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親綱とは?現場の安全対策を強化する使い方・設置ポイントと選び方完全ガイド

  1. 親綱の基礎と実務ガイド:現場で迷わない設置・運用・選定のポイント
  2. 現場ワード(キーワード)
    1. 定義
  3. 親綱の役割と仕組み
  4. 現場での使い方
    1. 言い回し・別称
    2. 使用例(3つ)
    3. 使う場面・工程
    4. 関連語
  5. 親綱の設置:基本の手順とコツ
    1. 1. 事前計画
    2. 2. アンカーの選定・確実な固定
    3. 3. 支柱とロープの張設
    4. 4. 高さ・たわみの管理
    5. 5. 端末・接続金具の処理
    6. 6. 引き渡し・周知
  6. 点検・保守と交換の目安
    1. 日常点検(使用前・使用中・使用後)
    2. 定期点検・書類
    3. 保管
  7. 親綱の選び方:材質・構成・規格の観点
    1. 材質と特性(ロープの場合)
    2. 径・構成
    3. 規格適合・表示
    4. 周辺機器との相性
    5. システム選定の考え方
  8. よくあるNGと事故リスク、その対策
    1. 1. 振り子落下(スイングフォール)
    2. 2. クリアランス不足
    3. 3. 直掛け・不適合金具
    4. 4. 結び目による強度低下
    5. 5. エッジ切れ・摩耗
    6. 6. 支柱の不安定・過張力
  9. 法令・教育・運用ルールの要点
  10. 代表的メーカーと製品の傾向
  11. 具体的な活用シーン別アドバイス
    1. 屋根上(軽量鉄骨・折板)
    2. スラブ端・躯体周り
    3. 内装仕上げ工程(墨出し・ボード・笠木)
  12. チェックリスト:設置前・使用前に確認
  13. 現場でよくある質問(Q&A)
    1. Q1. 親綱にはロープとワイヤ、どちらが良い?
    2. Q2. 親綱が低い位置しか張れません。どうすれば安全?
    3. Q3. カラビナをロープに直掛けしてもいいですか?
    4. Q4. 何本張ればいい?一本で足りる?
    5. Q5. ロープに少し毛羽立ちが。使い続けても大丈夫?
  14. 初心者がまず覚えるべき重要ポイント
  15. まとめ:親綱は「張って終わり」ではなく「運用が命」
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親綱の基礎と実務ガイド:現場で迷わない設置・運用・選定のポイント

「親綱ってロープのこと?それとも手すり?」—初めて建設・内装現場に入ると、そんな素朴な疑問が次々に湧いてきますよね。親綱は高所作業の安全を守る重要な装備ですが、正しく張られていない、使い方が曖昧、といった理由で効果が半減してしまうことも少なくありません。本記事では、現場で当たり前に使われる「親綱」を、やさしい言葉で、でもプロの目線でしっかり解説。言い回し・使い方・設置方法・選び方・法令のポイントまで、これだけ読めば「現場で親綱に自信が持てる」内容にまとめました。

現場ワード(キーワード)

読み仮名おやづな
英語表記lifeline / safety line(特に横方向は horizontal lifeline)

定義

親綱とは、高所作業における墜落防止のために設置する主索(メインロープ・ケーブル)の総称です。作業者はフルハーネス型の墜落制止用器具(ランヤード等)を親綱に連結し、移動しながらも常時確保(常時接続)を維持します。一般にスラブ端部や屋根端、開口部、梁上など落下リスクの高い場所に張り、支柱やアンカーに確実に固定・緊張させて使用します。現場では「ライフライン」「命綱」と呼ぶこともあります。

親綱の役割と仕組み

親綱の役割はシンプルに「墜落を止める」ことですが、実務的には次の3点が柱になります。

  • 墜落の停止:落下時にランヤード+ショックアブソーバが衝撃を吸収し、親綱がアンカーとともに荷重を受け止める。
  • 落下距離の管理:親綱の高さ・張力・たわみ(サグ)と、使用するランヤードの長さを合わせて、下方の障害物に接触しない「クリアランス」を確保する。
  • 移動の安全:ロープグラブやスライダー等の移動用器具を介し、移動中も常に接続状態を保てるようにする。

これらが適切に機能するには、設置条件(アンカー強度、支柱の安定、ロープ材質・径、たわみ管理)、使用条件(接続方法、二丁掛けの徹底、エッジ対策)をトータルで整える必要があります。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のような呼び方・言い回しが一般的です。

