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ユニック車とは?建設現場の作業効率が劇的に上がる理由と選び方ガイド

内装職人がやさしく解説:ユニック車って何?意味・使い方・安全手順・手配のコツまで総まとめ

「ユニック車って聞くけど、どんな車?内装の搬入にも必要なの?」——はじめて現場に入ると、こうした“現場ワード”に戸惑いますよね。この記事では、建設内装の現場で本当によく耳にする「ユニック車」を、初めての方にもわかりやすく解説します。意味や仕組み、現場での言い回し、資格・安全の基本、手配のポイントまで、実務に直結する内容をまとめました。読み終えるころには、ユニック車が必要な場面の判断や、手配時に押さえるべきチェック項目がはっきりわかるはずです。

現場ワード(ユニック車)

読み仮名ゆにっくしゃ
英語表記truck-mounted crane / loader crane (cargo crane)

定義

ユニック車とは、トラックの荷台部分に小型の油圧式クレーン(ブーム)を搭載した車両のこと。建材や設備機器の「積み込み・積み下ろし(荷下ろし)」や、敷地内・建物周りへの「荷揚げ」を一台でこなせるのが特長です。日本では古河ユニック株式会社の登録商標「UNIC(ユニック)」が広く普及したため、クレーン付きトラック全般を指して「ユニック(車)」と呼ぶのが現場の慣習になっています。正式・一般名称としては「トラック搭載型移動式クレーン」「カーゴクレーン」「ローダークレーン」「クレーン付きトラック」などが用いられます。

ユニック車の仕組みと種類

基本構成

ユニック車は、以下の要素で構成されます。

  • ブーム(伸縮アーム):油圧で伸縮・起伏するアーム部。段数(2〜6段など)により到達距離が変わります。
  • ジブ/フック・ウインチ:吊り荷を掛けるフックと、必要に応じて巻上げるウインチ。
  • 旋回装置:左右に旋回して吊り位置を合わせます(機種により旋回角度や方式が異なります)。
  • アウトリガー:作業時に左右へ張り出す支持脚。転倒防止の要で、敷板(アウトリガーマット)とのセット使用が基本です。
  • 荷台(平ボディなど):資材を積載して運べるスペース。あおり(側板)付きが一般的。
  • 操作装置:本体操作レバー、コード式ペンダント、無線ラジコンなど。現場では「ラジコン操作」が主流になりつつあります。

代表的なタイプ

  • ストレートブーム(テレスコタイプ):内装現場で最も一般的。パレット積みの石膏ボードや軽鉄材、設備機器の荷下ろしに使いやすい。
  • ナックルブーム(折りたたみ式ローダークレーン):アームが折り畳め、狭所や障害物越しの作業に強い。海外メーカー機も多いタイプ。
  • 段数・クラス:2〜6段ブームが主流。内装現場では「2.9tクラス」「3段〜5段」などがよく手配されます(定格荷重や作業半径は機種ごとの能力表で必ず確認)。

「最大積載量」と「吊り上げ荷重」は別物

ユニック車には、トラック自体の「最大積載量」と、クレーンの「吊り上げ荷重(定格荷重)」という異なる指標があります。最大積載量は走行時に荷台へ積める重さ、吊り上げ荷重はクレーンで持ち上げられる重さで、作業半径(ブーム長と角度)によって大きく変動します。たとえば「2.9t吊り」の機種でも、ブームを長く伸ばすと実際に吊れる荷重は小さくなります。毎回、能力表(荷重曲線)で「その姿勢で安全に吊れる重量」を確認するのが基本です。

現場での使い方

ユニック車という現場ワードは、以下のような言い回しや場面で登場します。

言い回し・別称

  • ユニック/ユニック車(口語)
  • クレーン付きトラック/カーゴクレーン/ローダークレーン(一般名称)
  • トラック搭載型移動式クレーン(法令・技術用語寄り)
  • ラフター(ラフテレーンクレーン)は別物。現場では区別して使います。

使用例(3つ)

  • 「明日のボード搬入、ユニック手配できる? 2.9tの5段で、9時現着。」
  • 「ルーフトップの室外機、ユニックで一発で上げよう。アウトリガー敷く場所、先に養生しておいて。」
  • 「この重量物は人力不可。玉掛け有資格者つけて、ユニックのオペは別で呼ぼう。」

使う場面・工程

  • 内装材の搬入:石膏ボードのパレット、軽量鉄骨(LGS)束、フローリング材、建具枠などの荷下ろし。
  • 設備・什器の据付周辺:室外機、給排気機器、分電盤、重量什器の仮置き・建物際への横持ち。
  • 高所への荷揚げ:バルコニー越し、開口部からの搬入、屋上への仮置きなど(法規・管理者許可の範囲内で)。

関連語

  • 玉掛け:荷をワイヤ・ベルトスリングでフックに掛ける作業。1t以上は技能講習が必要。
  • 合図者:クレーンオペレーターへ合図で指示する担当。合図の統一と指揮系統の一本化が重要。
  • アウトリガー/敷板:支持脚と下に敷くマット。沈下・転倒防止の要。
  • 横持ち:現場に入ってからの手運び・台車搬送。ユニックは“入口まで”で、その先は別手段が必要。
  • 養生:建物・舗装・床面保護。アウトリガー接地部、荷の接触部は必須。

