窓枠の意味と現場での通じる言い回し:部位名・納まり・施工の勘所をまるっと解説
「窓枠ってどの部分?」「額縁と何が違うの?」——初めて現場用語に触れると、似た言葉が多くて混乱しますよね。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる「窓枠」というワードを、やさしい言葉で具体的に解説します。部位の名称、使う場面、注文時の伝え方、よくある不具合と対処まで、実務でそのまま役立つ内容に絞って整理しました。読み終える頃には、職人どうしの会話がすっと頭に入るようになります。
現場ワード(窓枠)
| 読み仮名 | まどわく |
|---|---|
| 英語表記 | window frame |
定義
窓枠とは、壁に設けた窓の開口部を縁取り、窓サッシやガラスをおさめるための枠材の総称です。現場では、サッシを支える下地側の「木枠(下地枠)」と、室内側に見えて仕上げとなる「額縁(ケーシング)」をまとめて「窓枠」と呼ぶことが多く、文脈によって指す範囲が変わります。外部側の水切りや窓台、内部側の窓台(カウンター)まで含めて広く使う場合もあります。
窓枠の基本構成と呼び方
「窓枠」と一口に言っても、いくつかの部位で構成されています。現場でよく飛び交う呼び名を、まずはざっくり掴みましょう。
- 上枠(うわわく):開口の上側。構造側のまぐさと取り合います。
- 縦枠(たてわく):左右の枠。直角や通りの基準になります。
- 下枠(したわく):開口の下側。内部側に「窓台(カウンター)」を設けることもあります。
- 木枠(下地枠):サッシを納めるための下地枠。造作材で作ることが多いです。
- 額縁(がくぶち)/ケーシング:室内側に見える化粧見切り材。クロスや塗装の端部をおさめます。
- サブシル:サッシ下枠を支える下地的な部材。雨仕舞の要です(主に外部側)。
- 見込み:壁の厚み方向の寸法。枠の奥行き寸法のこと。
- 見付け:正面から見える枠材の幅寸法。
- 納まり:部材どうしの取り合い方法。角部の「留め(45度)」と「突き付け」が代表的です。
現場での使い方
同じ「窓枠」でも、現場では状況に応じて言い分けます。言い回し、具体的な会話例、使う工程、関連語をまとめました。
言い回し・別称
- 窓枠=枠、木枠、開口枠(広義)
- 化粧側=額縁、ケーシング、化粧枠
- 下側のカウンター=窓台、サン
- サッシまわりの下地=サブシル、サッシ下地
- 角の納まり=留め/突き付け
使用例(3つ)
- 「この腰窓、枠は見込み120で。額縁は留めでいこう。」
- 「サッシ回りの木枠、先に通り出してからPB貼って。クロスは額縁突き付けで。」
- 「下枠はキズ厳禁だから全面養生ね。コーキングは最後に回すよ。」
使う場面・工程
- 墨出し・開口確認(建て方後〜下地工事)
- サッシ下地・サブシルの取り付け(木工事)
- サッシ本体の取り付け(躯体工事〜外装工事と連携)
- 木枠(下地枠)・額縁の取り付け(造作工事)
- ボード貼り・パテ・クロス仕上げ(内装仕上げ)
- シーリング・タッチアップ・養生撤去(仕上げ段階)
関連語
- まぐさ、窓台、見切り、胴縁、PB(石こうボード)、パテ、シーリング、建付け、養生、クリアランス、通り、直角
材料と仕上げの種類(選び方の目安)
窓枠は「内装の顔」です。耐久・コスト・意匠・メンテ性のバランスで素材を選びます。
- 集成材(塗装仕上げ):木質感があり反りが少なめ。着色・クリア塗装で高級感。キズはタッチアップで目立ちにくい。
- MDF+化粧シート:価格と意匠の幅が広く、継ぎ目が安定。表面硬度はシート種類で差あり。水濡れには弱め。
