ノンスリップテープを現場目線で徹底解説:意味・使い方・選び方・貼り方まで
「ノンスリップテープって、滑り止めテープのこと?」「階段に貼るならどれを選べばいい?」そんな疑問に、内装施工の現場で実際に使ってきた職人の視点でやさしく答えます。この記事では、初心者でも迷わないように、現場で通じる用語の意味から、使い分け、貼り方のコツ、よくある失敗の回避法、メーカー例までを一気に整理。読んだその日から仕事や自宅の安全対策に役立つ、実践的な内容だけをまとめました。
現場ワード(キーワード)
読み仮名 | のんすりっぷてーぷ |
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英語表記 | anti-slip tape |
定義
ノンスリップテープとは、歩行や作業中の滑りを防ぐ目的で、床面や階段の踏み面・段鼻、スロープ、機械足元などに貼り付ける粘着式のテープ状防滑材の総称です。基材(フィルムや布、アルミ箔など)の表面に鉱物粒子(例:アルミナ、シリコンカーバイドなど)やゴム系エラストマー等を設けて摩擦を高め、裏面にはアクリル系やゴム系の粘着剤を塗布。ロールやカット品の形で供給され、下地を大きく傷めず短工期で施工できるのが特長です。
現場での使い方
現場では安全対策の定番ワード。指示・発注・施工手順の会話で頻出します。
言い回し・別称
- 滑り止めテープ/すべり止めテープ
- ノンスリ/ノンスリテープ(略称)
- ステップ用テープ/階段用テープ
- (商品名で)セーフティウォーク(3M製の代表シリーズ名)
注意:金物の「ノンスリップ」(段鼻金物・滑り止め付見切り)と、貼る「ノンスリップテープ」は別物です。図面や発注書で取り違えないようにしましょう。
使用例(会話・指示の例)
- 「屋外階段は粗目のノンスリップテープで、トラ柄にして視認性も上げといて。」
- 「段鼻の角、Rでテープの角落として。端部シールも忘れずに。」
- 「荷台は油分が出るから脱脂してから重歩行用を貼ろう。プライマー持ってきて。」
使う場面・工程
- 用途:階段・スロープ・通路の滑り止め、工場や倉庫のピット周り、トラック荷台、脚立・はしごの踏み板、厨房・バックヤード、水回りのアプローチなど
- 工程:清掃・下地調整 → 脱脂・乾燥 →(必要に応じて)プライマー → 貼付・圧着 → 端部処理 → 養生
- タイミング:仕上げ後の最終安全対策や、仮設段階の一時対策としても使用
関連語
- 段鼻(だんばな)/段鼻金物/見切り材
- 防滑シート/防滑塗料(塗布型)
- トラテープ(注意喚起用の黄黒柄テープ。防滑機能がない製品もあるため要注意)
- 端部シール剤/プライマー/圧着ローラー
ノンスリップテープの種類と素材
適材適所で選べるように、現場で出会いやすい分類を整理します。
表面タイプ(粗さ・タッチ)
- 鉱物粒子タイプ:高いグリップ。屋外・工場・作業靴向け。粗目・中目・細目があり、粗目ほど濡れ面や粉塵下で有利。
- ラバー(ゴム系)タイプ:柔らかく足当たりが優しい。屋内・素足・裸足対応が必要な場所、浴室周りのアプローチ等に。
- 透明タイプ:意匠を見せたい床材に。粒度が細かく、視認性は低めなので注意喚起には不向き。
- 蓄光入りや高輝度反射入り:停電時・薄暗い場所での視認性確保に。
基材・粘着剤
- 基材:PVC、PET、布、アルミ箔など。アルミ箔基材は段差や凹凸へのなじみが良く、エッジの浮きに強い傾向。
- 粘着剤:アクリル系(耐候・耐熱・耐水性に優れる)、ゴム系(初期接着力が高いが耐候性は用途要確認)。
形状・サイズ
- ロール品:幅25・50・100mmが定番。長さは5〜18m程度が一般的。
- カット品:階段一段用など、現場で切る手間を省ける。
- 色:黒、灰、透明、黄黒トラ、黄、白など。視認性と意匠で選択。
選び方チェックリスト(失敗しない基準)
- 場所は屋内か屋外か(耐候・耐水・温度差への適合)
- 歩行者の靴種や素足の有無(粗目か細目か、ラバー系の検討)
- 濡れや油の有無(粗目・高グリップ・端部シール併用)
- 下地材質(塗床・タイル・金属・木・コンクリート)。平滑か凹凸か
- 貼り替え頻度(短期養生的か、常設か)
- 視認性の必要度(黄黒トラや蓄光で見やすさを確保)
