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半艶とは?違い・メリット・内装現場で失敗しない使い方を解説

半艶(はんつや)をやさしく解説:内装塗装の艶選びと現場で迷わないための基礎知識

「半艶って何? つやありやつや消しとは何が違うの?」内装の塗装や建具の仕上げを検討すると、必ず出てくるのが“艶(つや)”の話です。とくに半艶は、清掃性と落ち着きを両立できるため、現場でも指定が多い定番の仕上げ。でも、言葉の意味や実際の見え方、どこに使えば良いかが分からず不安になる方も多いはず。この記事では、現場の職人が日常的に使う現場ワード「半艶」を、初心者にもわかりやすく、実践的に解説します。読み終える頃には、発注や打合せで迷わない“艶選び”ができるようになります。

現場ワード(半艶)

読み仮名 はんつや(半ツヤ)/5分艶(ごぶつや)
英語表記 semi-gloss(セミグロス)

定義

半艶とは、塗装・コーティングの「艶(光沢)」の程度を示す言葉で、つやあり(グロス)とつや消し(マット)の中間に位置する仕上がりを指します。日本の現場では「5分艶(ごぶつや)」とも呼ばれ、一般に“フルグロスを100としたときの50%前後”の感覚で使われます。なお、艶の数値化はJISなどで光沢度の測定方法は定められているものの、「半艶」という表記の厳密な数値範囲はメーカーや製品ごとに微妙に異なります。そのため半艶は“実用上の呼び名・仕上がりの目安”と捉えるのが現実的です。

半艶の位置づけと他艶との違い

艶の呼び方は一般に次のように段階化されます(呼称・位置づけはメーカーにより差があります)。

  • つやあり(フルグロス):はっきり光を反射し、鏡面に近い印象。傷や下地の凹凸が目立ちやすいが清掃性は高い。
  • 7分艶(約70%イメージ):やや光沢が強め。商業施設の巾木や建具で使われることも。
  • 半艶/5分艶(約50%イメージ):ほどよく光沢。落ち着きと清掃性のバランスが良い。住宅内装で万能。
  • 3分艶(約30%イメージ):控えめな光沢。やわらかな雰囲気でムラが出にくい。
  • 艶消し(フラット/マット):反射がほとんどない。意匠性は高いが汚れはやや落ちにくい。

半艶は、室内光で“ほどよく反射して品があるけれど、テカテカし過ぎない”見え方を狙うときに選ばれます。壁・天井よりも、建具や枠、巾木などの付帯部材に相性が良い一方、キッチンや洗面まわりなど拭き掃除が多い壁にも有効です。

メリット

  • 清掃性と意匠性の両立:汚れが拭き取りやすく、マットほど黒ずみが残りにくい。
  • 下地の粗が出にくい:フルグロスよりも凹凸や傷が目立ちにくい。
  • 空間になじむ:光の反射が穏やかで、住宅・オフィスどちらにも合わせやすい。
  • 艶ムラのリスクが中程度:マットよりはムラが出やすいが、フルグロスよりは抑えやすい。

デメリット

  • 仕上がりの統一が必要:部分補修で艶差が出やすく、タッチアップが難しい場合がある。
  • 製品差・ロット差の影響:メーカーやロット違いで艶感が微妙に変わることがある。
  • 天井には強く反射し過ぎることも:照明の映り込みが気になる場合、3分艶や艶消しが無難。

適した場所・不向きな場所

  • 適した場所:室内建具、枠・巾木、手すり、腰壁、キッチン・洗面室の壁、トイレ、児童施設の共用部など。
  • 不向きな場所:強い光が直接当たる広い天井面、下地の凹凸が大きい石膏ボード面でパテ処理が甘い場合など。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では、次のように呼ばれることが多いです。意味はほぼ同じですが、製品の艶設定はメーカー仕様に従います。

  • 半艶(半ツヤ):もっとも一般的な呼び方。
  • 5分艶(ごぶつや):10段階中の5という感覚的表現。
  • セミグロス(semi-gloss):英語表記。輸入塗料や建材で使われることがある。

使用例(3つ)

  • 図面・仕上表での指示例:「建具・枠:水性ウレタン樹脂塗料 半艶/N-90(白系)/2回塗り」
  • 現場会話:「壁は3分、枠は半艶でいきましょう。水廻りは半艶に統一して拭き取りやすく。」
  • 見積・発注書:「上塗りグレード変更(艶):半艶指定。メーカー同一、色番流用。艶見本承認後施工。」