  • 親綱/ライフライン/命綱(同義として使われることが多い)
  • 横親綱(水平に張るもの)、縦親綱(上下方向に設置しロープグラブで昇降するタイプ)
  • 親綱支柱(支えるための仮設支柱)、テンショナー(張り器)、エンドアンカー(端末固定)

使用例(3つ)

  • 「今日はスラブ端部に横親綱を2系統で張って、フルハーネスで入ろう。」
  • 「開口部は親綱支柱でロープを二段張り、上段は墜落制止用、下段は転落防止のロープ手すりに。」
  • 「屋根上移動はスライダー使って常時接続。乗り移り時は二丁掛けを徹底ね。」

使う場面・工程

  • スラブや屋根の端部での墨出し、下地組み、ボード張り、笠木・防水関連作業
  • 大開口・吹抜け周り、階段開口の作業足場がまだない段階
  • 鉄骨梁上やデッキプレート上の歩行・資材搬送
  • 足場の先行手すり不足時の一時的な墜落制止対策(ただし元請基準に従う)

関連語

  • 墜落制止用器具(フルハーネス、ランヤード、ショックアブソーバ)
  • アンカーポイント(躯体アンカー、ビームクランプ、ケミカルアンカー等)
  • ロープグラブ/移動用落下防止器/スライダー
  • 親綱支柱/テンショナー(張り器)/ターンバックル
  • エッジプロテクター(角当て)/たわみ(サグ)/振り子落下

親綱の設置:基本の手順とコツ

1. 事前計画

図面と実況を照合し、落下リスクのある動線・作業域を特定。アンカー位置、親綱のルート、高さ、退避経路を計画します。併せて使用するハーネス・ランヤードの種類(伸縮、巻取り、ツインランヤード等)を決め、必要クリアランスを見積もります。

2. アンカーの選定・確実な固定

  • 構造体(梁・スラブ・柱)に適合したアンカーを使用。強度未知の下地(薄板・仮設材)への取り付けは避ける。
  • ビームクランプやケミカルアンカーなど、メーカーの指定トルク・硬化時間・施工手順を順守。
  • アンカー位置はできる限り高く・作業域の真上に近い配置にして、落下距離と振り子リスクを抑える。

3. 支柱とロープの張設

  • 親綱支柱は基礎部の固定方法(ウェイト式・貫通固定・クランプ固定等)を現場条件に合わせ選定。
  • ロープ(またはワイヤロープ)を通し、テンショナーやターンバックルで適正テンションに。過度な張力は支柱転倒の原因に、緩すぎるとたわみ増大で危険です。
  • 角部・鋭縁では必ずエッジ保護(スリーブ・角当て)を使用。

4. 高さ・たわみの管理

  • 作業者のDリング(背中の接続点)より十分高く設置するのが理想。低い位置の親綱は落下距離が伸びます。
  • 想定荷重時のたわみを考慮し、下方の障害物・床までのクリアランスをチェック。
  • たわみが大きくなる長スパンでは、中間支点や二系統張りを検討。

5. 端末・接続金具の処理

  • 端部は必ず専用金具で処理し、結び目での強度低下を避ける(結びは強度を大きく落とす原因)。
  • 連結金具は相性確認(ゲート形状、干渉の有無)を行う。異種金属接触・鋭角接触を避ける。

6. 引き渡し・周知

  • 使用範囲、接続方法(二丁掛けの手順)、立入禁止エリア、点検方法を朝礼・KYで共有。
  • 張力調整や開口停止・支柱移設は、責任者の許可制にする。

点検・保守と交換の目安

日常点検(使用前・使用中・使用後)

  • ロープの毛羽立ち、切創、つぶれ、薬品・油の付着、焼け(溶接火花)
  • ワイヤロープの素線切れ、キンク、腐食
  • 端末金具・シャックル・カラビナの変形、ゲート不良、ロック不良
  • 支柱のガタ、基礎の緩み、アンカーの緩み・割れ
  • テンショナー作動不良、たわみ過大

定期点検・書類

  • 点検記録(設置日、設置者、日常点検者、不具合有無)の管理
  • 規格適合の表示・ラベルの可読性確認
  • 落下荷重を受けた疑いがある場合は即時使用停止・交換

