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現場で使われるシンナーとは?用途・危険性・正しい使い方を徹底解説

内装職人が知っておきたい「シンナー」入門ガイド:意味・種類・安全・現場での賢い使い方

「シンナーって、結局なんのこと?」「どれを選べばいいの?」と迷っていませんか。内装や塗装の現場では当たり前に飛び交う言葉ですが、初めて触れる方にはわかりにくいもの。この記事では、現場で使われる“シンナー”の意味から、種類の違い、安全に使うコツ、よくある失敗までをわかりやすく解説します。読み終える頃には、現場で不安なくやり取りできる知識が身につきます。

現場ワード(シンナー)

読み仮名しんなー
英語表記thinner / paint thinner (solvent)

定義

建設・内装の現場でいう「シンナー」は、油性・溶剤型の塗料や接着剤を薄めたり、塗装機や刷毛・ローラーなどの器具を洗浄したりするための有機溶剤の総称です。中身は製品によって異なり、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル、MEKやMIBKなどのケトン、アルコール類などが目的に合わせてブレンドされています。一般に「うすめ液」や「専用シンナー」と呼ばれることもあります。重要なのは“万能ではない”という点で、塗料や接着剤の種類に合わせた適合シンナーを選ばないと、乾燥不良や艶引け、ちぢみ(塗面の縮れ)などの不具合を招くことがあります。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では、目的や塗料系に合わせて呼び分けられます。次のような言い回しがよく使われます。

  • ラッカーシンナー(ニトロセルロースやラッカー系塗料の希釈・洗浄)
  • ウレタンシンナー(ウレタン樹脂塗料の希釈・作業粘度調整)
  • エポキシシンナー(エポキシプライマー・中塗りの希釈)
  • 塗料用シンナーA(汎用のペイントうすめ液。DIYや一般塗料向け)
  • 専用シンナー(特定塗料メーカーが指定するシンナー)
  • 洗浄シンナー/ガン洗い(スプレーガンや器具の洗浄用)
  • リターダー(乾燥・揮発を遅くするタイプのシンナー)

使用例(3つ)

  • 内装木部のクリア塗装で、ウレタンクリアの粘度を調整するために「ウレタンシンナー」を既定量だけ添加する。
  • クロス貼り替え時、下地パテのはみ出しやボンド残りを「洗浄用シンナー」で素早く拭き上げて仕上げ面を清潔にする(素材適合を事前確認)。
  • スプレーガン使用後、硬化前に「ガン洗浄用シンナー」で通液・分解洗浄し、ノズル詰まりや塗膜カスの堆積を防ぐ。

使う場面・工程

  • 塗装前後の器具洗浄(スプレーガン、刷毛、ローラー、受け皿)
  • ウレタン・エポキシ・ラッカーなど溶剤型塗料の希釈・粘度調整
  • 接着剤やコーキングのはみ出し除去(素材を溶かさないか要テスト)
  • 下地調整時の油分や手垢の拭き取り(脱脂)
  • 仕上げ面の軽微な汚れ落とし(光沢・素材影響の確認が必須)

関連語

  • うすめ液/専用シンナー/リターダー/レデューサー
  • 有機溶剤/SDS(安全データシート)/有機則(有機溶剤中毒予防規則)
  • 引火点/蒸気/局所排気装置/防毒マスク(有機溶剤用)
  • ラッカー/ウレタン/エポキシ/メラミン(各塗料系)

シンナーの種類と選び方

シンナーは「どの塗料・作業で使うか」によって最適な種類が変わります。誤った選定は仕上がりと安全の両面でリスクになるため、まずは系統を把握しましょう。

主な種類

  • ラッカーシンナー:揮発が速く、洗浄力が高いものが多い。ラッカー系塗料の希釈や器具洗浄に用いる。
  • ウレタンシンナー:ウレタン樹脂塗料に合わせた溶解力・揮発バランス。艶や仕上がり重視の場面で使用。
  • エポキシシンナー:エポキシプライマーや防錆塗料の希釈に。乾燥・密着・防錆力を損なわない設計が前提。
  • 塗料用シンナー(一般用):ホームセンターでも流通。幅広い油性塗料の希釈・洗浄に使えるが、プロ用の専用設計に比べると適合範囲や仕上がり最適化の面で限定的。
  • 洗浄用シンナー/ガン洗浄用:乾燥しかけた塗膜カスも落としやすい配合。洗浄専用として使い、塗料の希釈には使わないのが基本。
  • リターダーシンナー:気温が高い、乾燥が早すぎて肌が荒れる、白化(かぶり)する、といった時に揮発を遅らせて仕上がりを安定させる。

使い分けのコツ

  • 基本は「塗料メーカー指定の専用シンナー」を使う。銘柄・系統ごとに最適化されている。
  • 目的外使用は避ける。例えば「洗浄用」を希釈に使うと乾燥不良や艶引けの原因に。
  • 気温・湿度・風で揮発の様子が変わる。夏場はリターダーを混ぜる、冬場は過希釈を避けるなど、環境に合わせて微調整。
  • 過希釈は膜厚不足・隠ぺい不良の元。標準希釈範囲と粘度をSDS・仕様書で確認。
  • 異なる系統の塗料に混ぜると「ちぢみ」「割れ」「白化」が起きやすい。迷ったら小面積でテスト。

