ご依頼・ご相談はこちら
ご依頼・ご相談はこちら

VE管とは?意味・サイズ・使い方をわかりやすく解説【現場で役立つポイントと選び方】

建設内装でよく聞く「VE管」を基礎から実務までやさしく解説|意味・規格・選び方・施工のコツ

現場で「ここはVEで通しといて」「VE22で露出ね」と指示されて、なんとなく分かったふりをしていませんか?VE管は内装・電気の現場で頻出するワードですが、PF管やCD管、VP管と混同しやすく、サイズ選定や固定ピッチ、継手の使い分けなど、初心者には分かりづらいポイントがたくさんあります。本記事では、現場経験に基づいて、VE管の意味から特徴、サイズの目安、使いどころ、施工の基本とコツまでをやさしく整理。読み終えるころには、「指示の意図が分かる」「自分で選べる」「ミスを防げる」状態を目指します。

現場ワード(キーワード)

読み仮名ブイイーかん
英語表記Rigid PVC Electrical Conduit (VE)

定義

VE管とは、硬質塩化ビニル樹脂でできた電線管(電気配線用の保護管)の通称です。主に屋内外の電気配線を機械的な損傷や外力、湿気から守る目的で使用され、露出配管(見える配管)やコンクリート内の埋設、二重天井内・壁内の配管に幅広く使われます。可とう性のあるPF管・CD管と違い、VE管は剛性が高い直管で、継手(エルボ・チーズ・ソケット)や接着剤、サドルバンド等の固定金具を組み合わせて配管ルートを構成します。

VE管の基礎知識

何に使う?どこで使う?

VE管は「電線の通り道」をつくる資材です。コンセント・スイッチ・照明・機器(エアコン、設備機器)へ電源や信号線を通す際に、電線を守りながら目的地まで導きます。よく使う場面は以下の通りです。

  • 露出配管:工場、倉庫、バックヤード、店舗の意匠露出など
  • コンクリート打設前の埋設:スラブ配管、基礎配管、壁内立ち上げ
  • 半露出・隠蔽:二重天井・壁内で直線部分や保護性が必要な区間
  • 屋外:軒下・外壁など、直射や雨掛かりを受けやすい部分(環境配慮が必要)

VE管の特徴(メリット・デメリット)

メリット

  • 剛性があり、直線が出しやすく見栄えが良い(露出配管でラインがきれい)
  • 機械的強度がそこそこあり、ケーブルをしっかり保護できる
  • 継手が豊富で、エルボ・チーズ・ソケット・ボックスコネクタなどで確実に接続可能
  • 金属管より軽量で加工が容易、耐食性も高い
  • 価格が比較的安価で入手性がよい

デメリット

  • 可とう性がないため、微妙な曲がり追従は継手や加熱曲げが必要
  • 熱伸縮があるため、長尺・屋外では伸縮対応を考慮する
  • 防火区画の貫通部では防火処理が必須(不燃材ではない)
  • 衝撃・高温環境・紫外線に対しては条件次第で劣化が早まるため配慮が必要

主なサイズと用途の目安

VE管は呼び径で選定します。現場でよく聞くサイズは「16・22・28・36・42・54」あたり。小物配線や1~2回路程度なら16または22、ルートが長い・回数が多い・将来余裕を見たい場合は28以上、といった感覚で選ばれます。選定は「配管内の占有率(ケーブルの太さと本数)」と「施工性(引き回し・曲がり)」「将来の増設余地」で決めるのが基本です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように呼ばれます。

  • VE(ブイイー)、VEパイプ、塩ビ電線管、硬質塩ビ(電線管)
  • 「VE22」「VE28」など、サイズ名だけで指示されることも多い
  • VP(給水用塩ビ管)と混同しないために、あえて「電線管のVE」と言い直すことも

使用例(会話・指示のサンプル)

  • 「この通路は人が当たるからPFやめて、VE22で露出配管、サドルは1mピッチ目安で。」
  • 「スラブ配管はVE28で先行して、ボックス立ち上げはPFに切り替え。取り合いはこのアウトレットボックスで。」
  • 「外部の立ち上がりはVEでいくけど、直射日光当たるからサドルはステン、色あせ防止で塗装仕上げね。」

使う場面・工程

主な工程の流れは次の通りです。

  • ルート検討:機器位置・ボックス位置・他設備(配管・ダクト・スプリンクラー)との干渉を確認
  • 墨出し:サドル位置、ボックス芯、曲がり箇所のマーキング
  • 切断・面取り:パイプカッターまたはのこで切断し、内外面のバリ取り・面取りを確実に
  • 継手・接着:塩ビ用接着剤でソケット・エルボを接続。差し込み深さのマーキングをすると確実
  • 固定:サドルバンドで支持。露出は通りよく、隠蔽は干渉・断熱材との取り合いに注意
  • 導線引き:通線ワイヤーや通線機でケーブルを挿入。無理な引張り・角度過多を避ける
  • 検査:導通・絶縁・表示・締結状態・支持間隔・貫通部処理を確認