保管

  • 直射日光・高温多湿・薬品環境を避ける。ロープの紫外線劣化に注意。
  • 巻き癖・折れ癖をつけないように緩やかに収納。重量物の下敷きにしない。

親綱の選び方:材質・構成・規格の観点

材質と特性(ロープの場合)

  • ポリエステル:伸びが少なく耐候性良好。たわみ管理がしやすい。
  • ナイロン:衝撃吸収性はあるが伸びが大きい。長スパンは注意。
  • ビニロン(クレモナの呼称で流通も):耐候性・摩耗性がバランス型。

ワイヤロープは切創に強く、長スパンや鋭縁部に向きますが、取り扱い・端末処理に注意が必要です。現場環境(溶接火花の有無、薬品、エッジ状況、スパン長)に合わせて選定します。

径・構成

ロープ径は握りやすさだけでなく強度・伸びに影響します。細すぎるとエッジで損傷しやすく、太すぎると移動器具の相性が悪くなることがあります。使用するロープグラブ・スライダーの適合径を必ず確認してください。

規格適合・表示

  • 墜落制止用器具に関する国内規格・メーカー適合表示が明確なものを選ぶ。
  • 取扱説明書(設置条件・許容スパン・適合金具)を現場で確認できるようにしておく。

周辺機器との相性

  • ロープグラブ/スライダーの対応径・対応材質
  • ツインランヤードや巻取り式ランヤードとの干渉(からみ)
  • テンショナー・支柱・アンカーのメーカー推奨組み合わせ

システム選定の考え方

  • 短スパン・頻繁な移設:軽量ロープ+簡易支柱+手動テンショナー
  • 長スパン・常設:ワイヤロープ+定格アンカー+中間支点+張力管理器
  • 縦移動主体:縦親綱(ロープ)+落下防止器(ロープグラブ)

よくあるNGと事故リスク、その対策

1. 振り子落下(スイングフォール)

アンカーが真上から外れると、落下時に横振れして二次衝突・墜落距離増大を招きます。可能な限り真上配置、難しければ中間支点を増設し、動線に沿った設置に切り替えましょう。

2. クリアランス不足

親綱の高さが低い、ランヤードが長い、たわみが大きい—この掛け算で床や梁に接触する危険が高まります。使用前に「親綱高さ+体の位置−(ランヤード長+アブソーバ作動+たわみ+体の沈み+安全余裕)」の考え方で余裕を確認しましょう。

3. 直掛け・不適合金具

ロープへカラビナを直接掛ける使用は、メーカー・元請によって禁止・制限がある場合があります。移動用ストッパー(ロープグラブ)や専用リングを介するなど、指定の方法を順守してください。

4. 結び目による強度低下

端末を結んで止めると大幅に強度が落ちます。必ず端末加工済みや専用クランプ・シャックルで処理します。

5. エッジ切れ・摩耗

鋭利な躯体角やデッキ端部は想像以上にロープを傷めます。エッジプロテクターを常用し、傷を見つけたら即交換。溶接火花の飛散範囲では耐熱対策も必須です。

6. 支柱の不安定・過張力

支柱基部の固定が不十分なまま強く張ると、支柱ごと倒れる危険があります。メーカー指示のウェイト・固定方法・張力範囲を守り、水平・垂直の出を確認しましょう。

法令・教育・運用ルールの要点

高所作業では、労働安全衛生法・労働安全衛生規則に基づき墜落防止措置が求められます。現在は従来の「安全帯」に代わり「墜落制止用器具」の考え方が主流で、フルハーネス型の使用や、教育の実施が整備されています。現場では次の点を押さえましょう。

  • 2m以上の高所作業では墜落防止措置が必要(手すり先行、作業床設置、親綱+フルハーネス等、現場条件に応じて)
  • フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育の受講(対象作業者)
  • 元請の安全基準・手順書(親綱の設置基準、点検表、二丁掛け運用)に従う
  • 規格適合表示のある器具を用い、取説・仕様に沿って使う

数値基準・適用範囲は改定されることがあるため、最新の行政通達や元請基準・メーカー資料で必ず確認してください。

代表的メーカーと製品の傾向

親綱自体はロープ・ワイヤ・支柱・テンショナー・移動用器具の組み合わせで構成されます。以下は国内現場での採用が多いメーカー例です(順不同)。

  • 藤井電工(TSUYORON):墜落制止用器具の老舗。フルハーネスやランヤード、ロープグラブなど現場適合のラインアップが豊富。
  • 谷沢製作所:ハーネス・ヘルメットで知られる総合安全メーカー。適合表示が明確で教育資料も充実。
  • 3M(DBI-SALA / Protecta):水平ライフラインや巻取り式ランヤードなどグローバル規格の製品展開が強み。
  • 基陽(KH):建設現場向けに使い勝手の良いハーネス・ランヤード・アクセサリーを幅広く提供。
  • トーヨーセフティー:安全保護具全般。コストパフォーマンスの良い製品が多く、教育ツールも入手しやすい。

