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ホイストとは?建設現場での使い方・安全対策・選び方を徹底解説

建設内装の「ホイスト」入門ガイド:意味・使い方・安全対策・選定の実務ポイント

「ホイストって何?」「チェーンブロックやウインチとどう違うの?」と悩んで検索された方へ。この記事では、建設内装の現場で職人が日常的に口にする現場ワード「ホイスト」について、意味から使い方、安全上の注意、選び方までをやさしく丁寧に解説します。実際の現場感覚に寄せて書いているので、初めての方でもイメージしやすく、すぐに役立つ知識だけをギュッとまとめました。

現場ワード(ホイスト)

読み仮名ほいすと
英語表記hoist

定義

ホイストとは、荷を「垂直方向」に吊り上げ・吊り下げするための機械の総称です。チェーンまたはワイヤロープをモーター(電動)または人力(手動)で巻き上げ、フックに掛けた荷を持ち上げます。建設内装の文脈では、とくに「電動チェーンホイスト(電気チェーンブロック)」を指して「ホイスト」と呼ぶことが多く、仮設のH鋼やモノレール、トロリーに懸けて石膏ボード、LGS(軽量鉄骨)、空調機、什器などの荷上げに用います。なお、水平に引っ張る用途が中心の「ウインチ」とは役割が異なります。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のように呼ばれることがあります。

  • ホイスト/電動ホイスト(もっとも一般的)
  • 電気チェーンブロック(同義で使われやすい)
  • チェーンブロック(本来は手動の総称だが、電動含め曖昧に使われることも)
  • モノレールホイスト(モノレール走行に対応した構成)

混同しやすいものとして「レバーブロック(手動のレバー式チェーン)」や「ウインチ(水平引き)」があります。これらは用途・構造が異なるため、発注や指示の際は用語をはっきりさせるとトラブルを防げます。

使用例(会話の例)

  • 「今日は天井裏の空調機、ホイストで吊り上げて据え付けよう。」
  • 「500キロまでいけるホイストとビームクランプ、午後イチで回しておいて。」
  • 「この場は柱間にH鋼を仮設して、ホイスト+トロリーで横移動してから所定位置に降ろすよ。」

使う場面・工程

  • 資材の荷上げ(石膏ボード、LGS、合板、重量什器、金物類)
  • 設備機器の据付(室内機、エアハンドリングユニット、小型ポンプ、貯湯タンク等の位置決め)
  • 天井裏・ピット内での重量物の段積み・仮置き・位置調整
  • 改修現場での撤去品の吊り降ろし

関連語

  • 玉掛け:フックに荷を掛ける作業。スリング、シャックル、ベルト等を使い分ける。
  • スリング:荷をフックに掛けるための用具(ワイヤ、ベルト、チェーンなど)。
  • ビームクランプ:H鋼等の梁にホイストやトロリーを固定する金具。
  • トロリー:梁上を横行させる台車。手押し(プレーントロリー)、ギヤ式、電動式がある。
  • モノレール:天井や架台に設ける単軌道。ホイストを走らせて搬送に用いる。

ホイストの種類と特徴

ホイストは構造や動力でいくつかに分類できます。現場選定の基礎になるため、ポイントを押さえておきましょう。

  • 動力
    • 電動(電気チェーンホイスト/電気ワイヤロープホイスト):スイッチ操作で安定して昇降。100V(小容量)や200V(三相/単相機種あり)など電源条件に合わせて選定。
    • 手動(チェーンブロック、レバーブロック):電源不要で微調整がしやすい反面、重量物や回数が多い工程には非効率。
  • 巻上材
    • チェーン式:コンパクトで取り回しが良く、内装現場で多用。
    • ワイヤロープ式:高速・高揚程・大容量に向くが機構はやや大ぶり。
  • 支持・走行
    • 吊下げフック式:一点にぶら下げて使用。シンプルに設置可能。
    • トロリー一体型:梁上を横行でき、吊り上げ後の水平移動が可能。
  • 操作方式
    • 押しボタンスイッチ(ペンダント):上・下(+横行)を操作。非常停止付きが一般的。
    • 無線リモコン:離隔操作や死角の少ない位置から操作できるが、見張り員の配置は必須。

