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スイッチボックスとは?種類・サイズ・設置方法と現場で失敗しない選び方を徹底解説

内装現場でよく聞く「スイッチボックス」完全ガイド:意味・種類・選び方・施工のコツ

図面に「SB」「1連深形」「気密ボックス指定」などと書かれていて、何をどう選べばいいか不安になったことはありませんか?この記事では、内装・電気の現場で毎日のように登場する「スイッチボックス」を、初心者にもわかりやすく、現場の実務に役立つ観点で丁寧に解説します。種類やサイズの選び方、取り付け位置の決め方、ボード開口のコツ、よくある失敗と対策まで、これさえ読めば現場で迷わない知識をまとめました。

現場ワード(スイッチボックス)

読み仮名すいっちぼっくす
英語表記switch box(electrical switch box, wall box)

定義

スイッチボックスとは、壁や天井内に埋め込んで設置する、照明スイッチなどの配線器具を固定し、電線接続部を保護するための箱型部材のことです。配線器具の支持・配線の保護・防火や気密の補助・メンテナンス性の確保など、建築と電気設備の“納まり”を両立させる重要な役割を持ちます。現場では「SB」「スイボ」と略されることがあります。

まず押さえたい基本:スイッチボックスの役割

スイッチボックスは単なる箱ではありません。仕上げ品質と安全性を左右する重要部材です。主な役割は次のとおりです。

  • 支持と位置決め:スイッチ・センサー等の器具を所定の高さと位置に確実に固定する。
  • 配線の保護:接続部や結束部を躯体から孤立させ、機械的損傷や壁内燃焼リスクを減らす。
  • 防火・遮音・気密の補助:区画壁や気密仕様では、周辺の処理(パテやカバー)と併せて性能確保に寄与。
  • メンテナンス性:後日の器具交換や点検をスムーズに行える空間(容積)と固定基準を提供。
  • 仕上げの納まり:プレート面と壁面をフラットに仕上げるための基準面になる。

種類とサイズの基礎知識

形状(連数)

「1連・2連・3連…」は横並びのスイッチ数の単位です。1連は1個用、2連は2個用という意味で、図面の仕様や選定するスイッチの組み合わせに合わせてボックス幅を選びます。

深さと素材

深さは「浅型(例:35mm前後)」「深型(例:45〜50mm前後)」が一般的です。器具や結線量が多い場合は深型を、壁厚が薄い・裏に干渉物がある場合は浅型を選ぶなど、納まりを見て選定します。素材は大きく分けて2種類あります。

  • 樹脂製ボックス:軽量で扱いやすく、木造や石膏ボード壁で多用。気密タイプも豊富。
  • 金属製ボックス(亜鉛めっき鋼板など):耐熱性・耐久性に優れ、オフィスビル等のLGS下地でよく採用。

用途別ボックス

  • 標準ボックス:室内の一般用途。
  • 気密ボックス:高気密住宅や気密シート貫通部に使用。別途気密カバーを併用する場合も。
  • 耐火・区画対応:防火区画を貫通する場合、周囲の不燃パテ充填や区画貫通処理が必要(設計・仕様書に従う)。
  • 防滴・屋外:屋外露出は露出ボックスや防雨形ボックスを使用(スイッチボックスとは別扱いが多い)。

規格と適合

器具の取付ビスピッチは国内規格に準拠した寸法が一般的で、適合器具同士は問題なく組み合わせられます。管接続はCD管・PF管・VE管など、現場の配管仕様に合わせたグロメットやコネクタで接続します。製品選定時は、設計仕様・メーカー施工説明書・電気工事士法等の関連規定に必ず従ってください。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では「スイッチボックス」は次のように呼ばれることがあります。

  • SB(エスビー):「この部屋のSBは1連深形で」など。
  • スイボ:「スイボ位置出しておいて」などの略称。
  • ボックス:コンセントボックスやアウトレットボックスと区別するため、「スイッチのボックス」と言い添えることも。

使用例(現場会話のサンプル)

  • 「廊下のスイッチボックス、床から芯1100で、引き戸の戸尻から150離して。」
  • 「この壁、防音指定だから、ボックス周りは不燃パテで埋め戻し忘れないでね。」
  • 「器具2個入るから2連の深型に変更、配線多いし容量確保して。」

使う場面・工程

工程としては、墨出し→下地施工→配管配線→ボックス固定→石膏ボード貼り→ボード開口→仕上げ→器具取り付けの流れで登場します。特に位置決め・深さ調整・ボード開口の精度が、仕上がりに直結します。

