建設内装の現場ワード「サンドペーパー」完全ガイド:番手の選び方とプロの使い分け
「ペーパー当てといて」「番手上げて仕上げて」——現場でこんな声を聞いて、具体的にどうすればいいのか迷ったことはありませんか?この記事では、内装の現場で日常的に使われる「サンドペーパー」を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。番手の選び方、素材別の使い分け、手研磨と電動サンダーのコツ、安全対策まで、実践に役立つ内容を網羅。読み終えた頃には、明日からの現場で自信を持って「ペーパー掛け」ができるようになります。
現場ワード(サンドペーパー)
読み仮名 | さんどぺーぱー(一般には「紙やすり」「ペーパー」とも) |
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英語表記 | Sandpaper / Abrasive Paper |
定義
サンドペーパーとは、紙や布、フィルムなどの台紙に研磨粒子(砥粒)を接着した「研磨紙・研磨布」の総称です。表面を削ったり整えたり、塗装前の足付けやパテの面出し、木部の仕上げ、金属のサビ落としなどに使われます。番手(例:#80、#120、#240、#400…)で粗さを表し、数字が小さいほど粗く、大きいほど細かく仕上がります。水に濡らして使える「耐水ペーパー」や、電動サンダー専用のディスク・ベルトタイプも現場で広く使用されます。
サンドペーパーの基本(構造と種類)
サンドペーパーは「台紙」「砥粒」「接着剤(レジン)」「表面処理」の組み合わせで性能が決まります。特性を知ると、作業スピードと仕上がりが大きく変わります。
台紙の種類:
- 紙基材:もっとも一般的。軽くて扱いやすい。紙の厚み(A〜Fなど)で強度が変わり、Fに近いほど厚く強い。
- 布基材(布やすり/エメリクロス):引き裂きに強く、曲面・R取りや金属加工に有利。ベルトサンダーにも多用。
- フィルム基材:平滑性が高く、番手が細かい仕上げ用や自動車補修の「肌調整」に向く。
- スポンジ(サンディングスポンジ):面なじみがよく、巾木や回り縁、モールディングなどの凹凸にも追従。
砥粒の種類:
- 酸化アルミニウム(アランダム):汎用性が高く、木部・石膏ボード・金属の一次加工に広く使用。
- シリコンカーバイド(炭化ケイ素):切れ味が鋭く、耐水ペーパーに多い。塗装の足付け、水研ぎ、石材・樹脂にも。
- ジルコニア、セラミック:重研削や金属に強い。ベルトサンダーやディスクでの高荷重作業に適する。
粒の付き方:
- オープンコート:目詰まりしにくい。パテ粉や木粉が多い内装現場で扱いやすい。
- クローズドコート:切削が早く面が揃いやすいが、目詰まりに注意。
耐水・非耐水:
- 耐水ペーパー:水や石鹸水と一緒に使える。目詰まりしにくく、塗装面や樹脂の仕上げに最適。一般に黒色が多い。
- 乾式ペーパー:乾いた粉じんを集塵しながら使う。石膏ボードのパテ研ぎは乾式+集塵が基本。
番手の考え方と選び方
番手は大きく「荒目(#40〜#80)」「中目(#100〜#180)」「細目(#220〜#400)」「極細(#600〜#2000)」に分かれます。数字が小さいほど削れる量が多く、深いキズが入りやすいので、仕上げに向けて段階的に番手を上げる(キズを細かくしていく)のが基本です。
代表的な目安:
- #60〜#80:大きな段差の荒取り、硬いパテや古い塗膜の除去、重研削。
- #100〜#150:木部成形、面取り、石膏ボードの一次研ぎ。
- #180〜#240:下地調整の仕上げ、ボードパテの二次研ぎ、塗装前の足付け前段。
- #320〜#400:塗装前の最終足付け、下塗り研ぎの仕上げ。
- #600〜#1000:塗装面の肌調整、水研ぎ、クリヤー前の均し。
- #1500〜#2000:鏡面仕上げ前の超微細研磨(主に自動車補修・家具塗装の領域)。