- 化粧合板(突板):本物の木質感と均一性を両立。部分補修の色合わせに技術が要る。
- メラミン化粧板貼り:耐傷・耐水性に優れる。エッジの処理精度が重要。意匠はシャープに。
- 無垢材:質感は抜群だが、反り・割れの管理が必要。室内環境の影響を受けやすい。
- サッシ(参考):アルミ、樹脂、複合。断熱・結露対策と枠の取り合いに関係します。
内装の統一感を出すなら、建具や巾木・廻縁と同一シリーズの色柄を選ぶとスムーズです。
寸法の考え方と採寸のコツ
窓枠は「壁厚に合わせる」のが大原則。壁厚=下地+仕上げの合計です。ここを外すと、額縁が短い/長い、見込みが合わない、といった不具合に直結します。
- 壁厚(見込み):例)下地(軽鉄+PB)+仕上げ(クロス等)=105mm、120mm、150mmなど、現場でよく出る定尺があります。
- クリアランス:サッシまわり、枠内部は1〜2mm程度の逃げを見て、建付け調整とシール分を確保。
- 額縁幅(見付け):一般に60〜90mm程度。巾木やカーテン納まりとのバランスで決めます。
- コーナー納まり:留め(45度)か突き付け。意匠と施工性、コストで選定。
- 下枠納まり:外部側は水が外へ流れる納まりに。内部の窓台はレベルを出しつつ、拭き掃除やカーテン干渉も考慮。
採寸時は「仕上げ込み寸法」で合意を取るのがポイント。下地の段差や歪みは早めに拾っておき、通りの基準を決めてから加工・手配します。
施工手順の基本(造作枠の場合)
- 墨出し:開口位置と基準ラインを明確化。水平器・レーザーで通りを確認。
- 下地の補強:縦枠・下枠がしっかり効くよう、ビスが効く下地を用意。
- 仮組み・調整:枠を仮あてして見込みを確認。対角寸法で直角をチェック。
- 固定:ビスピッチを適切に。表面にビスを出さない納まりなら、隠し釘や裏桟で固定。
- 角部の処理:留めなら端面の45度精度と接着・圧締。突き付けなら段差ゼロと面取りを丁寧に。
- 取合い仕上げ:クロスの端部は額縁でキレイに見切り。必要に応じてシーリングで目地を整える。
- 養生:下枠・窓台は特にキズが入りやすいので、工事完了までしっかり養生。
品質基準とチェックポイント
- 通り・反り:光を流して面のうねりを確認。長手方向の反りがないかを手で撫でてチェック。
- 直角・対角:対角寸法の差が小さいか、サッシの開閉に干渉がないか。
- 段差・すき間:額縁と壁、額縁同士の段差・目違いがないこと。必要なクリアランスは確保。
- 納まりの統一:全窓で額縁幅や納まり(留め/突き付け)が揃っているか。
- 仕上げ:キズ・へこみ・塗装ムラ・シールはみ出しの有無。下枠の養生跡も確認。
よくある不具合と対処法
- 角の開き(留め目地の隙):木口の含水率差や圧締不足が原因。再圧締と補修、もしくは突き付け納まりに変更検討。
- 反り・ねじれ:長手材の反りは取り付け前に選別。軽度なら圧着・ビスで矯正、重度は交換。
- 段差・目違い:下地の不陸が原因なら下地から是正。パテ・シールで誤魔化すと後で目立ちます。
- 結露の水染み:サッシや断熱計画と一体で見直し。窓台は水拭き前提の仕上げにし、目地部は吸水しにくい材料・シールを採用。
- キズ・汚れ:作業前の全面養生、角当て養生を徹底。化粧面は溶剤に弱いものもあるため中性洗剤で対応。
防水・気密・断熱の注意点(外部サッシとの取り合い)
内装側の窓枠でも、外部サッシまわりの防水・気密の良否に左右されます。工種間の連携が品質を決めます。
- 防水テープや透湿防水シートの重ね方向・順序を正しく。下枠は特に丁寧に。