成分のざっくり知識

シンナーは複数溶剤のブレンドです。よく使われる代表例と特徴を押さえておくと選定の助けになります。

  • トルエン・キシレン:溶解力が強い芳香族炭化水素。塗膜をしっかり溶かすが、臭気・健康影響に注意。
  • 酢酸エチルなどのエステル:揮発が速めで、洗浄や希釈に使われる。
  • MEK・MIBKなどのケトン:溶解力・揮発のバランスが良い。用途により配合率が異なる。
  • イソプロピルアルコール(IPA)等:脱脂や軽清掃に使う場合も。ただし塗料の希釈に適さないことが多い。

ブレンド比率で「溶解力」「揮発速度」「臭気」「作業性」が変わります。同じ名称でもメーカーにより設計が違うため、必ずSDS・技術資料を参照してください。

安全と法規制(日本)

主な危険性

  • 引火性:多くのシンナーは低い温度で引火します。蒸気が滞留しやすく、火花や静電気で着火の恐れ。
  • 健康影響:蒸気の高濃度吸入でめまい・眠気・頭痛など中枢神経への影響。皮膚の脱脂による荒れ、目・喉の刺激も。
  • 環境:排水系への流出は厳禁。揮発した蒸気は作業環境を悪化させるため換気が必須。

現場での安全対策

  • 換気・局所排気:閉め切りの室内作業は禁止。可能な限り外気導入し、局所排気装置を用いる。
  • 火気厳禁・静電気対策:喫煙・火花・熱源を近づけない。容器アース・金属同士の接触を避ける。
  • PPE(個人保護具):有機溶剤用防毒マスク、ニトリルなど溶剤適合手袋、ゴーグルまたはフェイスシールド、長袖の作業着。
  • こぼれ対策:受け皿・養生・吸着材を準備。転倒防止に容器は安定配置。
  • 作業手順:希釈は少量ずつ、よく攪拌。休憩をこまめに取り、体調不良時は作業を中止。

法令のポイント

  • 有機溶剤中毒予防規則(有機則):多くのシンナーは対象有機溶剤を含みます。ラベル表示、SDS、局所排気、換気、作業主任者選任(対象作業)などが求められます。
  • 労働安全衛生法:SDSの入手・周知、容器・包装の表示、保護具の使用、作業環境測定(必要に応じて)。
  • 消防法:多くは危険物第4類(第1石油類または第2石油類等)に該当。貯蔵量・取扱量に応じて届出、少量危険物の基準、保管設備が必要。引火点は製品により異なるためSDSを確認。
  • PRTR制度:トルエン・キシレンなど対象物質を含む場合、事業所規模により届出が必要。
  • 廃棄物処理法:廃シンナー・汚染ウェスは産業廃棄物として適正処理。排水への放流は禁止。

具体的な適用は製品・取り扱い量・事業所条件で変わります。必ず最新のSDSと所轄官庁・安全担当の指示に従ってください。

保管・運搬・廃棄の実務

  • 保管:直射日光・高温を避け、冷暗所で密栓。可燃物から離し、施錠できる換気の良い場所に保管。容器は縦置きで転倒防止。
  • ラベル管理:品名・ロット・開封日を記載。類似容器への小分けは混同事故のもと。専用容器を使う。
  • 先入先出:古いものから使用。沈殿や分離、異臭があれば使用中止。
  • 運搬:横倒し厳禁。車内高温に注意し、固定して漏れ防止。火気厳禁表示を徹底。
  • こぼれ対応:吸着材・ウエスで回収し、密閉できる耐溶剤性容器へ。換気を最大化し、火気を遠ざける。
  • 廃棄:廃シンナー・洗浄廃液・汚染ウエスは分別して産廃業者へ委託。下水に流すのは厳禁。ウエスは密閉金属缶で一時保管。

材料・下地への影響とテストのすすめ

シンナーは汚れ落としにも便利ですが、素材によっては表面を溶かし、艶引け・白化・膨潤・変色を引き起こします。とくに注意したい例は以下です。

  • 塩ビ系(ビニルクロス、長尺シート):表面が曇る・テカる・色移りする場合がある。
  • アクリル・ポリカ・スチロール・ABS:クラックや白化のリスク。
  • アルミ・ステンレス:表面仕上げによっては曇りやシミの原因。
  • 既存塗装面:塗膜相性により“ちぢみ”や皺、艶落ちが発生。
  • 木部:導管に溶剤が入り込み、シミやムラになることがある。

初めての素材・仕上げでは、目立たない場所で「パッチテスト(少量で拭いて変化を見る)」を必ず行い、問題がなければ本番に移行しましょう。迷ったらアルコール系や専用クリーナーなど素材適合の高い選択肢を検討してください。

代表的メーカーと製品の考え方

現場では、使用する塗料・接着剤のメーカーが指定する「専用シンナー」を選ぶのが基本です。以下は日本で一般的な塗料メーカーの例です(順不同)。いずれも各塗料系統に合わせたシンナーをラインアップしています。実際の選定は必ず製品仕様書・SDSで確認してください。

