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鉄骨梁とは?現場で役立つ構造・種類・基礎知識をわかりやすく解説

鉄骨梁ってなに?内装職人が現場で迷わないための実践ガイド

図面に「鉄骨梁」「H-400×200」などの記号が並び、現場では「この梁下(はりした)で仕上げ寸法取ってね」とサラッと言われる。初めてだと、どこを見て、なにを基準に作業すれば良いのか不安になりますよね。本記事では、建設内装の現場で頻出するワード「鉄骨梁(てっこつばり)」を、内装目線でわかりやすく解説。基本構造から図面の読み方、内装の取り合い、使ってはいけないNG行為、現場での声がけの具体例まで、実務で役立つポイントを一気通貫でまとめました。読み終える頃には、梁周りの段取りで迷わなくなるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名てっこつばり
英語表記steel beam(大梁: girder / 小梁: joist)

定義

鉄骨梁とは、鉄骨造(S造)で床や屋根、壁などの荷重を受け、柱へと力を伝える横架材のこと。H形鋼などの鋼材で構成され、上下面の「フランジ」と中央の「ウェブ」で形づくられる。梁は「大梁(おおばり/ガーダー)」と「小梁(こばり/ジョイスト)」に大別され、力の流れ・スパン・部材寸法が異なる。内装では、梁下の有効寸法、耐火被覆、仕上げとの取り合い、設備吊りの可否が実務上の重要論点となる。

鉄骨梁の基本構造と各部名称

もっとも一般的な鉄骨梁はH形鋼です。断面は「H」の形で、上下の水平板がフランジ、真ん中の縦板がウェブと呼ばれます。図面や現場でよく出る名称を押さえておきましょう。

  • フランジ:梁の上下面の厚い板。曲げに抵抗する主役。幅=梁幅。
  • ウェブ:フランジ同士をつなぐ縦板。せん断力に抵抗。
  • 梁せい:フランジ間の高さ方向寸法(断面せい)。内装の天井クリアランスに直結。
  • 梁下(はりした):梁の下面。天井高さの基準点として多用。
  • スプライス:梁の継手部。ボルト接合が多く、段差やボルト頭が出る。
  • スタッド:床デッキとの合成用せん断連結スタッド。梁上に並ぶピン状部材。

内装目線では「梁下実測」「梁幅」「梁の凸(ボルト頭・リブ・スプライス)」「耐火被覆厚み」をセットで確認すると、後工程の干渉を防ぎやすくなります。

種類と役割(大梁・小梁・形鋼の違い)

現場で目にする鉄骨梁には、少なくとも次の区分があります。

  • 大梁(ガーダー/Girder):柱から柱へ床荷重を受ける主要梁。断面が大きく、梁せいも大きい。設備配管のルートに影響しやすい。
  • 小梁(ジョイスト/Joist):大梁から大梁へ床スラブを受ける二次梁。ピッチが一定で、本数が多い。天井吊りルート設定で避ける対象になることが多い。
  • 形鋼の種類:H形鋼が主流。ほかに溝形鋼、角形鋼管+プレート補強などもあるが、梁としてはH形鋼が圧倒的に多い。

内装の計画では「どれが大梁・小梁か」を図面で把握し、大梁は避ける、小梁の間を通す、梁下を基準に下がり天井を設計する、という組み立てが基本です。

図面記号の読み方(H-400×200×8×13 など)

鉄骨の加工図・構造図では、H形鋼が「H-高さ×幅×ウェブ厚×フランジ厚」で表記されます。例えば「H-400×200×8×13」は、梁せい約400mm、フランジ幅200mm、ウェブ厚8mm、フランジ厚13mmのH形鋼を示します。

  • TOS(Top of Steel):梁上端(鋼材上面)標高。
  • BOS/BOB(Bottom of Steel/Beam):梁下端(鋼材下面)標高。
  • FL/GL:仕上げ床(Finished Level)/基準地盤(Ground Level)。