表記の違いについて:国内では「#240」などの表記と、欧州規格FEPAの「P240」が混在します。実際の粒度は近いものの完全一致ではないため、仕上がりを確認しながら番手を上げるのが安全です。
工程別の番手例(あくまで目安):
- 石膏ボードのパテ研ぎ:#120〜#180 → #220〜#240(クロス下地なら#240程度で十分なことが多い)。
- 木枠・建具の下地:#120 → #150 → #240(塗装前は#320まで上げると肌が整う)。
- 金属のサビ落とし→塗装:#80〜#120でケレン → #180〜#240でならし → #320で足付け。
- 塗装間研ぎ(下塗り→中塗り):#320〜#400(耐水で水研ぎにすると目詰まりが少ない)。
素材・工程別の使い分け
石膏ボード(パテ処理)
石膏ボードの目地・ビス頭のパテは粉じんが多く、オープンコートの乾式ペーパーが作業しやすいです。サンディングポールにメッシュタイプ(集塵穴のある「ネットペーパー」)を組み合わせると、粉じんを効率的に回収できます。一次研ぎは#120〜#150で段差を取り、二次研ぎで#180〜#240に上げて平滑に。仕上げは手元ライトを斜めから当てて、映り込みで面を確認すると失敗が減ります。
木工造作(枠・巾木・カウンター)
木は繊維方向に沿って研ぐのが基本。逆目に当てるとケバ立ちや線傷が目立ちます。成形は#120、段差取りは#100〜#150、仕上げに#240(塗装なら#320)まで。集成材の小口や突き板は削れすぎに注意。当て木(サンディングブロック)を使って面を真っすぐ保ち、R面はスポンジタイプで馴染ませます。
金属(鉄・ステンレス・アルミ)
塗装前のケレンやサビ落としには布基材やディスク・ベルトが効率的。硬度の高い砥粒(ジルコニア、セラミック)も選択肢です。サビはワイヤーブラシやスクレーパーで粗取り→#80〜#120→#180〜#240でならす→プライマー→#320で足付けと段階的に進めると密着が安定します。アルミは柔らかく深いキズが残りやすいので、#180以上から入るのが安全です。
塗装下地・補修(パテ〜足付け〜中間研ぎ)
塗装面はキズがそのまま仕上がりに出やすいため、番手飛ばしは厳禁。下塗り後の肌調整は#320〜#400、仕上げの水研ぎは#600〜#1000程度。耐水ペーパー+水(少量の中性洗剤を1〜2滴加えると滑りが良い)で目詰まりを防ぎます。角は当たりやすいので、力を逃がすよう面に対して平行にストロークし、角を立てたいときは当て木の角を活用します。
樹脂・石材・人工大理石
熱がこもると溶けや白化の原因になるため、軽い荷重と広いストローク、できれば湿式で。番手は#400から慎重に始め、#600→#800→#1000と段階的に。表面の光沢はコンパウンドで最終調整するのがセオリーです。
現場での使い方
言い回し・別称:
- サンドペーパー=ペーパー=紙やすり。耐水は「耐水ペーパー」、布基材は「布やすり」。
- 作業動詞は「ペーパー掛け」「ペーパー当て」「足付けする」「番手を上げる(細かくする)/落とす(粗くする)」。
- 塗装用語の「ケレン」(下地処理)はサンドペーパーや不織布(スコッチブライト等)での研磨を含むことが多い。
使用例(3つ):
- 「パテ二回目終わった? じゃあ#180で面出しして、#240まで上げといて。」
- 「木枠の角、当て木で#120→#240まで。塗る前に#320で軽く足付けね。」
- 「天井はメッシュの#150をポールにつけて、集塵機つないで軽めに流して。」
使う場面・工程:
- 石膏ボードのパテ処理(一次・二次研ぎ)、クロス下地の均し。
- 造作材の面取り・小口処理・塗装下地作り。
- 金属部のケレン、既存塗膜の足付け、補修パテの均し。
- 床や巾木の補修・タッチアップ前の整面。
関連語:
- 当て木(サンディングブロック)/サンディングポール/ランダムサンダー/オービタルサンダー/ベルトサンダー。