  • 日本ペイント(ニッペ):建築から工業用まで幅広い塗料と専用シンナーを展開。
  • 関西ペイント:プロ向け塗料の専用シンナーや推奨希釈体系が充実。
  • ロックペイント:自動車補修・建築分野で、ラッカー・ウレタン系の専用シンナーやガン洗浄用を提供。
  • 大日本塗料(DNT):工業・建築用途の塗料群に対する適合シンナーを設定。
  • 菊水化学工業:建築仕上げ材・塗料の仕様に合わせた希釈・清掃用溶剤を案内。
  • アサヒペン:DIY向けの「ペイントうすめ液」など一般用途のラインアップ。

「メーカー指定」以外を自己判断で使うと、保証対象外になったり、仕上がり不良を招く恐れがあります。必ず推奨品に従いましょう。

初心者が失敗しがちなポイントと対策

  • 専用外のシンナーを使う:→ 指定シンナーを確認。なければメーカーに問い合わせ。
  • 入れすぎ(過希釈):→ 粘度カップや重量比で管理。標準希釈範囲を超えない。
  • 攪拌不足:→ 添加後は十分に混ぜる。層分離や色ムラの原因に。
  • 乾燥条件を無視:→ 高湿時は白化(かぶり)しやすい。換気・温湿度管理・リターダー活用。
  • 洗浄の一発勝負:→ 強い溶剤で一気に拭くと素材ダメージ。段階的に弱い溶剤から試す。
  • PPE省略:→ 臭いに慣れても危険は減らない。有機ガス用マスク・手袋・保護眼鏡を着用。
  • 残渣・廃液の放置:→ 硬化すると清掃が困難。作業直後に洗浄・回収。

トラブル事例と対処

  • 艶が引けた/白く曇った:→ 湿度過多・揮発が速すぎ。リターダーを併用、塗り重ね前に研磨・再塗装。
  • ちぢみ・割れ:→ 下地と上塗りの溶剤相性不良。下地を完全硬化させ、適合シンナーに変更して試験塗り。
  • 乾かない・ベタつく:→ 過希釈や不適合シンナー。希釈率を見直し、通風・温度を確保。必要なら除去・やり直し。
  • 素材が溶けた・艶が変わった:→ 強溶剤での拭き取りが原因。素材適合の弱溶剤へ切替、必ずパッチテスト。

よくある質問(FAQ)

Q. 水で薄められますか?

A. 水性塗料は水で薄めますが、溶剤型(油性)塗料はシンナーが必要です。塗料の種類と指定シンナーを必ず確認してください。

Q. においを軽くする方法は?

A. 換気と局所排気が基本です。活性炭入り防毒マスクを着用し、揮発を抑える必要があればリターダーを併用。ただし乾燥遅延に注意。

Q. 家にあるアルコールで代用できますか?

A. 代用は推奨されません。塗料の溶解・乾燥挙動が大きく異なり、仕上がり不良につながります。

Q. 期限はありますか?

A. 未開封でも経年で成分バランスが変わることがあります。開封後は早めに使い切り、異臭・濁り・沈殿などがあれば使用を中止してください。

Q. 異なるシンナーを混ぜてもいい?

A. 基本は不可。混合により性能・安全性が不明になります。どうしても必要な場合はメーカー推奨の範囲で小面積テストを実施。

Q. 車内に置いても大丈夫?

A. 高温・密閉空間での保管は危険です。直射日光・高温多湿を避け、換気の良い安全な場所に保管しましょう。

Q. 低臭タイプはありますか?

A. 低臭設計のシンナーもありますが、無臭ではありません。低臭でも換気・PPEは必須です。適合はSDSで確認。

Q. 再生シンナーは使えますか?

A. 洗浄用途などでは再生品が用いられることがありますが、塗装の希釈には不向きです。用途を限定して使い分けましょう。

現場で役立つ小ワザ

  • 希釈は「少量ずつ加えて攪拌→粘度確認」を繰り返す。入れすぎ防止。
  • スプレー塗装は気温・風を見てリターダー比率を微調整。肌が荒れるときは一度止めて原因確認。
  • 拭き取りは「柔らかい不織布+弱めの溶剤」から。ダメなら段階的に強めへ。
  • 洗浄は「乾く前」に。硬化後は落ちにくく、強溶剤が必要になり素材ダメージが増える。
  • 作業開始前に避難動線と消火器の位置を共有。こぼれ・火災時の初動を決めておく。

まとめ:シンナーは「適合」と「安全」が最優先

シンナーは塗装や内装仕上げには欠かせない相棒ですが、万能ではありません。要点は次の3つです。

  • 用途に合う種類を選ぶ(基本はメーカー指定の専用シンナー)。
  • 環境と仕上がりに合わせて希釈率・揮発速度を調整する。
  • 引火性・健康影響に配慮し、換気・PPE・法令を守って扱う。

この3つを押さえれば、仕上がり品質と安全性がぐっと高まります。現場で迷ったらSDS・仕様書を確認し、小面積テストで確かめる。これがプロの基本動作です。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
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