ホイストとウインチの違い

ホイストは「垂直に吊る」用途が主で、フック・安全爪・上限下限リミット・過巻防止といった“吊り荷”前提の安全機構を備えます。一方、ウインチはロープを巻き取って「水平に引く」用途が中心(斜め引き・曳行)。吊り上げを前提としない機種も多く、仮に垂直吊りを行うと危険です。現場で言い間違いが起きやすいので、発注書・KY(危険予知)・合図で目的を明確にしましょう。

選び方の実務ポイント

ホイスト選定で迷ったら、次の観点をチェックします。

  • 定格荷重:最大想定荷重に十分な余裕を持たせる(例:最大300kgの荷なら500kgクラスを検討)。付帯具の自重や工具、ブレも見込む。
  • 揚程(ストローク):床から吊点までの高さ+余裕分。天井高さが低い場合は本体の「ヘッドルーム寸法」も要確認。
  • 電源:現場の受電条件(100V単相/200V単相・三相)と使用回路(漏電遮断器、容量、延長距離)を確認。
  • 使用頻度・速度:頻回運転なら連続定格・デューティ、巻上速度、二速の有無を確認。
  • 設置方式:フック吊り、ビームクランプ固定、トロリー横行、モノレールなど、動線に合わせて選ぶ。
  • 環境:粉じん・湿気・温度条件。屋内でも粉じんが多い改修では防じん性や保護等級、メンテ性が重要。
  • 付帯具:スリング(ベルト・ワイヤ・チェーン)、シャックル、コーナーパッド、ビームクランプの容量と適合サイズ。
  • 調達方法:レンタル可否、保守体制、消耗品(チェーン、フック)の入手性。

安全対策・現場ルールの基本

ホイスト作業で最優先なのは「つり荷の下に入らない」こと。加えて以下を徹底します。

  • 定格超過禁止:荷重の見積もりを事前に行い、余裕のある機種・付帯具を選定。
  • 玉掛けの適正:スリング角度(2点吊り・4点吊り)と荷の重心、当て板・コーナープロテクタで角当たり防止。
  • 吊点・架台の強度:H鋼・インサート・ビームクランプの許容荷重、取付ピッチ、偏荷重を確認。仮設梁は専門者の検討に基づき施工。
  • 操作・合図:操作員と合図者を定め、死角には見張り員。ペンダントの非常停止の位置と動作を事前確認。
  • エリア管理:つり荷下は立入禁止養生を設け、搬入経路と退避場所を確保。
  • 電源安全:漏電遮断器の使用、ケーブルの養生、過度な延長による電圧降下に注意。
  • 日常点検:フックの開き、チェーンのねじれ・伸び、リミット動作、異音・異臭、ブレーキの保持力を始業前に確認。
  • 操作姿勢:衝撃巻上げ・急停止・巻き過ぎを避け、微速で位置決め。荷振れは合図者と同期して収束させる。

法令・資格は機種や設置形態、つり上げ荷重で適用が変わります。該当する規程(労働安全衛生法・クレーン等安全規則など)と現場ルール、メーカー取扱説明書を参照し、必要な教育・点検・届出を安全衛生責任者と必ず確認してください。玉掛け作業に関する教育や高所作業の墜落防止(フルハーネス使用など)も忘れずに。

設置・撤去のコツ(仮設運用の流れ)

内装現場での仮設運用は、段取りが安全と効率を左右します。以下は典型的な流れです。

  • 事前計画:荷姿・重量・搬入経路・吊点・作業人数・合図系統を決定。図面上で干渉やヘッドルームを確認。
  • 仮設梁の用意:H鋼寸法・支持間・固定方法(ボルト止め、クランプ)を設計に基づき施工。水平・垂直を確認。
  • 機器の取り付け:ビームクランプ→トロリー→ホイストの順に装着し、落下防止ワイヤなど二重掛けも検討。
  • 試運転:無負荷で上限・下限リミット、ブレーキ保持、横行のスムーズさを確認。続いて軽負荷で再点検。
  • 本作業:玉掛け→合図→巻上・横行→位置出し→仮固定→玉外しの手順を標準化し、漫然作業を避ける。
  • 撤去:荷の有無を再確認し、通電停止→取り外し→運搬。チェーンの給脂・清掃を行い保管。