- 幅とライン計画(段鼻全幅か、片側ラインか、ピッチ)
- 清掃方法(ブラシ・高圧洗浄の有無)にテープが耐えられるか
- 管理者の安全基準に合致するか(滑り抵抗・色指定・端部処理の有無)
施工手順(貼り方のコツ)
下地・製品仕様によって詳細は変わりますが、基本は以下。メーカーの施工要領を最優先してください。
- 1. 位置決め:段鼻前縁からの見付けを揃える。端は5〜10mm程度内側に納め、壁や見切りに当てすぎない。
- 2. 下地清掃:砂塵・剥離物を除去。必要に応じてスクレーパーやサンディングで脆弱部を取り除く。
- 3. 脱脂・乾燥:アルコール系などで油分を拭き取り、完全乾燥。水分が残ると剥がれの原因。
- 4. プライマー:難接着面(タイル、塗床、金属、コンクリート)では指定プライマーを薄く均一に塗布し、指触乾燥を待つ。
- 5. 角を丸める:テープ四隅の角をRカット(3〜5mm程度)して、引っ掛かり・剥離を予防。
- 6. 貼付:ライナーを少しずつ剥がしながら、空気を巻き込まないように貼る。仮置き→本圧着の二段階が安心。
- 7. 圧着:ゴムローラーやヘラで中央から外へしっかり圧着。段鼻部は特に念入りに。
- 8. 端部シール:水や油の侵入が想定される場所では端部シール剤を薄く連続的に塗布。
- 9. 養生:所定時間は通行を制限。低温時はヒートガンで軽く温めると初期接着が安定。
下地別のポイント
- タイル・石:目地跨ぎは避け、目地ごとに分割して貼ると浮きを防止。プライマー推奨。
- 塗床(エポキシ・ウレタン):塗膜の付着力が弱いとテープごと剥がれるため、塗膜の健全性確認。脱脂徹底。
- 金属(縞鋼板・アルミ):凹凸は粗目テープが効きやすい。油分除去とプライマーが有効。
- 木:吸い込みがあるため下地を乾燥させ、粉塵を除去。屋外木部は耐候も考慮。
- コンクリート・モルタル:完全乾燥後に。レイタンスや粉化部は除去し、プライマーで密着向上。
よくある失敗と対策
- すぐ端から浮く → 角のRカット不足/圧着不足/端部シール未施工。R加工と圧着強化、シール併用。
- 剥がすと下地が持っていかれる → 下地塗膜の付着力不足。事前確認し、別工法(金物・シート)も検討。
- 濡れると滑る → 粗さ選定ミス。水・油が出るなら粗目または専用グレードへ。
- 見えにくくて踏み外す → 色選定ミス。コントラストが出る色やトラ柄、蓄光ラインの併用を。
- 冬場に貼ったらすぐ剥がれた → 低温時の施工は接着不良が出やすい。下地温度を上げ、養生時間を確保。
メンテナンス・交換目安・剥がし方
- 清掃:泥や砂はブラシで、油分は中性洗剤で洗浄。高圧洗浄はノズルを離して。
- 交換目安:表面粒子が摩耗して光ってきたら交換サイン。屋外は日射・雨・歩行頻度で寿命が短くなりがち。
- 剥がし方:ヒートガンで温めて粘着を柔らかくし、スクレーパーでめくる。残った粘着は専用リムーバーやアルコールで除去。
安全・規格・管理の考え方
建築・設備の安全対策として、滑り抵抗は管理者や発注者の基準に従います。一般に、乾湿条件・油分の有無・歩行者属性(高齢者・子ども・作業靴・素足)を踏まえ、振り子式や傾斜式などの試験結果やメーカーの性能表示を参照して選定します。法令で直接テープを指定することは多くありませんが、安全配慮義務の観点から、労働安全やバリアフリーの指針に沿った対策が求められます。現場ごとのリスクアセスメントと、表示(注意喚起サイン)との併用が実務的です。
代表的なメーカー・製品例
- 3M(スリーエム):業務用防滑テープ「Safety-Walk」シリーズで広く知られる。粒度・色・屋外対応などラインアップが豊富。
- 日東電工(Nitto):工業用テープの大手。滑り止め用途のテープを用途別に展開。初期接着や作業性に配慮された製品がある。
- 寺岡製作所(Teraoka):各種産業用テープメーカー。防滑テープも取り扱い、サイズバリエーションが実用的。
- TRUSCO(トラスコ)ほか流通系PB:現場で入手しやすい定番仕様をプライベートブランドで展開。即納性が強み。
同名や見た目が似た「注意喚起テープ(黄黒トラ)」には防滑機能のないものもあるため、必ず「防滑」「滑り止め」表記のある製品を選びます。
他工法との比較(どれを選ぶ?)