関連語の解説

  • 連用枠(取付枠):スイッチ・コンセント本体をボックスに固定するための金具枠。
  • プレート:仕上げ面の化粧カバー。段差・隙間を隠し、見た目を整える。
  • アウトレットボックス:照明器具などを天井・壁に取り付けるためのボックス。スイッチボックスとは用途が異なる。
  • CD管・PF管:電線を通す可とう管。ボックスとはコネクタで接続。
  • ボックスバー/ボックス受け:LGS下地にボックスを固定し位置出しするための金具。

取り付け位置の決め方とマーキングのコツ

スイッチは人体が触る部位なので、使い勝手が第一です。一般的には「床から1,100mm前後(器具中心)」が標準例として用いられますが、設計指示がある場合はそれを最優先してください。ユニバーサルデザインやお子様施設では低めに設定することもあります。

  • 建具との関係:引き戸の戸尻側や開き戸のハンドル側から一定寸法(例:100〜200mm)離し、手を伸ばしやすい位置に。
  • 芯出し:墨出しで器具中心を明確に。連用枠の幅も加味して干渉を回避。
  • 水平・縦通り:複数並びは水平器で見栄えを担保。隣室との高さを合わせると統一感が出ます。
  • 下地との干渉確認:スタッド、胴縁、配管との干渉を事前にチェック。

施工方法(内装目線・電気目線)

軽量鉄骨(LGS)+石膏ボード壁の例

  • 1. 位置決め:図面の高さ・左右位置に墨出しし、スタッドとの干渉を確認。
  • 2. ボックス固定:ボックスバーや受け金具でLGSに固定。仕上げ面(ボード+仕上げ厚)に合わせて、ボックスの面をツライチに調整。
  • 3. 配管配線:CD/PF管をボックスに接続し、電線を通線。コネクタの固定と管の支持間隔はメーカー基準に従う。
  • 4. ボード貼り:ボックス位置を表に写し、開口。専用開口器やボードソーを使用。欠け防止のため、角は小さく穴をあけてから切り出すときれい。
  • 5. 周囲処理:気密・防火指定がある場合は、ボックスとボードの隙間を指定の不燃パテや気密材で充填。
  • 6. 仕上げ・器具:クロス仕上げ後、電気工事士が器具を取り付け、連用枠・プレートで納める。

木造(間柱)壁の例

  • 1. 位置決め:間柱の位置を踏まえ、ビス留めしやすい位置に。
  • 2. ボックス固定:樹脂製ボックスを間柱にビス留め。深さはボード厚に合わせて調整。
  • 3. 配管配線:電線の曲げ半径・本数に余裕を持たせる。気密住宅は気密タイプを採用し、シート貫通部は純正の気密カバー等で処理。
  • 4. ボード開口・周囲処理:LGSと同様。木造はビスを効かせやすい反面、ボックスがわずかに動きやすいので、固定をしっかり。

天井・特殊納まりのポイント

スイッチボックス自体は壁用が中心ですが、センサーや操作スイッチを天井面に納めるケースもあります。天井下地(野縁・チャンネル)との取り合い、断熱材・気密層の処理に注意し、器具重量がかかる場合はアウトレットボックス等、用途に合うボックスへ切り替えます。

よくある失敗と対策

  • 開口ズレ・傾き:ボード貼り前に再度芯確認。テンプレートや開口器を使い、水平器で確認。
  • 出代不足(面が引っ込む/出過ぎ):仕上げ厚を読み違えない。可変式スペーサーや深さ調整スペーサーで微調整。
  • ボックス内が窮屈:連数や深さをワンサイズ上げる、配線の入り数と接続点数を見直す。余長の取りすぎにも注意。
  • 下地・配管と干渉:事前のスタッドスキャンや墨出しで干渉を避ける。どうしても干渉する場合は位置を微調整し、設計と合意。
  • 気密・防火処理の漏れ:指定の不燃パテや気密材で隙間を完全に充填。材料はメーカー指定品を使用。
  • 器具とプレートのちぐはぐ:規格適合の器具・枠・プレートを選定。連用枠の向き・締付けトルクを適正に。

選び方チェックリスト(現場で迷ったら)

  • 用途は何か(スイッチ、調光器、センサー、通信など)
  • 連数は足りているか(将来の増設も考慮)
  • 深さは十分か(配線量・器具の奥行・曲げ半径)
  • 素材・仕様は適切か(気密・防火・耐食などの指定)
  • 配管接続方法は整合しているか(管種・コネクタ)
  • 下地と仕上げ厚に対してツラが合うか(段差・後退防止)
  • 周辺の干渉はないか(建具、家具、モール、腰見切り)
  • メーカー施工要領・規格に合致しているか