- 番手(#/P表記)/目詰まり/オープンコート/集塵。
- パテ/プライマー/シーラー/ケレン/足付け/不織布研磨材。
手研磨と電動サンダーの使い分け
手研磨は「当てたいところだけに当てる」コントロールが容易。小面積・角・際の仕上げに強い反面、体力と時間がかかります。当て木を使うと面が安定し、Rや曲面はスポンジペーパーで追従性を高めます。
電動サンダーは「面を早く・均一に」仕上げるのに有効。ランダムオービットは渦巻き傷が出にくく、内装の面出しに適します。オービタル(四角パッド)は壁際や角に強い。ベルトサンダーは重研削向けで、内装では造作の段差取りなど限定的に使用。いずれも集塵機に接続して粉じんを抑えると、作業性・仕上がり・健康のすべてが向上します。
失敗しないコツとチェックリスト
- 番手を飛ばさない:#120→#180→#240→#320のように「1段または2段上げ」が基本。
- 当て木を使う:指当てだけだと面が波打ち、角が丸くなりがち。面は面で削る。
- 荷重は軽く均一に:押し付けると深いキズとムラの原因。ペーパーの切れ味で削る意識。
- 一方向だけでなくクロスストローク:キズの偏りを抑えて平滑性が上がる。
- 粉じん除去を挟む:番手を上げる前にブロワーやウエスで粉を落とす。粉の上から研ぐと目詰まりしやすい。
- 明かりを工夫:斜めからのライトで面のうねり・キズが見える。手で撫でて段差の触感も確認。
- 角・小口は弱めに:角は当たりが強く削れやすい。必要な角だけ当て木の角で軽く通す。
- 新しい面には新しいペーパー:切れなくなったペーパーは時間も品質も落とす。ケチらないのが結果的に得。
安全対策・粉じん対策
粉じんは健康被害のリスクがあります。基本は「集塵+保護具+換気」。石膏粉や木粉の研磨では集塵機とメッシュペーパーを併用すると発じんを大幅に抑えられます。個人保護具は、防じんマスク(目安としてDS2相当の性能)、保護メガネ、手袋、必要に応じて聴覚保護具。現場では養生と作業エリア分けも有効です。耐水研磨は粉じんが飛びにくい一方、床の滑りに注意。水は少量で、作業後は確実に拭き取り乾燥させます。
保管・管理のコツ
- 湿気を避ける:紙基材は湿気で波打ち、性能低下。密閉袋やファイルに番手ごと分けて保管。
- 平置きで反り防止:巻きクセは当たりムラの原因。カット品はクリアファイル保管が便利。
- 使用中の識別:裏面にマジックで番手を大きく記入。現場で取り違えを防止。
- 小片も活用:角・溝用に小さく切って残し、当て木に貼って使い切ると経済的。
代表的なメーカーと特徴
理研コランダム(RIKEN CORUNDUM):日本の老舗研磨材メーカー。紙・布・フィルムまでラインアップが広く、内装のパテ研ぎから自動車補修まで定評があります。入手性が高く、番手の刻みも細かいのが現場での使いやすさにつながっています。
3M(スリーエム ジャパン):研磨材の総合ブランド。不織布(スコッチ・ブライト)や耐水ペーパー、集塵効率の高い穴あきディスクなど、システムでの使い勝手が良いのが特徴。塗装間研ぎや仕上げ領域に強みがあります。
KOVAX(コバックス):自動車補修分野で有名な日本ブランド。フィルム研磨材の平滑性と切れ味が高評価。内装の塗装仕上げや家具・建具の高品位仕上げに向いています。
Norton(ノートン/サンゴバン):世界的な研磨材メーカー。ディスクやベルトなどの重研削から汎用紙ペーパーまで幅広く、金属ケレンや床下地研磨などでも活躍します。
よくある質問(FAQ)
Q. 耐水ペーパーと普通のサンドペーパー、どう使い分ける?
A. 目詰まりしやすい塗装面の中間研ぎや、光沢仕上げ前の微細研磨には耐水ペーパーが有利です。水を使うことで切れ味と面の均一性が上がり、粉じんも抑えられます。一方、石膏ボードのパテ研ぎや木部の下地では乾式+集塵が基本で、作業スピードと現場管理がしやすいです。
