商業店舗の原状回復で後悔しないために知っておきたい基礎知識と費用を賢く抑える方法
「店舗を退去する際、原状回復ってどこまでやればいいの？」「見積もりが高額で不安…」「業者選びで失敗したくない」
商業店舗の原状回復は、初めての方にとって疑問や不安がつきもの。退去時のトラブルや、思わぬ高額費用の請求に戸惑う方も少なくありません。
本記事では、そんなお悩みに寄り添いながら、原状回復の基礎知識から費用相場、コストを抑える実践的なポイント、失敗しない業者選びのコツまで、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。読了後には、安心して賢く原状回復を進められるようになるはずです。
そもそも商業店舗の原状回復とは？
原状回復の基本的な意味
「原状回復」とは、店舗を借りる前の状態、つまり“元の状態”に戻して返却することです。オフィスやテナントビル、飲食店や物販店など、店舗の業態や契約内容によって求められる原状の範囲は微妙に異なりますが、基本的には以下の2点がポイントです。
- 入居時の状態へできるだけ近づけること
- 入居者が造作や改装で加えた部分（例：間仕切り、什器、看板、床材など）を撤去すること
ただし、経年劣化や通常損耗（年月により自然に消耗した部分）については、原則として借主負担とはなりません。どこまでが原状回復かは、契約書や国土交通省のガイドライン、大家さん（貸主）との打ち合わせが大切です。
住宅と商業店舗の原状回復の違い
住宅賃貸と異なり、商業店舗の場合は「スケルトン返却」（コンクリート打ちっぱなし等の何もない状態に戻す）が求められることが多いです。店舗用途で大掛かりな内装工事を行った場合、撤去・復旧範囲も広がり、費用が高額化しやすいのが特徴です。
商業店舗原状回復費用の相場と見積もりのポイント
一般的な費用相場
商業店舗の原状回復費用は、店舗の広さや内装のグレード、解体範囲により大きく異なりますが、概ね以下が目安となります。
- 軽微な内装補修：1㎡あたり1万円前後
- スケルトン返却（全面解体）：1㎡あたり2万～4万円
- 飲食店など設備が多い場合：1㎡あたり3万～6万円
例えば、20坪（約66㎡）の物販店でスケルトン返却を行う場合、約130～260万円が相場です。ただし、現場状況や契約内容次第で前後しますので、複数社から原状回復見積もりをとることが重要です。
費用を左右する主な要素
- 店舗の広さ・間取り
- 電気・ガス・水道など設備の有無と内容
- 床・壁・天井の仕上げ材（高級素材は割高）
- 厨房設備や空調機器の撤去・復旧の有無
- 立地（都心部や繁華街は費用が高くなりがち）
- ビル指定業者の有無
- 工期（短納期だと割増しになることも）
見積もり時のチェックリスト
費用トラブルを避けるため、見積書では以下を必ずご確認ください。
- 工事項目が具体的に記載されているか（「一式」表記が多い場合は要注意）
- 追加費用やオプション工事の有無・金額
- 産業廃棄物処理費用・運搬費用が含まれているか
- 原状回復の範囲・内容が契約書と一致しているか
- 保証・アフターサービスの有無
原状回復でよくあるトラブルとその対処法
よくある原状回復トラブル事例
- 退去時に想定以上の高額請求を受けた
- 契約書と違う内容の原状回復を求められた
- 原状回復後のチェックで不備や追加工事を指摘された
- 原状回復業者の手抜き施工・不透明な追加請求
- 敷金が十分戻ってこなかった
トラブルを避けるための注意点
- 必ず契約書を細かく確認し、「原状回復の範囲」を明確に把握する
- 入居時・退去時の店舗写真を撮影して記録する
- 原状回復の内容を貸主・管理会社と書面で確認・合意する
- 見積もりは複数社から取得し、内容を比較する
- 疑問点は必ず業者・貸主に事前確認し、トラブルの芽をつぶす
費用を抑えるための実践的なコツとテクニック
1. 必要以上の工事をしない（契約書の徹底チェック）
まず、契約書に定められた原状回復範囲を正確に理解しましょう。貸主側が「スケルトン返却」と指定していないのに、全面解体工事を行うと無駄な出費となります。
契約書チェックポイント：
- どこからどこまでの工事が借主負担か
- 造作物や設備の買取・残置の可否
- 原状回復対象の詳細な範囲
- 経年劣化や通常損耗の扱い
- ビル指定業者の有無
2. 原状回復業者は必ず複数社から見積もりをとる
費用の適正化には、相見積もりが非常に効果的です。1社のみだと相場より高いまま契約してしまうリスクも。
また、「原状回復専門業者」と「内装業者」「解体業者」では、サービスや対応範囲、料金体系が異なります。複数業者の話を聞くことで、適正価格・よりよい工法・サービス内容が見えてきます。
3. 原状回復業者選びのポイント（信頼できるプロの見極め方）