使う場面・工程

下地や用途により工程は変わりますが、代表的な流れを示します。

  • 石膏ボード(壁・天井)に塗装する場合
    • 下地処理:ジョイント・ビス穴のパテ→研磨→粉除去
    • シーラー:下地の吸い込み止め
    • 中塗り→上塗り:指定塗料の半艶グレード。ローラーは短〜中毛で均一に。
  • 木部(建具・枠)に塗装する場合
    • 素地調整:目違い・ささくれ研磨→目止め(必要に応じて)
    • 下塗り:サンディングシーラー等→研磨で肌調整
    • 上塗り:不透明塗装なら半艶の上塗り、クリヤーなら半艶クリヤー
  • 金属部(手すり・建具金物周り)に塗装する場合
    • 下地調整:ケレン→脱脂→さび止め(プライマー)
    • 上塗り:指定樹脂(ウレタン、シリコン等)の半艶

関連語

  • つやあり(グロス):最も光沢が強い仕上げ。
  • 艶消し(マット/フラット):反射の少ない落ち着いた仕上げ。
  • 3分艶・7分艶:半艶より上下の艶段階を示す現場用語。
  • 艶ムラ:塗り継ぎや希釈差、乾燥条件で艶が不均一に見える現象。
  • 艶調整剤(フラットニングエージェント):艶を落とすために配合される微粒子。
  • 仕様書(仕上表):塗料の種類・色・艶・回数などを指示する書面。
  • ロット:製造単位。艶や色味の微差を避けるため同ロットで揃えるのが基本。

半艶を選ぶ基準と注意点

選定の考え方(失敗しない艶選び)

  • 用途で考える:水廻りや手が触れる部材→半艶以上、広い天井面→3分艶以下が無難。
  • 光環境で考える:スポットライトや窓からの斜光が強い→艶が高いほど映り込みやムラが出やすい。
  • 下地の平滑度で考える:パテの段差・ペーパー目が心配→半艶〜3分艶に落とすと目立ちにくい。
  • 意匠で考える:木目や素材感を活かす→半艶クリヤーがバランス良好。

メーカー差・製品差に注意

「半艶」と表示されていても、メーカーや樹脂(アクリル、ウレタンなど)、色によって見え方は変わります。現場では次の確認を行うとトラブルが減ります。

  • 同一メーカー・同一製品で色違いを揃える(艶の質感をそろえるため)
  • サンプル板(A4程度)で実際に光に当てて確認(昼光と照明下の両方)
  • ロット番号を確認し、同一ロットで手配(特に一面を連続で塗る場合)

発注・指示の出し方と確認ポイント

半艶指定は、言葉だけでは誤解を招くことがあります。以下の順序で指示すると明確です。

  • 樹脂・グレード:例「水性ウレタン樹脂塗料」
  • 艶:半艶(5分艶、semi-gloss)
  • 色番号・調色指定:マンセル、日塗工、メーカー色番など
  • 塗装回数:下塗り1+上塗り2など
  • 下地:ビニルクロス/ボード/木部/金属 など
  • 施工面:壁・天井・建具・枠・巾木 など
  • 見本確認:艶見本・塗装サンプルの承認を必須化

施工前に監督・施主と「どの部位を半艶にするか」「他の部位との艶バランス」を図面に反映し、仕上表に残しておくと、補修や追加時も迷いません。

仕上がりを良くするコツ(職人目線)

  • 攪拌を丁寧に:艶は撹拌不足でブレやすい。缶底の艶調整剤をしっかり起こす。
  • 希釈は規定内:過希釈は艶落ちやムラの原因。温度・湿度に合わせて微調整。
  • 道具選定:広い面は短〜中毛のローラー。仕上げは一定方向に通して反射をそろえる。
  • 塗り継ぎ管理:日照や照明で見える角度を意識し、ウェットエッジを保つ。
  • 乾燥条件:低温高湿は艶引け・白化の原因。換気・養生を適切に。
  • 色による違い:濃色は映り込み・ローラー目が出やすい。作業スパンを短くし、ライン出しを丁寧に。

よくある失敗とリカバリー

  • 艶ムラが出た
    • 原因:撹拌不足、希釈差、乾燥ムラ、塗り継ぎタイミングのズレ。
    • 対処:全面を同条件で塗り重ねて均す。部分だけでは境界でさらに目立つことが多い。
  • 部分補修の艶だけ違う
    • 原因:ロット違い・経年差・塗り方の違い。
    • 対処:目立たない区切り(入隅・見切り)で面替え。見切り材を追加して区画を分けるのも有効。
  • 指紋や皮脂が目立つ
    • 原因:扉や手すりなど接触が多い半艶面。
    • 対処:中性洗剤で拭き取り。新設時は手掛け部のみ7分艶や耐汚染性グレードに上げる選択も。

メンテナンスと清掃性の目安

半艶は、中性洗剤を薄めた水で拭き取りやすく、生活汚れに強い仕上がりです。研磨剤入りスポンジや強アルカリ・強溶剤は艶落ちや白化の原因になるため、目立たない部分で試すか、メーカーの清掃推奨に従ってください。定期清掃時は柔らかい布で乾拭き→汚れがあれば中性洗剤→水拭き→乾拭きの順が安全です。

代表的なメーカーと艶設定の考え方(一般的傾向)

国内の主要塗料メーカー(日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研、ロックペイント、大日本塗料、菊水化学工業 など)には、内装向け塗料で半艶グレードが用意されている製品が多数あります。ただし、艶の見え方は樹脂種類・顔料・艶調整剤の配合で変わり、同じ「半艶」でも製品ごとに質感が異なります。メーカーをまたいだ置き換えや、艶の途中調整(半艶と3分艶を混ぜる等)は避け、原則は「同一製品の艶設定」で統一するのが安全です。必要に応じてサンプル板の承認を取りましょう。

半艶に関するよくある質問

Q1. 半艶と5分艶は同じですか?

