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スランプ試験とは?目的・正しい方法・現場で失敗しないポイントを徹底解説

内装職人も知っておきたい「スランプ試験」入門ガイド—意味・手順・現場でのコツまで

「スランプって何センチ?」—生コンの打設前、現場でよく耳にするこの言葉。初めて聞くと少し身構えてしまいますよね。スランプ試験は、コンクリートの“やわらかさ=施工のしやすさ”を簡単に確かめる基本の検査です。内装工事でも、土間コンクリートや床下地の打設に関わるタイミングで避けて通れません。本記事では、スランプ試験の意味から正しいやり方、よくあるミス、現場での会話例まで、はじめての方にもわかりやすく丁寧に解説します。読めば、現場で「とりあえず合わせておいて」ではなく、自信をもって判断・会話できるようになります。

現場ワード(キーワード)

読み仮名すらんぷしけん
英語表記Slump Test

定義

スランプ試験とは、円すい型の金属製型枠(スランプコーン)に新しいコンクリートを詰めて型を引き抜き、崩れ下がった高さの差(沈下量)を測ることで、コンクリートのワーカビリティ(扱いやすさ・流動性)を数値化する試験です。数値は一般に「スランプ○cm」と表現します。数値が大きいほどやわらかく、打設・締め固めが容易で、数値が小さいほど硬めで形状保持に優れます。受入検査として、納入された生コンが指定どおりの性状かを現場で素早く確認する目的で実施されます(試験方法はJISやASTMの規定に準拠)。

スランプ試験の基礎知識

なぜ内装現場でも重要なの?

内装と聞くと木工やボード、仕上げ材のイメージが強いですが、実際には土間コンクリートの打設、床下地のコンクリート・モルタル補修、重機基礎・機器基礎の設置など、コンクリートが関わる場面が少なくありません。床をフラットに仕上げたい、後工程の乾燥・養生を安定させたい—そのためのスタートラインが、適切なスランプ値の確認です。指定値から外れたコンクリートを使うと、ひび割れや仕上げ遅延、仕上げ面の不陸(ムラ)など、内装品質に直結する不具合リスクが高まります。

スランプ値の目安と読み解き方

スランプ値はプロジェクト仕様で事前に定められています。一般的な目安は以下の通りです(あくまで一例。実際は設計・配合表に従います)。

  • 8~12cm:一般的な躯体打設や床版補修など。形状保持と施工性のバランスがよい。
  • 15~18cm:配筋が密な部位やポンプ圧送を考慮した現場で使われることが多い。
  • 21cm前後:高流動寄り。締め固めや打込みは楽だが、分離やブリーディングに注意。

なお、自己充填コンクリート(SCC)の評価では「スランプ試験」ではなく「スランプフロー試験」を使います。床用のセルフレベリング材やモルタル類は「フロー試験(フローテーブル)」で評価するのが一般的で、スランプ試験の対象ではありません。

スランプ試験に使う道具

現場で用意する基本セットは次の通りです。

  • スランプコーン(円すい型の金属型。上下開口のある抜き型)
  • ベースプレート(平滑・水平な板)
  • タンピングロッド(突き棒。先端が丸い鉄棒)
  • スコップ(試料の投入に使用)
  • 定規・メジャー(スランプ値の計測)
  • バケツ・雑巾・ブラシ(水濡らし・清掃用)
  • 水平器(設置面の水平確認)

用具は清潔で、損傷や変形がないものを使うのが鉄則です。型やベースは事前に湿らせ、表面の水は拭き取っておくと結果が安定します。

正しいスランプ試験のやり方(現場標準)

手順(一般的な方法)

以下は広く行われている実務手順です。プロジェクトの規格書・JISに従ってください。

  • 1. 設置準備:水平な場所にベースプレートを置き、コーンを固定。ベースとコーンの内面を湿らせる。
  • 2. 試料採取:ミキサー車から代表性があるように採取し、分離のない均一な状態にする。
  • 3. 充填:コーンを3層に分けて充填し、各層ごとに均等に突き固める(一般に各層同回数)。突き棒は層を貫通させ、下の層まで届くようにする。
  • 4. 仕上げ:最上層は余盛りにしてからすり切り、コーン上面と面一に整える。
  • 5. 脱型:コーンを所定の速度で垂直に、揺らさず持ち上げる。
  • 6. 測定:コーンの高さと、崩れたコンクリート頂部の高さ差を測り、スランプ値(cm)とする。2回以上の測定を行い、結果が大きく異なる場合はやり直す。