各社でロープ径適合や専用スライダーの仕様が異なります。混用時は必ず適合確認を行ってください。

具体的な活用シーン別アドバイス

屋根上(軽量鉄骨・折板)

  • 鋭縁・熱対策を前提にワイヤロープ+エッジ保護を検討。
  • 梁上のアンカーを複数配置し、動線に沿って中間支点を増やす。
  • 作業域外側に落下する可能性があるため、振り子対策を入念に。

スラブ端・躯体周り

  • 親綱支柱で二段張り(上段:墜落制止、下段:ロープ手すり)にすると歩行時の安心感が向上。
  • 開口部は四周を確実に囲うか、横移動用のリング・スライダーを活用して常時接続。

内装仕上げ工程(墨出し・ボード・笠木)

  • 短期・移設が多いので軽量ロープ+簡易支柱が有効。こまめな再緊張・たわみ確認を習慣化。
  • 二丁掛けでの乗り移り手順を朝礼で統一しておく。

チェックリスト:設置前・使用前に確認

  • アンカーの種類・位置・強度は妥当か(構造体か、固定手順は適正か)
  • 親綱の高さは十分か、動線の真上に近いか
  • スパン長に対し中間支点やたわみ管理はされているか
  • ロープ径・材質は移動用器具と適合しているか
  • エッジ保護・溶接火花対策は必要十分か
  • 使用方法(二丁掛け、乗り移り、退避)を全員が理解しているか
  • 点検記録・連絡体制は整っているか

現場でよくある質問(Q&A)

Q1. 親綱にはロープとワイヤ、どちらが良い?

A. 現場条件次第です。鋭縁や長スパンではワイヤが有利、軽量で頻繁に移設するならロープが扱いやすい傾向があります。いずれもエッジ対策・適合器具の確認が前提です。

Q2. 親綱が低い位置しか張れません。どうすれば安全?

A. クリアランス不足が最優先のリスクです。親綱位置の再検討、中間支点の増設、巻取り式や短いランヤードの採用、作業床や手すりの追加など、組み合わせで対策しましょう。

Q3. カラビナをロープに直掛けしてもいいですか?

A. 元請やメーカーの指定によっては不可のケースがあります。基本は移動用のロープグラブやスライダーを使用。許可なき直掛けは避けてください。

Q4. 何本張ればいい?一本で足りる?

A. 動線が複雑・混雑する場合は二系統張りや、中間支点の増設が有効です。一本で遠くまで届かせるより、区画ごとに近い位置へ計画的に張った方が安全です。

Q5. ロープに少し毛羽立ちが。使い続けても大丈夫?

A. 目視で「少し」でも、負荷時には破断に繋がることがあります。基準は「迷ったら交換」。点検記録に残し、責任者判断のもとで速やかに交換しましょう。

初心者がまず覚えるべき重要ポイント

  • 親綱は「高く・真上・短スパンで」—これが安全の基本形。
  • 常時接続と二丁掛けを徹底。乗り移り時に外さない。
  • 結び目で止めない。端末は専用金具で処理。
  • たわみ・クリアランス・振り子の3点チェックを習慣に。
  • エッジ保護はケチらない。ロープの寿命と命を守る最小投資。
  • 法令・元請基準・メーカー取説を整合させる。違えば一番厳しい基準に合わせる。

まとめ:親綱は「張って終わり」ではなく「運用が命」

親綱は、高所作業の最後の砦です。正しい位置に、正しい方法で設置し、日々の点検とルールに沿った運用を続けることで、はじめて本来の力を発揮します。現場では「高く・真上・短スパン」「常時接続」「たわみ・クリアランス・振り子の確認」を合言葉に、全員で安全レベルを底上げしましょう。分からないときは、ためらわず責任者・メーカー資料に立ち戻る。それが、あなた自身と仲間の命を守る最短ルートです。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
  • 情報の扱い:記事は現場経験・法令・公的資料を根拠に作成。広告掲載時は本文中に明示します。
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