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錆止めの基礎と選び方|現場で失敗しないためのプロが教えるポイント5選

現場ワード「錆止め」を完全理解|内装工事で迷わない選び方・使い方・注意点

「錆止めって、結局なにを塗ればいいの?」「赤いのとグレー、何が違うの?」——初めて現場に入ると、こんな疑問がたくさん出てきますよね。この記事は、建設内装現場で日常的に飛び交う「錆止め」というワードを、初心者にもわかりやすく丁寧に解説する入門ガイドです。意味・種類・使い方から、選定のコツ、失敗しやすいポイントまで、プロの視点で実務に役立つ情報をまとめました。読み終える頃には、現場で自信をもって会話でき、作業判断にも迷わなくなるはずです。

現場ワード(錆止め)

読み仮名 さびどめ
英語表記 anti-rust primer(rust-inhibitive / anticorrosive primer)

定義

「錆止め」とは、鉄などの金属部材が錆(腐食)を起こすのを抑えるために、上塗り前に施す下塗り塗料(プライマー)の総称です。化学的には、顔料や樹脂、添加剤の働きにより、金属表面への密着性を高めつつ、水分・酸素・塩分などの腐食因子を遮断し、錆の発生・進行を抑制します。現場では「錆止めを一回入れてから上塗り」「溶接部は錆止めタッチアップ」など、工程や品質管理の基準としても日常的に使われます。

錆止めが必要な理由

鉄は空気中の酸素・水分と反応しやすく、わずかな傷や切断面、溶接部からでも錆が進行します。いったん錆が出ると広がりやすく、仕上げ材の美観や耐久性にも影響。内装工事では見えなくなる部位でも、耐久・安全・漏水リスク低減の観点から、錆止めの確実な施工が重要です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のような言い回しや別称がよく使われます。

  • 「サビ止め塗っといて」:錆止め塗料を塗布しておいて、の意。
  • 「赤錆(あかさび)入れて」:赤サビ色(酸化鉄顔料系)の錆止めを指す俗称。塗料そのものの色を指しているだけで、実際の錆ではありません。
  • 「グレーサビ」「グレープライマー」:グレー色の錆止めを指す現場の呼び方。
  • 「プライマー入れる」:下塗り全般のこと。錆止めに限らず下地材によっては専用プライマーを指す場合あり。
  • 「タッチアップ」:切断面やビス頭、溶接部など部分的な補修塗り。

使用例(3つ)

  • 「開口補強アングル、溶接止めたとこだけ先に錆止めタッチアップしておいて」
  • 「鉄骨梁の見切りはグレーの錆止め一回、上塗りウレタン二回の仕様ね」
  • 「軽天の切断面とビス頭、ボード前に錆止めで押さえておこう」

使う場面・工程

錆止めは鉄骨・鋼材の露出部、切断・穴あけ・溶接などで皮膜が破れた箇所、吊り金物や補強プレート、LGS(軽量形鋼)周辺の処理など、金属が空気に触れる場所で使われます。一般的な工程の流れは次のとおりです。

  • 素地調整(ケレン:錆や汚れ、溶接スパッタ、油分の除去)
  • 清掃・脱脂(ダスト、油分、水分を取り除く)
  • 錆止め塗布(刷毛・ローラー・スプレー)
  • 乾燥・硬化(規定時間の養生)
  • 上塗り(仕上げ塗料)または次工程へ

関連語

  • 下塗り(プライマー):上塗りの密着性と耐久性を高めるための最初の塗り。錆止めは金属向け下塗りの一種。
  • ケレン:錆や旧塗膜、汚れを除去する素地調整。ワイヤーブラシ、サンドペーパー、電動工具などを使用。
  • 上塗り:仕上げ塗装。ウレタン、アクリル、シリコンなど。
  • 亜鉛めっき:防錆目的で鋼材に亜鉛の層を設けたもの。めっき鋼板には専用プライマーが必要。
  • タッチアップ:局所補修塗り。