安全と法令:資格・合図・設置条件の基本

必要な資格(日本の一般的な要件)

  • 移動式クレーン運転士免許:吊り上げ荷重5t以上の移動式クレーンの運転に必要。
  • 小型移動式クレーン運転技能講習:1t以上5t未満の移動式クレーンに必要(内装現場のユニック車はこの範囲が多い)。
  • 小型移動式クレーンの特別教育:1t未満の移動式クレーンを扱う場合に事業者が行う教育。
  • 玉掛け:1t以上の玉掛け作業は「玉掛け技能講習」修了者が行う。1t未満は特別教育。

上記は労働安全衛生法・規則に基づく一般的な区分です。具体の現場では、元請・施設側のルールでより厳しい運用がされる場合があります。常に手配前に確認しましょう。

合図とコミュニケーション

  • 合図者は一人に統一(複数が同時に合図しない)。
  • 手元・オペ間は見通し確保。見えない場合は無線機で補助。
  • 吊荷の下に入らない、巻込み・挟まれに注意。
  • 風・雨・視界不良時は安全最優先。強風時は中止判断を躊躇しない(機種の取扱説明書の基準に従う)。

設置・環境条件

  • アウトリガー全張り出しが基本。敷板を使用し、舗装・床の沈下を避ける。
  • 地中埋設物・ピット・地下駐車場天井など、下部空洞に注意。必要に応じて管理者へ図面確認。
  • 電線・架線から十分な離隔を取る。近接作業は電力会社・施設管理と事前協議。
  • 道路占用・使用許可が必要な場合は、警備員配置・標識・時間帯規制などを所轄と調整。

手配と選び方のコツ(内装視点)

ユニック車を「なんとなく」呼ぶと失敗します。以下を整理して伝えるとミスマッチが減り、安全でスムーズです。

  • 荷の情報:品名、数量、単体重量、総重量、重心の偏り、吊り具の可否(穴・アイボルト有無)。
  • 到達条件:何m届けば良いか(建物際からの水平距離・高さ)。図面・写真・動画で共有すると確実。
  • 設置スペース:駐停車可能幅、アウトリガーの張り出し余地、傾斜の有無、地耐力。
  • 進入ルート:道幅・高さ制限、交差点の曲率、ゲート・現場内の車両制限。
  • 時間帯・近隣配慮:搬入可能時間、騒音・振動、学校や病院の近接、住民への周知。
  • 人員手配:オペレーター、玉掛け有資格者、合図者、荷受け側の応援。
  • 機種指定:2.9tクラス、ブーム段数(例:5段)、ラジコン有無、ウインチ要否、フックイン形状など。
  • 養生・付帯:アウトリガーマット、角当て、スリング・シャックル、パレットや台車の準備。

よくある失敗と回避策

  • 届かない問題:現地で「あと1m足りない」は定番。事前に水平距離と高さを測り、能力表でチェック。余裕を見たブーム段数を指定する。
  • 重量オーバー:パレットが想定より重い。品番・数量で重量算出し、吊り具重量も含めて余裕を持つ。
  • 設置不可:アウトリガーが張り出せない、路面が弱い。時間帯変更や車両サイズ変更、敷板増強で対策。
  • 資格不足:玉掛け・小型移動式クレーンの有資格者が不在。日程に余裕を持って手配し、代替作業に切り替える判断基準を共有。
  • 近隣トラブル:路上長時間占有、騒音クレーム。道路使用許可と警備計画、周知文配布でリスク低減。

代表的メーカーと特徴

ユニック車=特定メーカーという意味ではありませんが、現場で耳にする主なブランドは次のとおりです。

  • 古河ユニック(UNIC):日本で広く普及したカーゴクレーンの代表的ブランド。「ユニック」の名は同社の登録商標。操作性・信頼性で内装現場でも採用多数。
  • タダノ(TADANO Cargo Crane):国内大手。カーゴクレーンのほか各種クレーンで実績があり、細かな作業性・安全装備に定評。
  • HIAB(ハイアブ):欧州発のローダークレーン大手。ナックルブーム型の選択肢が豊富で、狭所や複雑姿勢に強い構成が特徴。
  • パルフィンガー(Palfinger):グローバルに展開するローダークレーンメーカー。重量物の積み下ろしや多関節作業に強み。

いずれも機種ごとに能力・装備・操作系に特徴があるため、現場条件とオペレーターの慣れを踏まえて選定するのが現実的です。

現場で役立つ実務Tips

  • 能力表の読み方に慣れる:作業半径ごとの定格荷重、アウトリガー張り出し状態(フル・中・最小)の違いを掴む。
  • 吊り具の選定:荷に合う幅のベルトスリング、角当て、シャックル径を事前準備。荷の当たり面保護も大切。
  • 段取り八分:到着前にルート確保、搬入動線の障害除去、受け側人員の配置、仮置き場所のマーキングまで済ませる。
  • 風対策:長尺物・パネル類は風の影響が大。風向・風速を現場で確認し、あおり防止の補助をつける。
  • 撮影・共有:初見現場はスマホで全景・障害物・接地面を撮って、手配先に共有。口頭よりミスが減ります。