内装では「天井高さ=梁下(BOS)-必要クリアランス-仕上げ厚」と計算するのが基本。耐火被覆がある場合、BOSは被覆後の寸法で再確認が必須です。

耐火被覆・防錆と仕上げの取り合い

鉄骨梁は火熱に弱いため、多くの建物で耐火被覆が必要です。代表的なのは以下の方法です。

  • 吹付けロックウール:繊維状の材料を吹き付ける。厚みが一定ではないため、実測が重要。
  • 巻き付け(板状ロックウール・けい酸カルシウム板等):見切りが揃いやすい。納まり検討がしやすい。
  • 耐火塗料(膨張性):意匠露出梁で採用。膜厚管理がシビア。

注意点は3つ。1) 被覆は「認定仕様」が基本で、勝手に削る・欠損させるのは厳禁。2) 仕上げ材(LGS・PB・造作)と被覆端部の見切りを事前に決める。3) 吊りボルトやサドルの取り付けは被覆下の鉄骨に直接アンカーを打たず、承認済みのハンガーやビームクランプ、インサートを用いる。防錆塗装(錆止め)が事前に施されている場合、塗装傷を出さない配慮も必要です。

現場での使い方

言い回し・別称

  • 鉄骨梁/梁(はり)/H形梁
  • 大梁(ガーダー)/小梁(ジョイスト)
  • 梁下(はりした)/梁せい/フランジ/ウェブ

使用例(3つ)

  • 「この区画は梁下2,400で天井通して。小梁の間で吊ってね」
  • 「耐火被覆の厚み次第で梁型が出る可能性あるから、実測してからLGS組もう」
  • 「大梁には穴あけ禁止。ダクトは小梁ピッチの間を縫ってルート変更しよう」

使う場面・工程

  • 墨出し・実測:梁下レベルの確認、被覆厚のばらつき把握。
  • LGS下地:梁回りの見切りや梁型の組み立て、干渉回避。
  • 設備・電気:吊り金物の取り付け位置選定、ビームクランプ使用検討。
  • 仕上げ:梁周りのパテ処理、耐火被覆の欠損補修確認。

関連語

  • 梁型(はりがた):梁をくるむ下がり形状。見切り・納まりに関わる。
  • スリーブ・開口:梁に穴を開ける行為は原則不可(設計承認が必要)。
  • TOS/BOS:梁上端・下端の基準標高。天井高さ算定に必須。
  • ビームクランプ・ハンガー:梁から吊るための専用金物。あと施工アンカーの代替。

内装での段取り・チェックリスト(実務フロー)

工程の前後関係に沿って、現場で実際に役立つポイントを整理します。

1. 着工前(図面確認)

  • 構造図で大梁・小梁の位置、断面、TOS/BOSを確認。
  • 設備・電気のルート図と重ね、梁干渉がないか事前に洗い出し。
  • 耐火被覆の仕様(吹付け/巻き/塗料)と厚み、施工時期を確認。

2. 現地実測(墨出し前後)

  • レーザーで梁下レベルを複数点測定。被覆後は再測定。
  • スプライスやリブの出っ張り、ボルト頭の位置を記録。
  • 梁と壁・柱のクリアランス、梁幅の実寸を確認。

3. 納まり検討(LGS・天井・造作)

  • 梁型の有無とサイズを確定。意匠担当と見切り形状をすり合わせ。
  • 天井下地の吊り位置は小梁の間を基本に。大梁は避ける。
  • 開口や貫通が必要なら構造・監理者に承認申請。代替案(ルート変更)も準備。

4. 施工・検査

  • 被覆の欠損・汚損を出さない養生を実施。万一傷つけたら速やかに補修。
  • ビームクランプ等の金物は指定製品とトルク管理で安全施工。
  • 仕上げ後、梁周りのクラック・すき間を点検。見切りの直線性を確認。

やってはいけないNGと代替手段

  • 無承認の穴あけ・溶接:鉄骨の強度や耐火認定を損ねる恐れ。必ず構造設計・監理者の承認を得る。
  • 耐火被覆の勝手な削り取り:耐火性能の失効につながる。欠損発生時は認定仕様で補修。
  • 防錆塗装面への無断加工:腐食リスク。必要時は事前調整し、再塗装手順を確保。

代替手段としては、ビームクランプやハンガー金具の使用、ルート変更、事前インサートの活用が現実的です。

設備・電気との取り合い(干渉回避のコツ)