錆止め塗料の種類と特徴

エポキシ系(2液・1液)

耐久性・付着性に優れ、建築・設備の鉄部で広く使われます。溶接部や重防食が必要な箇所にも適しています。2液型は硬化剤と主剤を混合して使用し、強い塗膜を形成。1液型は扱いやすく内装での作業性が良いのが特徴です。

アルキド系(弱溶剤形)

扱いやすく価格も比較的手頃。乾燥が早い速乾タイプもあり、補修やタッチアップに便利。重防食にはやや不向きで、環境や仕様に応じて使い分けます。

水性錆止め

臭気や溶剤の影響が気になる内装現場で選ばれることが多いタイプ。低臭・低VOCで室内作業に向いています。ただし低温・高湿時の乾燥に配慮が必要です。

亜鉛リッチ(ジンクリッチ)プライマー

亜鉛粉末を多く含み、電気化学的に鉄を保護するタイプ。切断面や溶接部の補修、屋外や結露リスクの高い部位に有効。密着性や上塗り適合を確認して選定します。

色(赤・グレー・その他)

昔ながらの赤錆色は視認性が高くムラの確認がしやすい一方、仕上げ色によってはグレーの方が透けにくいなど、色の実用面も考慮します。色による性能差は製品によります。

現場で役立つ「選び方のポイント」5つ

  • 被塗物で選ぶ:黒皮付き鋼材、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス、アルミなど、素材に適合するプライマーかをまず確認。
  • 環境条件で選ぶ:室内・低臭重視なら水性や弱溶剤形、湿気・結露リスクが高いならエポキシや亜鉛リッチなど耐久寄り。
  • 工程と時間で選ぶ:速乾性が必要か、可使時間(2液型)や上塗り可能時間の範囲が工程に合うかをチェック。
  • 上塗りとの相性で選ぶ:ウレタン・シリコンなど仕上げ塗料との適合性(ふくれ・割れ・はじきの防止)を仕様書で確認。
  • におい・安全性で選ぶ:居室近接作業や営業中施設では低臭・低VOCタイプを優先。換気計画や作業時間帯も考慮。

施工手順とコツ(プロ目線のチェックリスト)

1. 素地調整(ケレン)

  • 赤錆・白錆・ミルスケール(黒皮)・旧塗膜の浮きを除去。
  • 溶接スパッタはスクレーパーやグラインダーで除去。
  • ワイヤーブラシ、サンドペーパー、ディスクサンダーを使い分け、素地を清浄に。

コツ:錆が残っていると下から再発します。見えなくなる部位ほど丁寧に。

2. 脱脂・清掃

  • ウエスで粉塵除去、必要に応じてシンナーで脱脂(素材と塗料の仕様を確認)。
  • 水分は大敵。結露時は無理せず乾燥を待つか、除湿・送風を活用。

3. 養生・希釈・撹拌

  • 隣接仕上げ材を養生。飛散・はねの想定範囲を広めに。
  • 規定の希釈率・攪拌時間を守る。沈降しやすい顔料は底からしっかり混ぜる。
  • 2液型は正確に計量・混合。可使時間を超えた塗料は使用しない。

4. 塗布(刷毛・ローラー・スプレー)

  • 角・エッジ・溶接部・切断面は先行して刷毛で塗り込み、その後面をローラーで。
  • 指定膜厚を意識(塗りすぎはたれ、少なすぎは防錆不足)。
  • 狭所・裏面・ボルト周りの塗り残しに注意。ライトで角度を変えて確認。

