書では「ロールスクリーン」表記が無難です。
言い回し・別称
- ロール / Rスクリーン / ロールブラインド(呼び名違いに注意)
- チェーン右(R)・左(L)、正面付け/天井付け、内付け/外付け
- 遮光1級・2級・3級、ミラーレース、サイドガイド、ボックス納まり
使用例(現場会話・指示の具体例)
- 「ここ、ロールスクリーン正面付けでW1,800×H2,100、チェーン右で発注ね。隙間光出やすいから左右各50かぶせて。」
- 「天井ボックス内は有効奥行90だから、コンパクトタイプ指定で。ブラケット位置は墨出ししておいて。」
- 「RC壁面はプラグ使ってブラケット固定。軽鉄のところはベニヤ補強入ってるか監督に確認しよう。」
使う場面・工程
工程としては「採寸→発注→他仕上げ完了後に取付」が基本です。下地が必要な場合は造作・ボード工事の前に打ち合わせしておき、ボックス寸法や開口周りの納まりを図面で確定しておくとトラブルを防げます。電動の場合は電源・制御の配線計画を前段で確定。完成間際の追加は納期・コストに直結します。
関連語(一緒に覚えると楽)
- カーテンボックス/スクリーンボックス:埋込納まり用の空間。奥行・高さ・点検性を確認。
- ブラケット:本体を固定する金具。左右の水平精度が斜行の発生に影響。
- ボトムバー:下端の重り。生地の張りを保つ。
- 下地補強:木下地・ベニヤなど。軽鉄+PBのみだとビスが効かない場合がある。
- 有効寸法/製品幅/生地幅:採寸・発注の要。メーカーによって差があるため仕様書で確認。
部材名称と寸法の基本
主なパーツ
ヘッドボックス(上部カバー)、巻取りパイプ、ブラケット(左右金具)、操作チェーン(またはプルコード)、ボトムバー(下部ウェイト)、サイドキャップ。このほか、サイドガイドやカバー類、電動ならモーター・受信部(制御部)が加わります。
寸法の考え方(採寸時の要)
- 製品幅と生地幅は同一ではない:一般に生地は両側で金具分だけ狭くなる(数センチ程度、メーカー差あり)。遮光を重視する場合は「正面付けで開口より大きめに作る」などの対策が有効。
- 内付けはクリアランスが命:窓枠の歪みや直角誤差を考慮し、上中下3点で内々寸を測り最小寸法を基準にする。
- 高さは干渉物を確認:サッシハンドル、クレセント、巾木、カウンターの出などに注意。ボトムバーが当たらないか確認。
施工の流れとコツ(実践手順)
1. 事前確認
- 図面・仕様書の確認:取付方法(正面/天井/ボックス)、操作方式、チェーン側、色、台数。
- 下地・躯体の確認:木下地の有無、RC/ALC/軽鉄の別、アンカーの必要性。
- 干渉確認:カーテンレール、ブラインド、ハンドル、点検口、照明との距離。
2. 採寸
- 水平・直角を確認しつつW×Hを測定。内付けは最小寸法、外付けは被せ寸法を決める。
- ボックス納まりは有効奥行・高さを実測。点検スペースが取れるかも確認。
3. 発注
- 必須情報:取付方法、製品幅/高さ、チェーン側、色番、生地品番、台数、オプション(サイドガイド、防炎など)。
- 電動は電源方式(AC/DC)と制御(リモコン/壁スイッチ等)、配線位置を明記。
4. 取付
- 墨出し:レーザー/水平器でブラケットの芯を通す。左右の高さ差は斜行の原因。
- 固定:木下地は木ビス、RCはプラグ+ビス、ALCは専用アンカー。軽鉄+PBは補強がないと不可が多い。
- 本体装着:カチッと確実にロック。チェーンのテンションパーツ(安全対策)は忘れずに。
- 動作確認:全開・全閉を2〜3往復、斜行・引っかかり・隙間光をチェック。
5. 引渡し
- 操作説明:チェーンの引き方、過度な斜め引き禁止、清掃方法。
- 注意書き:強い力での急操作、生地へのテープ貼付・強溶剤使用の禁止。
下地と固定方法(失敗しないための勘所)
ロールスクリーンは小型でも点荷重が集中します。固定強度が不十分だと脱落や斜行の原因になります。
- 木下地:最も確実。造作段階でベニヤ補強や間柱位置を指示しておくと安心。
- RC(鉄筋コンクリート):樹脂/金属プラグ+ビスで固定。粉じんの養生・清掃を忘れずに。
- ALC:ALC用アンカーを使用。過度な締め付けは空隙破壊の原因。
- 軽鉄+PB:原則補強必要。PB単体や軽鉄のみでは長期的に緩みやすい。
- タイル・石膏ボード直貼り(GL):空洞部があるため、アンカー選定と位置決めに注意。
仕上がりを良くする納まり設計
意匠と機能を両立させるポイントを押さえましょう。
- ボックス寸法の目安:製品や生地により必要奥行・高さが異なるため、メーカー仕様書で確認のうえ、余裕寸法で設計。奥行はおおむね80〜100mm以上あると納めやすいが、現物優先。
- 隙間光対策:正面付けで左右上下に十分な被りを確保、またはサイドガイド採用。内付け遮光は限界がある点を施主に説明しておく。