関連語

  • PF管:可とう電線管。柔らかく曲がる。主に強電で使用。
  • CD管:可とう樹脂管。弱電(通信・情報)での使用が多い。
  • VP管:給排水用の塩ビパイプ。電線管ではないため流用は不可。
  • 金属管(C管・G管など):金属製の電線管。高い保護性と耐火性が必要な場面で使用。

VE管の選び方(サイズ・ルート・環境)

サイズ選定の考え方

配管内の占有率に余裕があるほど通線が楽で、将来の増設にも対応しやすくなります。具体的な基準は設計・内規に従いますが、現場感覚では「迷ったらワンサイズ上げる」「曲がりが多いなら余裕を持つ」が鉄則。曲がり1回ごとに引張り抵抗が増えるため、45度×2回や90度×1回など曲がり構成も考慮して選びましょう。

配管ルートのポイント

最短距離だけが正解ではありません。点検・増設がしやすいように、将来のプルボックス位置や取替経路も意識します。露出配管では見えるラインを揃える、ボックスの高さを通り良く揃える、といった「見栄え」も重要です。

使用環境での注意

  • 屋外・高温:熱膨張でたわみや継手の負担が増えるため、伸縮継手や余長、日射・雨掛かりの対策(塗装・カバー)を検討
  • 機械的衝撃:通行や荷物の当たりが強い場合は、支持間隔を詰める・金属管に切り替える判断も
  • 防火区画:貫通部は防火措置(モルタル・耐火パテ等の指定材料)を確実に。図面・仕様書に従う

施工手順とコツ(プロの視点)

1. 切断・面取り

塩ビ管用カッターや金切りのこで直角に切断。バリが残ると通線時に被覆を傷つけるため、内外両面をリーマーやヤスリで面取り。挿入側の面取りは特に丁寧に。

2. 継手・接着

ソケット・エルボ・チーズは塩ビ用接着剤で接合。差し込み深さをマーキングしてから、接着剤を管・継手両方に均一に塗布し、ねじれないように奥まで一気に差し込む。はみ出しはウエスで軽く拭取り、固化まで動かさない。寒冷時は硬化時間に余裕を持つこと。

3. 固定(サドル・支持金具)

露出配管はサドルバンドで支持。支持間隔は仕様書・メーカー推奨に従うのが基本だが、目安として小径は約1m、径が大きい・荷重がある・屋外ではピッチを詰める。アンカーは下地を確認し、空洞部には中空用やボードアンカーを選定。直線は糸やレーザーで通りを合わせると美しく仕上がる。

4. 曲がりの作り方

原則は規格継手(90°エルボ、45°エルボ)を使う。意匠で曲げRを大きくしたい場合や継手を減らしたい場合は、ヒートガンや専用ヒーターで加熱曲げ。ただし過加熱は変形・偏肉・割れの原因になるため注意。曲げ後は冷却・歪み確認を行う。

5. ボックス・機器との取り合い

アウトレットボックス・スイッチボックスへはVE用のボックスコネクタやソケットで接続。可とう管(PF・CD)からVEに切り替える場合は、ボックス内や切替用継手で確実に固定し、引っ張りに耐えるように処理する。ねじ部のシールや接着有無は製品の指示に従う。

6. 通線・表示

通線ワイヤーを先行させ、必要なら滑剤を併用。配線完了後は回路名・ケーブル種類・行き先などのラベルをボックス・配管に表示。共用部や意匠露出では、表示の美観も配慮する。

よくあるミスと対策

  • VP管との取り違え:色・印字・継手形状を確認。電線管は「VE」、給水は「VP」。混用しない。
  • サドルピッチが広すぎる:たわみ・振動・騒音の原因。仕様書に合わせて再固定。
  • 接着不足・差し込み不足:線膨張や荷重で抜ける。差し込みマーキングと適量塗布で再発防止。
  • 曲がり過多で通線不可:曲がり数・角度を事前に計画。プルボックスを適宜設ける。
  • 防火区画の未処理:引渡し前の是正が大きな手戻りに。貫通リストで一括管理し、写真記録を残す。
  • 屋外の退色・劣化:直射・雨掛かりは固定金具選定(ステンレス等)と塗装・カバーで保護。

現場チェックリスト(簡易)

  • 配管ルートは干渉なし・点検性あり・見栄え良し?
  • サイズは占有率に余裕あり?曲がり数に見合っている?
  • 切断面のバリ・面取りはOK?接着は差し込みマークまで?
  • サドルピッチは仕様書通り?下地に適したアンカー?
  • 防火区画の貫通処理は完了・記録済み?
  • 通線試験・絶縁測定・表示は完了?