代表的なメーカーと特徴

日本国内で広く流通している代表的なメーカーを紹介します。具体的な型番は現場仕様により異なるため、選定時は最新カタログ・施工説明書をご確認ください。

  • パナソニック株式会社(電材・配線器具):国内トップクラスの配線器具メーカー。埋込ボックス、連用枠、スイッチ・プレートまで一貫して揃い、互換性と施工性に定評。
  • 未来工業株式会社(電設資材):樹脂製ボックス、ボックスバー、気密関連部材など、現場の痒い所に手が届く製品が豊富。施工性を高めるアイデア商品が多い。

どのメーカーも、取付ビスピッチなどの基本規格は一般的に共通化されていますが、気密処理部材やスペーサー、ボックス固定金具は各社で仕様が異なるため、同一メーカーで揃えると段取りがスムーズです。

施工時の安全と法令・資格のポイント

  • 電線の接続や配線器具の取り付けは、原則として有資格者(電気工事士)が行います。内装側は位置出し・開口など、分担範囲を明確に。
  • 防火区画・耐火性能・気密性能の確保は、設計図書とメーカー施工要領に従うこと。独自判断は禁物です。
  • ボックス内の許容容量や導体本数の考え方は電気設備の規程に基づきます。配線量が多い場合は深型・連数追加等で余裕を確保。
  • 通電前でも感電・傷害リスクはあります。通線・器具取付時は必ず安全確認とロックアウト/タグアウト(可能な範囲)を徹底。

用語ミニ辞典(押さえておくと便利)

  • 1連/2連/3連:スイッチやコンセントの横並び個数。連用枠とボックス幅が対応。
  • 浅型/深型:ボックスの奥行寸法。器具の奥行・配線量で選定。
  • 気密ボックス:気密住宅向け。専用のカバーやパッキンで空気漏れを抑制。
  • ボックスバー:LGS下地にボックスをワンタッチで固定し、左右・深さを調整できる金具。
  • 連用枠:器具本体を固定する金具。プレートとの相性もここで決まる。
  • プレート:化粧カバー。デザインプレートは厚み・取り合いに注意。
  • アウトレットボックス:器具(照明など)を支持するためのボックス。荷重支持が前提。

現場で役立つコツと小技

  • 開口精度アップ:石膏ボード用の開口テンプレートや下書きゲージを活用。四隅に小穴を先行して割れを防ぐ。
  • 面のツラ出し:仕上げ厚(ボード+クロス等)を合算し、ボックスのフランジ面を仕上がり面に揃える。スペーサーで微調整。
  • 並びの美観:2連以上は水平器で確認し、壁全体の“見え方”を優先。建具・見切りとの通りを合わせる。
  • 将来の増設:余白があるなら2連にする、深型にするなどで、後日の改修性を確保(設計と要相談)。
  • ラベル・養生:配線識別のラベリング、ボックス内部の防塵養生で引渡し時のトラブルを防止。

よくある質問(FAQ)

Q. スイッチの数が増えそう。ボックスは大きい方がいい?

A. 連数や深さを余裕見て選ぶのは有効ですが、壁内の干渉やデザインとの兼ね合いもあります。設計者・電気工事士と相談し、配線量・器具寸法・下地状況を合わせて決めましょう。

Q. ボード開口が少し大きくなった。どう対処する?

A. 仕上げプレートで隠れる範囲内なら問題ありませんが、大きすぎる場合は不燃パテで補修し、必要に応じて開口の縁を補強。見切れが心配ならプレートのサイズ・種類を再検討します。

Q. 気密住宅での注意点は?

A. 気密仕様のボックスと純正の気密カバー等を採用し、ボックス周囲や管貫通部の気密処理を丁寧に。気密シートとの取り合いはメーカー手順どおりに施工してください。

Q. スイッチ高さに迷ったら?

A. 一般的な目安は床から約1,100mm(器具中心)ですが、利用者や用途で変わります。既存の高さに合わせたい場合は、同フロアの標準を確認して統一すると違和感が出ません。

Q. 金属製と樹脂製、どちらを選ぶべき?

A. オフィスなどのLGS壁や耐熱性・強度が重視される場では金属製、木造住宅や気密対応などでは樹脂製が選ばれることが多いです。設計仕様と現場条件に合わせて選定します。

まとめ:スイッチボックスを制す者は仕上げを制す

スイッチボックスは、器具を固定するだけでなく、配線の安全・気密や防火・仕上げの見栄えまで左右するキーパーツです。要点は「用途に合った種類とサイズを選ぶ」「位置と深さを正確に」「開口精度と周囲処理を丁寧に」「法令とメーカー手順に従う」の4つ。この記事を現場のチェックリストとして活用し、迷いなく、失敗の少ない施工につなげてください。分からない点は遠慮なく設計者・電気工事士・メーカー技術窓口に確認することが、最終的な品質と安全を守る近道です。