5. 乾燥・上塗り

  • 規定乾燥時間を確保。低温・高湿時は延びる前提で工程を組む。
  • 上塗り可能時間の範囲を守る(長く空けすぎると付着低下)。

よくある失敗と対処法

  • 付着不良(剥離):ケレン不足や油分残りが原因。素地調整と脱脂を徹底。上塗りとの相性も確認。
  • はじき・ぬれ不良:水分・油分・シリコン汚染が原因。乾燥時間を延ばし、汚染箇所は再ケレン。
  • 乾燥不良・べたつき:低温・厚塗り・可使時間超過の混合塗料が原因。環境条件と規定膜厚を守る。
  • ピンホール(小さな穴):素地の空洞・溶接部のガス、厚塗りの溶剤抜けが原因。薄塗り複数回や下地充填で対応。
  • 錆の再発:錆の残存や端部の塗り残し。端部強化(先行塗り・二度塗り)で対処。

素材別の注意点(被塗物ごとの相性)

黒皮付き鋼材・一般構造用鋼

黒皮(ミルスケール)は付着の妨げになるため、浮いている部分は除去。エポキシ系など付着性の高い錆止めが無難です。

溶融亜鉛めっき鋼板(LGS・金物)

めっき表面は滑りやすく、通常の錆止めでは密着不良になる場合があります。めっき対応のプライマー(ジンクリッチや専用エッチングプライマー)を選定し、白錆は除去してから塗布。

ステンレス・アルミ

錆に強い金属でも塗装の密着は別問題。専用プライマー(メタル用プライマー)を経て上塗りへ。一般的な鉄用錆止めだけでは密着不足になることがあります。

既存塗膜の上

密着の良い旧塗膜ならサンディングして足付け、適合する下塗りを。脆弱な旧塗膜は剥離・再塗装が必要です。

内装現場ならではの注意(臭気・工程調整)

  • 臭気対策:営業中・居室近接では弱溶剤形や水性の採用、夜間作業、十分な換気を検討。
  • 養生・清掃:仕上げ材へミストやはねが付くと補修が大変。広めの養生と終了後の拭き上げを習慣化。
  • 他工種調整:ボード貼り前にビス頭タッチアップ、溶接後は早めに錆止めなど、段取りが品質を左右。
  • 気温・湿度:地下や空調未稼働のフロアは乾きにくい。送風・除湿や工程の前倒しでリスク低減。

代表的なメーカー(日本国内・五十音順)

製品選定は仕様書・設計指示を最優先に、必要に応じてメーカーの技術資料を確認しましょう。以下は防錆・建築塗料で広く知られるメーカーの一例です。

  • エスケー化研株式会社:建築仕上げから下塗りまで幅広いラインアップ。
  • 関西ペイント株式会社:建築・重防食分野に強み。現場対応の情報が豊富。
  • 日本ペイント株式会社:内装・外装向けの定番製品が多く、流通性も高い。
  • ローバル株式会社:亜鉛リッチ(常温亜鉛めっき系)塗料で知られる専門メーカー。
  • ロックペイント株式会社:建築・工業用途の塗料を展開。

同じ「錆止め」でも、樹脂系(エポキシ、アルキドなど)、溶剤種(水性、弱溶剤)、用途(屋内・屋外、めっき鋼板対応など)で細かく分かれています。製品データシート(塗装仕様、希釈率、標準塗布量、乾燥時間、上塗り適合)を必ず確認しましょう。

安全・衛生・品質管理

  • 保護具:手袋、保護メガネ、防塵マスク。溶剤形は有機ガス用防毒マスクを使用。
  • 火気厳禁:溶剤形は引火性に注意。火花が出る作業と同時作業は避ける。
  • 換気:室内は送風・給排気を確保。臭気クレーム防止にも有効。
  • 温湿度管理:一般に5〜35℃が目安。低温・高湿は乾燥遅延・白化の原因。
  • トレーサビリティ:製品ロット、希釈率、塗布量、乾燥時間、作業者を記録。後工程の品質保証につながります。