メーカーと代表的な製品の傾向

VE管は多くの電設資材メーカーが扱っています。以下は現場でよく見かける代表例です(五十音順)。

  • 因幡電工:空調・電設資材の大手。配管・化粧カバー・金具まで一貫ラインナップ。
  • 未来工業:電設資材の専業メーカー。ボックス・管・継手・サドルなど現場目線の工夫品が豊富。
  • ネグロス電工:支持金具・機器架台で有名。サドル・バンド類や支持システムが充実。
  • 日動電工:電線管付属品やボックス・コネクタ類を幅広く展開。

メーカーごとに微妙に色味や刻印、継手のはめ合い感が異なることがあります。基本は同一メーカーでそろえると作業性・見栄えが安定しますが、現場在庫や支給品の指示に従ってください。

PF・CD・VP・金属管との違い(ざっくり比較)

使い分けの軸は「柔軟性」「保護性」「耐環境性」「見栄え」。

  • VE管:直線きれい・保護性中・施工性中。露出や埋設の万能選手。
  • PF管:柔軟で追従性高い。強電で多用。露出では見栄えが課題になることも。
  • CD管:弱電での隠蔽配管向け。安価・軽量だが露出には不向き。
  • VP管:給排水用。電線管ではないので使用用途が異なる。混用厳禁。
  • 金属管:保護性・耐火性が高い。コスト・手間は増えるが要求性能が高い場所で選択。

法令・規格・検査での考え方(概要)

電気設備は法令(電気事業法関連の技術基準)や各種規程、設計仕様に準拠して施工します。具体的な管種の適用範囲、充填率、支持間隔、貫通部の防火措置などは、設計図書・仕様書・監理者の指示を最優先してください。特に以下は要チェックです。

  • 使用場所の適否(屋外・屋内・防火区画・湿気の多い場所 等)
  • 配管内の占有率・曲がり数・プルボックスの設置間隔
  • 支持方法(サドル・ハンガー・インサート・アンカーの種類)
  • 貫通部の防火・防水・防音処理(指定材料・施工写真提出)
  • 仕上げ後の目視点検と絶縁・導通試験

現場の「ローカルルール」やビル管理基準がある場合も多いため、着工前に確認しておくと手戻りが防げます。

ケーススタディ:こう考えると失敗しない

ケース1:オフィスの露出配管(意匠重視)

見える配管はラインの通りと継手の統一感が命。VEを選び、曲がりは45°×2で柔らかい印象に。サドルは等ピッチ、曲がり手前・後で追加支持。色は空間に合わせて塗装仕上げ。ボックスの高さ・角度もレーザーで合わせ、ラベリングは控えめに。

ケース2:工場の動線に沿った配管(保護性重視)

人や台車が当たりやすいラインはPFよりVE。サイズは余裕を持って22→28へ。サドルピッチは詰め、金具はステンレス。角での衝突を避けるためにルートを梁沿いに変更。プルボックスを要所に設け、メンテナンス性も確保。

ケース3:スラブ先行配管(施工性重視)

コンクリート打設前にVEでルートを固定。伸縮や浮きを防ぐため、結束線やスペーサで所定のかぶりを確保。打設荷重・振動でズレないように、継手はしっかり接着。立ち上がりはボックス位置を芯墨で確認、後工程のPF・CDとの取り合いを明確にしておく。

VE管に関するQ&A

Q1. VEとVPは見た目が似ていますが、代用できますか?

A. できません。VEは電線管、VPは給排水管です。規格・用途・付属品が異なり、代用すると法令・安全面の問題が生じます。必ず電線管にはVEを使用してください。

Q2. 露出配管でサドルの間隔はどのくらい?

A. 仕様書・メーカー推奨に従うのが前提です。実務目安として小径で約1m前後、径が大きい・屋外・荷重がある場合は短めにします。見栄えの観点でも通りよく均等に配置することが重要です。

Q3. 屋外でVEは使えますか?

A. 使えますが、直射日光・熱・雨掛かりに配慮が必要です。固定金具の材質、塗装やカバー、伸縮の逃げ、配管ルートの保護を検討しましょう。仕様書に屋外可否が指定される場合もあります。

Q4. 曲がりは継手と加熱曲げのどちらが良い?

A. 基本は継手が確実で品質が安定します。意匠や納まりでR曲げが必要なときのみ加熱曲げを採用。過加熱や偏肉は通線不良・破損の原因になるため、治具と温度管理で確実に。

実務メモ(小ワザ集)

  • 差し込み深さマーク:継手の差し込み長を事前にマークすると接着失敗が激減
  • 通線性アップ:長距離は途中にプルボックス、曲がりは分割して45°×2に
  • 見栄え:サドルは芯を通す、曲がり前後に支持を入れる、端部・ボックス周りの寸法をそろえる
  • 騒音対策:振動しやすい区間はピッチを詰めるか防振材を併用
  • 色合わせ:意匠露出は塗装仕上げ(下地処理と密着に注意)、ラベルは必要最小限で整然と

まとめ:VE管を「分かる・できる」に

VE管は、内装・電気の現場で最も出番の多い電線管のひとつです。可とう性がない代わりに直線がきれいで、露出でも埋設でも活躍。サイズ選定は占有率と将来性、ルートは通りと点検性、施工は切断・面取り・接着・支持の基本を丁寧に押さえること。PF・CD・VP・金属管との役割の違いを理解すれば、現場の指示がクリアに聞こえ、提案の幅も広がります。迷ったら一度立ち止まり、「どの環境で」「どんな見栄えで」「どのくらいの余裕で」配管するのが最適か、この記事のポイントに照らして考えてみてください。あなたの現場で、VE管の配管品質が一段と安定するはずです。