- 発泡ウレタンの充填は入れ過ぎに注意。変形・膨らみで建付けが狂うことがあります。
- シーリングは適材適所。内装は変成シリコーンなど塗装可のものを選ぶと仕上がりがきれい。
- 通気層・断熱材の連続性を切らない。結露・カビの原因回避に有効です。
既製品を使う場合の手配とメーカー例
現場造作のほか、既製の枠・額縁セットやプレカット品を使うと、工期短縮・品質均一化に効果的です。手配時は「壁厚」「額縁幅」「色柄」「納まり」を明確に伝えましょう。以下は代表的な住宅・内装建材メーカーの例です(順不同)。
- LIXIL:住宅用窓サッシ・内装建材を幅広く展開。枠材と建具・化粧材のコーディネートがしやすい。
- YKK AP:窓サッシの大手。サッシと内装の取り合い情報が充実し、納まり検討に役立ちます。
- 大建工業(DAIKEN):室内造作材・枠材・建具を総合展開。内装トータルの意匠統一に強み。
- 永大産業:床材・内装ドア・造作材のラインアップが豊富。木質系の意匠バリエーションが広い。
- Panasonic:内装ドア・造作材・収納など住設をトータル展開。色柄の統一とメンテ性が高いシリーズもあります。
同一ブランドで建具・巾木・窓枠を揃えると、色ブレや納まりのズレが起きにくく、現場の段取りもスムーズです。
伝え方・発注時のチェックリスト
- 開口寸法(W×H):仕上げ込みか下地寸法かを明記
- 壁厚(見込み):仕上げ構成込みで確定
- 額縁幅(見付け):60/70/90mmなどシリーズ基準を確認
- 角納まり:留め or 突き付け
- 色柄・表面材:シート名・塗装色を指定
- サッシ種別・取付位置:干渉やクリアランスの確認用
- 付帯:カーテンボックス有無、ブラインド取付下地、手すり干渉など
- 現場搬入・施工順序:他 trades と干渉しない段取り
メンテナンスと日常の扱い
きれいな窓枠は空間の印象を大きく左右します。日常のメンテは次のポイントで十分です。
- 清掃:柔らかい布で乾拭き。汚れは中性洗剤を薄めて拭き取り、水分は残さない。
- 小キズ補修:木部は専用補修材やタッチアップペン。シートは色合わせと段差処理を丁寧に。
- シールの劣化:ひび割れ・剥離が見えたら早めに打ち替え。変色が目立つ前が吉。
- 結露対策:換気と断熱の見直し。窓台は定期的に水拭き・乾拭きでカビを防止。
ミニ用語辞典:窓枠まわりのキーワード
- 見込み:壁厚方向の枠の奥行き寸法。
- 見付け:正面から見える枠の幅寸法。
- 留め:角を45度で取り合う納まり。意匠性が高い。
- 突き付け:片方をまっすぐ当てる納まり。施工が安定しやすい。
- 額縁/ケーシング:室内側の化粧見切り材。
- サブシル:サッシ下枠の下地部材。雨仕舞に関与。
- まぐさ:開口部上の構造材。上枠側で取り合う。
- 窓台:開口下のカウンター状の部材。内外で役割が異なる。
- シーリング(コーキング):目地を埋める充填材。仕上げと相性の良い材料を選ぶ。
- 養生:傷や汚れを防ぐ保護作業。下枠は最終までしっかり。
まとめ:窓枠を知ると、現場の会話がクリアになる
窓枠は、サッシをおさめて仕上げの端部を整える、とても重要な「境界の部材」です。現場では、下地側の木枠と室内側の額縁を合わせて「窓枠」と呼ぶことが多く、文脈で意味が変わります。まずは部位名(上枠・縦枠・下枠・額縁・窓台・サブシル)と、見込み/見付け、留め/突き付けといった基本語を押さえましょう。採寸は「仕上げ込み」で、通り・直角・クリアランスの三点管理がカギ。養生と仕上げの丁寧さが最終品質を決めます。この記事のポイントを現場でそのまま使えば、「窓枠」の会話が一段とスムーズになりますよ。