- 過去の原状回復事例（実績）が豊富か
- 見積もり内容が明確かつ丁寧な説明があるか
- 店舗特有の課題（飲食・物販・サービス業など）に精通しているか
- 現地調査をしっかり行い、ヒアリングしてくれるか
- 口コミや評判、法人実績、資格（建設業許可など）の有無
- 追加費用の有無やアフター対応について明確に説明するか
できれば、「原状回復工事専門業者」を選びましょう。専門性が高く、トラブル回避やコスト削減のノウハウを豊富に持っています。
4. DIYできる部分は自分で補修する
壁の小さな穴や軽度の汚れ、簡単な清掃など、プロに依頼せずとも自分で直せる部分はDIYも一案です。ただし、無理な補修は逆に費用が高くつく恐れがあるため、難易度を見極めましょう。
5. 資産価値維持と費用削減のバランスを考える
原状回復は単なる「コスト」ではなく、店舗資産の価値維持にもつながります。過度な節約で手抜き工事となると、原状回復後に再度やり直しになるリスクも。貸主との信頼関係や将来的な資産価値を考え、過不足ない工事を心がけましょう。
タイプ別！商業店舗原状回復の具体的事例集
飲食店（スケルトン返却）
事例：都内ビル2階のカフェ（25坪）
- 厨房設備一式の撤去・排水管工事・グリストラップ清掃
- 床・壁・天井の内装解体
- 電気・ガス設備の撤去・復旧
- 産廃処理費用を含め総額約250万円
ポイント：飲食店は水回り・設備撤去が多く、費用が高くなりがち。専門業者の見積もり比較で30万円のコスト削減に成功。
物販店（部分補修）
事例：郊外ショッピングモール内のアパレル店舗（20坪）
- 造作什器・棚の撤去
- 床の傷補修とクリーニング
- 壁クロスの部分張替え
- 入居時の写真を元に、最小限の復旧工事で総額約55万円
ポイント：契約書で「造作物撤去のみ」と明記されていたため、過剰な復旧工事を省き大幅にコスト削減。
美容室（オーナー買取による残置）
事例：駅前ビルの美容室（15坪）
- セット面・シャンプー台など、貸主が次の入居者向けに買取・残置を承認
- 水回りや配線のみ部分復旧
- 家具や造作の撤去不要で総額約30万円（通常の半額以下）
ポイント：事前に貸主と交渉し、資産価値の高い設備は残置OKに。原状回復費用と資産価値維持の両立を実現。
原状回復をスムーズに進めるための事前準備とは
1. 退去までのスケジュールを明確にする
店舗の退去には、工事期間・工事後の立ち会い・原状回復確認など、複数のステップがあります。スケジュールに余裕を持たせ、早めに準備にとりかかりましょう。
2. 必要書類と記録を残す
契約書類、入退去時の写真、見積書・請求書などはしっかり保存しましょう。万一のトラブル時に、証拠資料として役立ちます。
3. 原状回復内容を文書で合意
貸主・管理会社と「どこをどのように原状回復するか」「残置物や買取の可否」などを事前に書面で合意しておくと、追加請求やトラブル防止になります。
よくある質問（FAQ）
Q. 敷金から原状回復費用が差し引かれるのはなぜ？
敷金は、原状回復や家賃滞納などの債務保証として預けているお金です。原状回復費用に充当され、残りが返還されます。費用が敷金を上回る場合は追加請求となるケースも。
Q. 飲食店はなぜ原状回復費用が高くなるの？
飲食店は厨房機器や排水・換気など専門設備が多く、撤去・復旧が複雑だからです。油汚れやグリストラップの清掃も追加費用となります。
Q. 貸主指定の業者を必ず使わなければいけない？
契約書で指定がある場合を除き、原則選択肢はあります。ただし、指定業者を利用しない場合は貸主・管理会社との事前合意を必ず取りましょう。
Q. 原状回復後に再工事を求められることは？
契約や工事内容に齟齬がある場合や、施工不良の場合に発生します。工事完了後の立ち会い確認、写真記録、書面での合意が重要です。
Q. 業者にすべて任せれば大丈夫？
専門業者であっても、貸主や管理会社との合意内容、見積もり内容は十分に理解・確認を。自分で把握しておくことでトラブルや追加費用のリスクを減らせます。
まとめ：安心して退去・原状回復を進めるために
商業店舗の原状回復は、金額が大きく、不安や疑問がつきまとうものです。しかし、契約書・原状回復の範囲の正しい理解、複数社からの見積もり取得、信頼できる業者選びなど、ポイントをしっかり押さえれば、無駄な費用やトラブルを未然に防ぐことができます。
また、資産価値維持や貸主との関係にも配慮しながら、過不足ない原状回復を心がけましょう。
もしご自身で判断が難しい、または費用やトラブル回避で専門家の力を借りたい場合は、ぜひ弊社MIRIXにご相談ください。豊富な事例とノウハウで、安心・納得の原状回復をサポートいたします。まずはお気軽にご相談いただければ、安心して理想の退去を実現できます。