保管・現場管理

  • 直射日光・高温多湿を避け、密栓保管。水性は凍結厳禁。
  • 開缶後は早めに使い切る。沈降を防ぐため使用前に撹拌。
  • 2液型は必要量だけ小分け混合。余剰は固化させ、地域のルールに従って適切に処分。

用語辞典ミニ(初心者向け)

  • 錆(さび):鉄などが酸素・水分と反応して生じる腐食生成物。
  • プライマー:上塗りの密着や耐久を高める下塗り材。
  • ケレン:錆・旧塗膜・汚れを落とす素地調整作業。
  • タッチアップ:塗り残しや損傷部の部分補修塗り。
  • 可使時間:2液型塗料で、混合後に使用できる時間のこと。
  • ジンクリッチ:亜鉛粉末を多く含む防錆プライマー。

よくある質問(FAQ)

内装工事でよく使われる錆止めについて、基本的な意味や種類、使い方までをわかりやすく解説します。 内装工事における錆止めの種類と使い方 を理解すれば、現場での判断がより的確になります。

Q1. 赤い錆止めとグレーの違いは?
A. 多くの場合は「顔料の色」の違いで、性能差は製品ごとに異なります。仕上げ色の透けやすさ、現場での識別性で色を選ぶことが多いです。
Q2. LGS(軽量形鋼)の切断面にも錆止めは必要?
A. はい。切断面や穴あけ、ビス頭など、めっき層が切れた箇所は錆が起きやすいので、めっき対応のプライマーやジンクリッチでタッチアップするのが無難です。
Q3. 水性と溶剤形、どちらがいい?
A. 室内臭気や安全を重視するなら水性・弱溶剤形が扱いやすいです。重防食や厳しい環境ではエポキシなど溶剤形が選ばれることも。仕様書・環境・工程で判断します。
Q4. 上塗りを省略して錆止めだけで終わってもいい?
A. 一時的な防錆にはなりますが、設計仕様に上塗りがある場合は省略不可。耐久性・美観・汚染防止の観点から上塗りまでが基本です。
Q5. 乾燥を早めるコツは?
A. 薄塗りで回数を分け、換気・送風・適温管理を行います。ただしヒーターの直接熱や過度な風は塗膜不良の原因になるため、製品指示に従ってください。

チェックリスト(現場で困らない事前確認)

  • 被塗物は何か(鉄、めっき、ステンレス、アルミ)?
  • 使用場所の環境(屋内/屋外、湿気、結露リスク、温度)?
  • 上塗り塗料は何か(相性は問題ないか)?
  • 乾燥・上塗り可能時間は工程に合っているか?
  • 臭気対策・安全対策(換気、保護具、火気管理)は十分か?
  • ケレン・脱脂の段取りと検査方法は決まっているか?

実践例:内装鉄骨開口補強の錆止めタッチアップ

状況:開口補強のアングルを溶接後、翌日にボード貼り予定。

  • 工程組み:溶接完了→冷却→ケレン→脱脂→錆止めタッチアップ→乾燥→上塗り(仕様により省略可)→ボード。
  • 選定:屋内・短工期のため弱溶剤形の速乾エポキシ系を選択。上塗りの適合を確認。
  • 品質:溶接部周囲は2度塗りで膜厚確保。見切りラインは養生でくっきりと。
  • 安全:溶接作業者と塗装作業者の動線と時間を分け、換気を確保。

まとめ:錆止めは「塗ること」より「準備と選定」が9割

錆止めは、ただ塗るだけでは十分な効果が出ません。重要なのは、被塗物に合った製品を選び、ケレンと脱脂を丁寧に行い、適切な膜厚で乾燥時間を守ること。内装現場では特に、臭気や工程調整も品質に直結します。この記事のポイントを押さえておけば、「どれを、いつ、どう塗るか」の判断に迷わなくなり、仕上がりと耐久性を確実に高められます。困ったときはメーカーの技術資料と、現場のベテランの知見を合わせて確認する——それが失敗しない最短ルートです。