A. 現場では同義として使われます。いずれも“中間的な艶”を指しますが、実際の光沢度は製品で異なります。図面・仕上表には「半艶(5分艶)」と併記し、製品の実物見本で確認するのが確実です。

Q2. 壁は半艶、天井はどうする?

A. 一般住宅なら、壁は半艶で清掃性を確保、天井は3分艶や艶消しで落ち着かせる組み合わせがポピュラーです。照明の映り込みが強い天井は、半艶だと光源が目立つ場合があります。

Q3. 既存の艶と合わせたいときは?

A. 年数が経つと艶は少し落ちていきます。新品の半艶を部分補修に当てると差が出やすいので、面で区切る、同製品の3分艶に落として全体を塗り替える、見切りで納めるなどが現実的です。必ず試し塗りを行い、日中と夜間両方で確認しましょう。

現場用チェックリスト(半艶版)

  • 塗料のメーカー・製品名・艶(半艶)が仕様書と一致している
  • ロット番号を面ごとに統一している
  • 撹拌済み(缶底の沈降物をしっかり起こした)
  • 希釈率は規定内、気温・湿度に合わせて微調整
  • 塗り継ぎ位置と順序を決めてから着手
  • 養生・換気・照明(チェック用)を確保
  • サンプル板を施主・監督と共有し、許容範囲を合意

半艶の見え方を左右する要素(ちょっと専門)

半艶の“質感”は、光沢度だけでなく、表面粗さ、艶調整剤の粒径、顔料の体質、膜厚、塗り方(ローラー肌/刷毛目)、照明の角度で変わります。たとえば同じ半艶でも、短毛ローラーで均一に膜厚を付けた方がスッとした反射になりやすく、刷毛仕上げは手仕事の味が見える反射になります。テクスチャーも含めた“見え方の総合”が艶の印象を作る、という理解があると打合せがスムーズです。

用途別のおすすめ艶バランス

  • 一般住宅
    • 壁:LDKは半艶〜3分艶、水廻りは半艶
    • 天井:3分艶〜艶消し
    • 建具・枠・巾木:半艶(指触汚れに強い)
  • オフィス
    • 壁:半艶(メンテ性重視)、会議室は3分艶も
    • 建具・共用部手すり:半艶〜7分艶(耐久性・清掃性)
  • 商業施設
    • 動線・バックヤード:半艶以上で清掃性アップ
    • 演出空間:照明設計と合わせて3分艶〜艶消しも併用

半艶と素材の相性

  • ビニルクロス上塗り:半艶は拭き取りやすく実用的。下地の継ぎ目やテクスチャーによる反射差が出るため、見本確認が有効。
  • 木部(不透明塗装):木口や導管の粗が強調されにくく、建具・枠の標準仕上げに適する。
  • 木部(クリヤー):木目を生かしつつ過度なギラつきが出ない。住宅で人気。
  • 金属:耐久性を要する場所に。半艶は指紋が目立ちにくく、清掃も容易。

打合せでの伝え方(施主・設計にやさしい説明)

艶は言葉だけだとイメージがバラつきます。A4サンプル板を「艶消し/3分艶/半艶/7分艶」の4枚で用意し、実際にその場の照明で見比べてもらうのが最短です。「水廻りは半艶にすると拭き取りやすく、リビングは3分艶で落ち着いた雰囲気に」など、用途と効果をセットで話すと納得感が高まります。

まとめ:半艶は“迷ったらコレ”の万能艶。実物確認で失敗ゼロへ

半艶(5分艶・セミグロス)は、清掃性・見た目の上品さ・施工の安定性をバランス良く叶える、内装の定番仕上げです。とはいえ、艶の見え方は製品・色・光環境で変わるのが実際の現場。メーカーやロットをそろえ、サンプル板での事前確認、撹拌・希釈・道具・乾燥条件の管理を徹底すれば、艶ムラやイメージ違いを大きく減らせます。壁・天井・建具の艶バランスを設計段階から決めておくことで、完成後の満足度もぐっと上がります。半艶を正しく使いこなして、日々の掃除がラクで、長く美観を保てる空間づくりに役立ててください。

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執筆者:株式会社MIRIX(ミリックス)

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