梁は配管・ダクト・ケーブルラックの天敵にも味方にもなります。以下の原則を押さえましょう。

  • 大梁は避ける:断面が大きく、貫通不可が原則。ルートを曲げるか下げる。
  • 小梁ピッチを読む:ピッチ間に通せるかを事前検討。必要なクリアランスを確保。
  • 梁下での納まり:天井内クリアランスが不足する場合は、下がり天井で吸収。
  • 吊りポイント:梁からの吊りは承認済み金物のみ。LGSに過荷重を掛けない。

意匠と見せ方(露出梁/意匠梁)

カフェやオフィスで「梁を見せる」デザインは人気です。意匠露出の場合の注意点:

  • 耐火性能の担保:耐火塗料など、露出仕様での認定確認が必須。
  • 塗装・仕上げ:下地処理、錆止め、上塗りの工程管理で美観が決まる。
  • 設備配管の見せ方:梁との取り合いを意図的にデザイン。支持金物も見せる前提で選定。

よくある疑問Q&A

Q1. 梁と柱の違いは?

A. 柱は縦方向の部材で、上からの荷重を下へ伝える。梁は横方向で、床・屋根などの荷重を柱へ受け渡す役割。内装では梁下寸法が天井高さに直結します。

Q2. 鉄骨梁とRC(鉄筋コンクリート)梁、内装での違いは?

A. RC梁は成形面が比較的フラットで、躯体面に直接仕上げを当てやすい。一方、鉄骨梁はスプライスやリブなど凸が多く、さらに耐火被覆の形状ばらつきがあるため、実測・調整がより重要です。

Q3. 梁型と下がり天井はどう使い分ける?

A. 梁周りだけを箱状にくるむのが梁型。天井全体を下げてフラットに通すのが下がり天井。設備ルート・意匠・コストのバランスで決めます。

Q4. 天井吊りはどこから取るべき?

A. 原則は承認済みの構造部(小梁の間の指定位置やインサート)から。梁本体への無承認加工はNG。ビームクランプ等の専用金物を使用し、トルク管理・荷重計算を行います。

関連メーカー・材料(参考)

鉄骨梁そのものは現地製作ではなく、製鋼メーカーのH形鋼を加工工場で組立て・現場建方します。代表的な国内メーカーとしては、一般に日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所などがH形鋼を供給しています。耐火被覆や支持金物は多数のメーカーがあり、物件ごとの指定・認定仕様に従うのが原則です。具体的な品番・工法は設計図書・仕様書・認定書で確認しましょう。

用語ミニ辞典(内装でよく出る梁まわり)

  • 梁せい:梁の高さ方向寸法。天井内のクリアランスに直結。
  • 梁下(BOS):梁の下面。天井高さの基準点。
  • スプライス:継手部。ボルト頭の出っ張りに注意。
  • 耐火被覆:梁を高温から守る被覆。欠損厳禁、認定仕様順守。
  • ビームクランプ:梁フランジを挟み込む支持金物。穴あけ不要。
  • 大梁/小梁:一次梁/二次梁。大梁は貫通不可が原則、小梁間を通すのが定石。

内装職人の実践メモ(現場で効くコツ)

  • 「被覆前」と「被覆後」の梁下寸法は別物。両方測る。
  • 梁まわりの見切りは早期決定。曲げ見切り・直線見切り・面落ち、どれで行くか意匠と握る。
  • 設備の重い吊り物は「誰の責任で」「どこに」「何kg」を明確化。口約束は事故のもと。
  • 梁型はあとで効いてくる。幅・高さを数ミリ単位で詰めると、空間が格段に整う。
  • 現合は記録が命。写真・寸法・標高を残すと後工程が楽になる。

まとめ(今日から迷わない鉄骨梁)

鉄骨梁は、建物の力を受け持つ要の部材。内装では「梁下が天井を決める」「被覆が寸法を変える」「穴あけは原則NG」の3点をまず頭に入れましょう。図面で大梁・小梁とTOS/BOSを読み、現地で被覆後寸法を実測。取り合いは早めに意匠・設備と握る。吊りは承認済み金物を使い、認定仕様を守って安全第一で進める。これだけで、梁まわりのミスはぐっと減ります。

本記事を現場での“共通言語”として使い、迷ったら「梁下」「被覆」「承認」の三点を確認。そうすれば、鉄骨梁は怖くありません。次の現場から、胸を張って段取りしていきましょう。