Q. 番手はどれくらい飛ばしても大丈夫?
A. 仕上がり重視なら「1段階(例:#180→#240)」、急ぎでも「2段階」までが目安です。大きく飛ばすと前番手の深いキズが残り、塗装後にスジやうねりとして現れます。
Q. 目詰まりしたペーパーは復活できる?
A. 乾式ならゴムクリーナー(サンドペーパークリーナー)で詰まりを落とせます。軽い詰まりはブラシや叩きでもOK。耐水は濯いで再利用可能ですが、砥粒が摩耗していれば交換が早道です。
Q. 角がすぐ丸くなる…どう防ぐ?
A. 当て木で面に対して平行に当て、角を通過するときは荷重を抜くのがコツ。角を立てたい仕上げでは、最後に当て木の角で軽く1〜2ストロークだけ通します。
Q. ランダムサンダーの渦巻き傷が出る原因は?
A. 荷重過多・番手飛ばし・ペーパーの摩耗・集塵不良が主因です。軽い荷重でペーパーをこまめに替え、番手を刻み、集塵を効かせると改善します。最終は手研磨で「ならし」を入れるのも有効です。
Q. P表記と#表記、どちらを買えばいい?
A. どちらでも実務上は問題ありません。混在すると仕上がりのコントロールが難しくなるので、現場で使うシリーズ(銘柄・規格)を統一するのがベストです。
ケーススタディ:内装の定番3シーンと段取り
シーン1:クロス下地のボードパテ
1回目パテ乾燥後、#120〜#150で段差を落とす→粉を除去→2回目パテ→#180〜#240で面出し→手元ライトでチェック→必要なら薄パテ→#240で全体を揃える。メッシュペーパー+集塵で室内の粉じんを抑えると、後工程(クリーニング・クロス)の品質が上がります。
シーン2:木枠の塗装下地
#120で目違いと段差を落とし、#150→#240で木目を整える→下塗り(サンディングシーラー)→#320で軽く足付け→中塗り→#400で肌調整→上塗り。突き板は削りすぎ厳禁。角は当て木で軽く通す程度に留めます。
シーン3:既存金属手すりの塗り替え
スクレーパーで浮いた塗膜を除去→#80〜#120の布やすりやフラップディスクでサビ・段差を均す→脱脂→防錆プライマー→#240〜#320で足付け→上塗り。屋外では粉じん飛散に配慮し、必要に応じて養生・時間帯を調整します。
プロがやりがちな落とし穴と対策
- 粗目の引きずりキズが残る:早めに番手を上げ、面を斜光で確認。キズが消えたことを確認してから次へ。
- 面のうねり:当て木が小さすぎる・柔らかすぎるのが原因。面の広さに合うサイズ・硬さを選ぶ。
- 粉だまりの上から塗装:塗膜は密着不良やピンホールの原因に。研磨→除じん→脱脂の順を徹底。
- 熱による樹脂の溶け:荷重を抜いてストロークを速く、必要なら湿式に切り替える。
- ペーパーの使い回しで時間ロス:研磨コストは人件費より小さい。切れ味低下を感じたら即交換。
初心者向けの道具セット例(内装パテ・木部想定)
- 乾式ペーパー:#120、#180、#240、#320(各数枚)。
- メッシュペーパー:#150、#180(サンディングポール用)。
- 耐水ペーパー:#600、#1000(塗装間研ぎ・仕上げ)。
- 当て木(コルク付きと硬質の2種類)/スポンジペーパー(細目)。
- サンディングポール(集塵接続可)/ランダムサンダー(集塵穴対応パッド)。
- 集塵機(できれば自動連動)/防じんマスク・保護メガネ・作業手袋。
まとめ(現場で役立つ覚え方)
サンドペーパーは「番手を刻んで、面で当てて、軽く速く」が基本。素材と工程に合う種類(乾式・耐水、紙・布・フィルム、オープン/クローズド)を選び、粉じん対策と照明チェックを欠かさなければ、仕上がりは確実に安定します。言い回しとしては「ペーパー当て」「番手上げる」「足付けする」を押さえ、代表的な番手の目安(#120→#180→#240→#320)を体に覚えさせると、どの現場でも通用します。今日からは、ただ削るのではなく「面を整える」意識でサンドペーパーを使ってみてください。仕上がりも作業効率も、ひと段階アップします。