内装での具体例(ケーススタディ)

例1:マンション改修でのボード搬入

道路側バルコニーから6階住戸へ荷揚げ。2.9t・5段ブーム、ラジコン操作、アウトリガーは歩道側へ全張り出し。道路使用許可と警備2名を配置。パレットは吊り枠で吊上げ、合図者を一人に固定し、住戸内受け側2名で手解体・横持ち。周辺住民へ事前周知。

例2:テナントビル屋上の室外機仮置き

建物際から水平10m・高さ20mが必要。能力表で余裕のある機種にアップ。アウトリガー下はコンクリートでも敷板追加、近隣に電線があるため離隔を確保し、停止位置を図面上で事前決定。玉掛けはアイボルト併用でバランスを取り、荷振れ防止ロープを手元2名で管理。

料金と段取りの考え方(目安の捉え方)

具体料金は地域・時期・作業内容・車種で大きく変わりますが、見積に影響する主な要素は共通です。

  • 車種・能力(クラス、ブーム段数、ウインチ・ラジコンの有無)
  • 作業時間(拘束時間)と移動距離(回送費)
  • 人員(オペレーター、玉掛け、警備員の有無)
  • 許認可・申請(道路使用・占用、施設許可)
  • 付帯機材(敷板、吊り具、吊り枠、荷受け台車・パレット等)

初回は「写真・図面・重量・到達距離・時間帯」をまとめて提示すると、過不足のない仕様で見積が返ってきやすく、結果としてコスト・安全・スケジュールのバランスが取りやすくなります。

用語辞典ミニガイド

  • 移動式クレーン:走行可能な台車上で稼働するクレーンの総称。ユニック車やラフター等が含まれる。
  • ラフター(ラフテレーンクレーン):専用車体に大型クレーンを搭載した車両。ユニック車より大規模・高能力。
  • 能力表(荷重曲線図):作業半径やブーム角度に応じた吊り上げ可能重量を示す表・図。
  • 合図:クレーン作業の標準合図。手旗・笛・口頭・無線など。一本化が原則。
  • 風速基準:機種ごとに作業中止の推奨風速が定められる。取扱説明書を参照。

よくある質問(FAQ)

Q. ユニック車とラフターは何が違いますか?

A. ユニック車はトラックに小型クレーンを載せた車で、運搬と荷下ろしを一台でこなすのが得意。ラフターは専用車体に大型クレーンを載せたもので、より高所・重量物に対応します。規模・用途・必要資格が異なります。

Q. 免許は必要?オペは自分でやってもいい?

A. つり上げ荷重1t以上のユニックは「小型移動式クレーン運転技能講習」が必要(5t以上は「移動式クレーン運転士免許」)。また1t以上の玉掛けは「玉掛け技能講習」が必要です。安全上、オペレーターは有資格・経験者に任せ、合図者も訓練を受けた担当を配置しましょう。

Q. どのくらいの高さ・距離まで届きますか?

A. 機種により大きく異なります。内装で使う小型〜中型のカーゴクレーンでは、ブーム段数や能力によって、数メートルから十数メートル程度までが一般的です。必ず能力表で「必要な水平距離・高さ」に余裕を見て選定してください。

Q. マンション前で作業できますか?

A. 道路幅・近隣交通・電線・歩行者動線・時間帯など条件を満たせば可能です。多くの場合、道路使用許可や警備員の配置が必要になります。管理組合・元請・所轄警察へ事前調整を行いましょう。

Q. 「ユニック」は正式名称ですか?

A. 「ユニック」は古河ユニック株式会社の登録商標です。現場では慣用的に「ユニック車」と呼びますが、一般名称は「クレーン付きトラック」「カーゴクレーン」などです。

初心者が最初に覚えるべきチェックリスト

  • 1 作業場所の写真(全景・接地面・上空障害物・電線)を撮る
  • 2 必要な水平距離・高さをメジャーや図面で把握
  • 3 荷の重量・寸法・吊り方(吊り金具の有無)を確認
  • 4 養生ポイント(アウトリガー下、建物接触部)を特定
  • 5 資格者の手配(オペ、玉掛け、合図者)と役割分担を決める
  • 6 許可・警備・時間帯の調整を元請・所轄と詰める
  • 7 余裕のある能力・段数のユニックを指定(能力表確認)

まとめ:ユニック車を正しく使えば、内装現場はもっと安全・効率的に

ユニック車は、内装の搬入・荷下ろしを劇的に効率化する“現場の要”です。一方で、能力表の読み違い、資格不足、設置条件の見落としは、事故や手戻りの大きな要因にもなります。荷の情報・到達条件・設置環境・人員体制を整理し、信頼できるオペレーターと連携することが成功の近道。この記事で示したチェックリストと安全手順を現場で実践し、安心・確実な搬入計画に役立ててください。現場ワード「ユニック車」を正しく理解できれば、段取りの質が一段と上がり、結果的にコストも品質も良くなります。