- ノンスリップテープ:短工期・後付け・低コスト・意匠変更が容易。端部処理とメンテナンスが鍵。凹凸・重汚染・過酷環境では寿命が短くなることも。
- 金物(段鼻ノンスリップ):耐久性が高く常設向け。初期費用と施工手間は増えるが、長期安定性に優れる。
- 塗布型防滑材(骨材散布・コーティング):広面積や複雑形状に有効。乾燥・硬化時間が必要で、下地条件の管理が重要。
- 防滑シート(シール状大判):段差が少ない一体感のある見た目に。貼り付け面の平滑性と圧着が品質を左右。
数量拾い・見積もりのコツ
- 必要本数=貼付総延長 ÷ ロール長。端部の切りしろや予備を5〜10%上乗せ。
- 幅は踏み面の見付けと動線で決める。階段なら50mm一本、または段鼻寄りに50mm+見付けラインなど現場標準を確認。
- 副資材(プライマー・端部シール・圧着ローラー)を見落とさない。
- 屋外は交換サイクルを見込み、維持管理費も提案に含めると親切。
現場で役立つ小ネタ・実践テク
- 仮固定にマスキングで位置出し→本貼り。ズレ防止に効く。
- 段鼻の角はテープを「気持ち手前」に納めるとエッジが保ちやすい。
- ラインを長く通す時はチョークラインで墨出し。透明タイプは墨の清掃を忘れずに。
- 屋外冬場は、貼付前に下地とテープを室内で温めると初期接着が安定。
よくある質問(FAQ)
Q. 屋外階段にはどのタイプが向いていますか?
A. 雨水や砂が想定されるため、鉱物粒子の「粗目」や屋外用の耐候グレードが無難です。視認性確保のため、黄黒トラやコントラスト色も検討しましょう。端部シールも有効です。
Q. 素足で歩く場所に使えますか?
A. 使えますが、痛くないラバー系や細目の製品を選びます。水濡れ時のグリップと肌当たりのバランスを確認してください。
Q. どのくらい持ちますか?
A. 歩行頻度、屋内外、清掃方法で大きく変わります。屋外の重歩行で短め、屋内の一般歩行で長めになるのが一般的です。表面の摩耗や端部の浮きが出たら交換時期の目安です。
Q. すでに塗床がある場合、貼っても大丈夫?
A. 可能ですが、塗膜の密着が弱いと一緒に剥がれます。小面積で事前試験を行い、必要なら塗膜補修や別工法を検討します。
Q. 透明タイプは滑り止め効果が弱い?
A. 意匠を損ねにくい利点がありますが、粒度が細かい製品が多く、重汚染・濡れ面・粉塵下では粒子系の粗目に劣る場合があります。用途に合わせて選んでください。
用語補足(用語辞典的メモ)
- 段鼻(だんばな):階段の踏み面先端。見付けラインや滑り止めを施す要所。
- 端部シール:テープの端から水・油が入るのを防ぐためのシーリング材。
- プライマー:下地と粘着剤の密着を高める下塗り材。
- 粒度(グリット):表面の粗さのこと。粗いほどグリップは高いが素足には不向き。
まとめ:安全と意匠を両立する“最短の一手”
ノンスリップテープは、滑りリスクを手早く下げられる頼れる現場資材です。選定の要点は「場所(屋内外)」「足元の条件(水・油・粉)」「歩行者(靴/素足)」、そして「下地の相性」。施工は下地の清掃・脱脂・プライマー・角のR加工・圧着・端部シールの基本を守れば安定します。常設の耐久性が必要なら金物や塗布型も視野に入れつつ、まずはテープで確実に効果を出す。現場で迷ったら、この記事のチェックリストと手順に戻って確認してください。安全は段取りで決まります。あなたの現場が、今日から少しでも安心で効率的になりますように。