- 干渉物の回避:サッシハンドル・クレセント・換気レジスター・既存レール。開閉可動域も含めてチェック。
- 清掃・点検性:埋込納まりは特に、後の取外し手順を想定しておく。
性能と法規・安全
- 防炎:オフィス・商業用途では防炎製品の指定が一般的。防炎表示の有無を発注前に確認。
- プライバシー:夜間は室内が明るいと外から透けやすい生地もある。用途に応じて遮光・採光のバランスを選ぶ。
- 安全対策:チェーンは子どもの首 entrapment を防ぐため、テンションフック/クリップの取り付けを徹底。可動部への指挟み注意喚起も有効。
- 耐久性:大開口や毎日頻繁に操作する場所は、操作方式や生地の耐久を意識して選ぶ。
メンテナンスとトラブルシュート
- 斜行(生地が片側に寄る):ブラケットの水平誤差、取付歪み、ボトムバーの偏荷重が原因ことが多い。まずは水平再調整。改善しない場合はメーカー指示に従い調整。
- 巻きずれ・たるみ:生地の経年伸びや操作過多。スプリング式の戻り不良はユニット交換が必要な場合あり。
- 汚れ:柔らかい布で乾拭き。軽い汚れは薄めた中性洗剤で軽く拭き取り→水拭き→乾拭き。強溶剤・漂白剤・研磨はNG。
- 電動の不具合:電源・配線の接続確認、リモコンの電池・設定確認。原因切り分けを行い、必要に応じてメーカーサポートへ。
代表的なメーカーと特徴
国内現場でよく採用されるメーカーには次のようなものがあります。いずれも幅広いラインアップと豊富な生地バリエーションを持ち、施工性やメンテナンス性も考慮された製品が充実しています。
- ニチベイ(NichiBei):オフィスから住宅までカバー。遮光・採光・防炎生地が豊富で、部品の互換やオプション展開も幅広い。
- タチカワブラインド(TACHIKAWA):堅牢な機構と色・質感の選択肢が多いのが特徴。電動の選択肢も充実。
- トーソー(TOSO):住宅向けの意匠性とコストバランスに強み。省スペース製品や取り付けバリエーションが選びやすい。
モデルや仕様は都度更新されるため、最新カタログ・技術資料で寸法制限・対応オプションを確認し、現場条件に合うシリーズを選定するのが安全です。
見積・発注チェックリスト(この項目が揃えば迷わない)
- 設置場所・数量
- 取付方法(正面付け/天井付け/ボックス内)
- 仕上がりサイズ(W×H):内付けか外付けかを明記
- 操作方式(チェーン/スプリング/電動)、チェーン側(R/L)
- 生地品番・色番、遮光等級・機能(防炎/遮熱/採光など)
- オプション(サイドガイド、カバー、底部形状)
- 電動の場合:電源位置・制御方式(リモコン/壁スイッチ等)・配線経路
- 施工時期(他工種との取り合い)・搬入経路・足場の有無
- 既存との干渉(レール、ハンドル、点検口)
よくある質問(初心者の疑問に答える)
Q1. ブラインドとの違いは?どっちを選べばいい?
ブラインドは羽(スラット)の角度で採光を調整、ロールスクリーンは上下で開閉します。細かな光量調整や外が見えにくい角度調整はブラインド、すっきりした見た目と柔らかい雰囲気はロールスクリーンが得意。清掃のしやすさはロールスクリーンに軍配が上がることが多いです。
Q2. プロジェクター用スクリーンと同じ?
別物です。ロールスクリーンは採光・目隠し用の内装材。映写用スクリーンは反射特性やフラット性が専用設計。映写用途なら専用品を検討しましょう。
Q3. 賃貸で穴を開けずに付けられる?
突っ張り式や粘着ブラケットなどのアイテムもありますが、サイズ・重量・取付面の状態に制限があります。安全性と長期使用を考えると、可能であれば下地に確実固定が理想。管理規約も確認しましょう。
Q4. 大きい窓はどの方式が向く?
チェーン式か電動式が現実的。スプリング式はサイズ・生地重量に制限があるため、仕様書の適合範囲を必ず確認してください。
現場で役立つ小ワザ・注意喚起
- チェーンの長さ:床からの安全高さと操作性のバランスを取り、過度に長くしない。
- 色決め:生地の見え方は照明と時間帯で変わる。現地光源下でサンプル確認がベスト。
- 複数連装:並びで設置する場合は生地ロット差に注意。同一ロット指定や同時発注で揃える。
- 清掃引渡し:施工後は粉じん・手跡を拭き取り、動作チェックリストを残すと信頼感が上がる。
まとめ:迷ったら「用途・納まり・下地・操作」を順に確認
ロールスクリーンは、シンプルな見た目以上に「納まりと下地」が仕上がりと使い勝手を左右します。まず用途に合う生地機能を選び、取付方法(正面/天井/ボックス)を決定。次に下地と干渉物をチェックし、採寸ルールに沿って発注。現場では水平・固定強度・安全対策を丁寧に。代表的なメーカー(ニチベイ、タチカワブラインド、トーソー)の仕様書を参照すれば、寸法制限やオプション選択で迷いにくくなります。この記事を現場の「指差し確認」のように使い、安心・確実な施工につなげてください。