ポイントは「水平・均一・一定速度」。ここが崩れると結果がブレます。特に、突き固めのムラ、コーンのゆがみ、ベースの不陸は誤差の元です。

受入可否の判断

判定は「指定スランプ値 ± 許容差」に入っているかで決めます。許容差は仕様書に従いますが、実務上は±2.5cm程度が用いられることが多い印象です。外れている場合は、現場加水で“調整”しないこと。生コン工場・監督・試験員に連絡し、原因確認と対処(再ミキシング、減水剤の検討、再納入など)を協議します。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように略されます。

  • スランプ(値)/スラ(略称)
  • スランプ何センチ?(指定値・実測値の確認)
  • 受け入れスランプ/指定スランプ(配合表の値)

「スランプ流れてる」「スランプ立ってる」といった言い回しで、やわらかい/硬いのニュアンスを伝えることもあります。

使用例(3つ)

  • 「今日の生コン、指定スランプは15cm。受入で13.5cmだから範囲内、いけます。」
  • 「配筋が詰まってるから、18cmにしてる。打設の前にスランプと空気量だけ確認しよう。」
  • 「床の仕上げ遅れてるのは、スランプ高すぎたのも一因。次回は指定通りで頼もう。」

使う場面・工程

主に次のタイミングで行います。

  • ミキサー車到着時の受入検査(打設前)
  • 配合・圧送条件が変わる切り替え時
  • 打設途中で性能に疑義が生じたとき(明らかな分離・遅延など)

内装寄りの工程でいえば、土間コンクリートの打設、床のレベリング前の下地打増し、機器基礎の形成など。下地品質は仕上げの寿命に直結するため、ここで妥協しないことが大切です。

関連語

  • ワーカビリティ:施工のしやすさ。スランプはその指標の一つ。
  • スランプフロー試験:自己充填コンクリートなどの流動性評価に用いる別試験。
  • 空気量試験:凍害抵抗性・仕上げ性に影響。受入でセットで実施されることが多い。
  • ブリーディング:打設後、表面に水が浮く現象。ひび割れ・仕上げ遅延につながる。
  • 分離:粗骨材とモルタルが分かれる現象。品質低下のサイン。
  • 供試体(テストピース):強度試験用の円柱・角柱試料。スランプとは別管理。

品質を左右する「よくあるミス」と対処

典型的な失敗パターン

  • 突き固めの回数・強さがバラバラ:測定値が安定しない。手順を統一。
  • コーンやベースが乾燥したまま:摩擦が大きく、値が低く出やすい。必ず湿らせる。
  • ベースが水平でない:コンクリートが片側に流れ、誤差大。水平器で確認。
  • コーンの引き上げが斜め・速すぎ:崩壊が大きくなり過大評価。垂直・一定速度で。
  • 試料の代表性がない:最初や最後の偏った材料だけで測ると実態とズレる。採取を工夫。

現場でのリカバリー思考

スランプが指定より高い(柔らかい)場合は、分離・ブリーディング・仕上げ遅延のリスクがあるので、打設スピードや締め固め方法、仕上げ開始のタイミングを見直します。低い(硬い)場合は、打重ね・充填不足のリスクがあるため、バイブレータの使い方や打込み手順を再検討。いずれも、配合そのものをその場で変えるような現場加水はNGです。原因を特定し、関係者間で合意した対処を選びます。

内装仕上げ目線で押さえるべきポイント

フラットな床づくりとの関係

床の平滑性はスランプ値の影響を受けます。高すぎると、表面に水が浮きやすく、鏝押さえのタイミングが遅れ、表面が弱くなる(ダスト・ポロポロ)恐れがあります。低すぎると、打設直後の均しが難しく、局所的な不陸や打継ぎラインが表れやすい。指定スランプを守り、仕上げ担当と「何分後から一次押さえ」「いつ二次押さえに入るか」など、段取りを擦り合わせましょう。

乾燥・収縮の視点

やわらかさ=水が多い、ではありません。減水剤など化学混和剤でワーカビリティを確保できるため、スランプが高いからといって強度が低いとは限りません。ただし、現場加水でスランプを上げると水セメント比が増え、強度低下・乾燥収縮ひび割れのリスクが跳ね上がります。仕様を守ることが、内装の仕上げ割れ防止に直結します。

ケース別:スランプと施工性の考え方

配筋が密な床スラブ

ある程度高めのスランプが有利。ただし、分離を避けるために骨材最大寸法や混和剤の種類・量に注意。締め固めは入念に、バイブレータを入れ過ぎない(材料分離を招く)。

薄塗りの打増し・小面積補修

過度に高いスランプは表面にムラを生みやすい。むしろ適度に“立つ”配合の方が扱いやすい。仕上げの段取りでリカバリー可能か、面積・厚み・温湿度を見て判断。

寒暖差・天候の影響

高温時は軟らかくても早く硬化が進むため、試験・打設・仕上げをスピードアップ。低温時は反対に仕上げ開始が遅くなる傾向。雨天時は表面水による“見かけのスランプ増”に注意し、ベースやコーンの水滴を丁寧に管理します。

よくある質問(FAQ)

Q1. スランプが規格内でも仕上がりが悪いことがあるのはなぜ?

A. スランプはあくまで流動性の一側面です。骨材の粒度、空気量、混和剤、施工手順、温湿度、締め固め・養生など、複数要因が仕上がりに影響します。スランプが合格でも、表面水や分離が見られる場合は施工条件を見直しましょう。

Q2. スランプ試験は1回で十分?

A. 受入検査としては代表性を確保できれば1回でよいケースもありますが、荷の切り替えや条件が変わるタイミングでは複数回の確認が推奨されます。結果の再現性が低いときは試験方法の見直しも必要です。

Q3. スランプが高いほど強度は下がる?

A. 現場加水で高くした場合は強度低下の原因になりますが、減水剤などでワーカビリティを上げた場合は必ずしも強度が下がるとは限りません。判断は配合表と試験成績に基づきます。

Q4. モルタルやセルフレベリング材もスランプで測る?

A. 一般にモルタル類やセルフレベリング材は「フロー試験」で評価します。スランプ試験の対象はコンクリートと考えるのが基本です。

スランプ試験のチェックリスト(現場保存版)

  • ベースは水平か? コーン・ベースは湿らせたか?
  • 試料は代表性があるか? 分離していないか?
  • 3層充填・均等な突き固めができているか?
  • すり切りを適切に行ったか?
  • コーンは垂直・一定速度で引き上げたか?
  • 測定は複数回・記録は正確に行ったか?
  • 指定値・許容差を確認し、受入可否を関係者に即時共有したか?

現場コミュニケーションのコツ

スランプは「センチ」で伝えるのが一般的です(例:スランプ15)。会話では、スランプだけでなく「呼び強度」「空気量」「骨材最大寸法」「単位水量(現場加水なし)」もセットで確認。違和感があれば、その場でメンバーと共有し、安易な判断を避けます。内装担当としては「仕上げ開始時刻」や「鏝押さえの回数」に影響するため、受入結果を基に段取りを調整しましょう。

ミニ用語辞典

ワーカビリティ

打込み・締め固め・仕上げのしやすさの総合的な概念。スランプはその指標の一つで、すべてを表すわけではありません。

ブリーディング

打設後に表面に水が浮く現象。仕上げ遅延・表面強度低下の原因。スランプが高い、骨材分布が不適切、振動過多などで増えやすい。

分離

粗骨材が沈み、モルタル分が上がるなどの偏り。見た目でも判断できることがあり、構造・仕上げ品質に悪影響。

スランプフロー

コーンを引き上げた後の水平広がり径で評価する方法。自己充填コンクリートや高流動コンクリートの評価に用いる。

まとめ—スランプ試験を味方に、仕上げ品質を底上げしよう

スランプ試験は、単なる「受入の儀式」ではなく、内装の仕上げ品質・工程管理を左右する重要なゲートです。要点は、正しい手順でブレのない測定を行い、指定値と現場条件を踏まえて段取りを最適化すること。ムリ・ムダ・ムラのない施工に直結します。今日からは、生コン車が到着したら「スランプ何センチ?指定は?空気量は?」と自然に確認。小さなひと手間が、大きな手戻りを防ぎます。スランプ試験を現場の共通言語に、安心・確実な内装工事を進めていきましょう。