点検・メンテナンス

安全に直結するため、日常点検と定期点検を習慣化します。

  • チェーン・ロープ:摩耗、さび、変形、素線切れの有無。チェーンの伸びは限度値を超えたら交換。
  • フック:開口の広がり、キズ、回転の渋さ。安全爪の動作。
  • ブレーキ:吊り上げ停止後の保持力。じわ落ちがあれば使用中止。
  • リミットスイッチ:上限・下限とも確実動作。
  • 電装:ケーブル被覆の傷、コネクタの緩み、アースの状態。
  • 潤滑・清掃:チェーンへの適正給脂、粉じん清掃、保管時の防錆。
  • 記録:点検結果・修理履歴・使用時間を記録し、異常傾向を早期発見。

メーカー・ブランドの例(参考)

国内現場でよく見かけるホイスト関連のメーカー例を挙げます。ラインナップは時期や仕様で変わるため、最新情報は各社公式資料をご確認ください。

  • キトー(Kito Corporation):電気チェーンホイスト、手動チェーンブロック、レバーブロックなど吊上機器の大手。
  • 象印チェンブロック株式会社(ELEPHANT):手動・電動の各種チェーンブロック、付帯金具を展開。
  • 日立産機システム(Hitachi Industrial Equipment Systems):産業用の電動ホイスト等を扱う分野で実績があるメーカー。
  • トーヨーコーケン株式会社:建設用の荷揚げ機器、モノレールホイストやウインチ類を供給。
  • スーパーツール株式会社:レバーブロック、クランプなど周辺吊具のラインナップが豊富。

レンタル各社でもホイスト本体・トロリー・ビームクランプ・スリング類がセットで手配可能です。現場条件に合わせ、供給体制や保守の相談もしやすい窓口を選びましょう。

用語辞典的ミニ知識(押さえておくと役立つ)

  • 定格荷重:機器が安全に吊れる最大荷重。付帯具の定格も最小値に合わせて判断する。
  • 揚程:下フックの可動範囲の高さ。高天井やピットでは不足しやすい。
  • ヘッドルーム:吊点から下フックまでの最短寸法。天井ふところが浅いと干渉要因に。
  • デューティ(使用率):連続運転に耐える割合。頻回運転なら高デューティ機種が有利。
  • 二次側保護:漏電遮断器・過負荷保護を指す現場言い回し。仮設分電盤の仕様を要確認。

よくある質問(Q&A)

Q. 100Vのホイストでも内装工事に使えますか?

A. 小容量・短時間の荷上げであれば100V機がよく使われます。重量物や頻回運転、スピードが必要な場合は200V(三相)など上位機種を検討してください。電源の容量・延長距離・電圧降下にも注意が必要です。

Q. チェーンブロックとホイストの違いは?

A. 日常会話では混用されがちですが、厳密には「ホイスト」は動力を問わない吊上機械の総称、「チェーンブロック」はチェーンを使うブロック機構(手動・電動あり)を指します。内装現場で「ホイスト」と言えば電動チェーン式を指すことが多いです。

Q. ウインチで吊り上げても大丈夫?

A. 原則不可です。ウインチは水平引き用で、吊り上げ前提の安全機構やブレーキ設計が異なる機種が多く、垂直吊りは危険です。必ず吊上げ専用のホイストを使用してください。

Q. 天井が低くてヘッドルームが足りません。

A. 本体高さの小さい低ヘッドルーム型や、手動で微調整しやすい機種の採用、仮設梁の位置調整などで解決できる場合があります。吊り角度や荷姿の見直しも併せて検討しましょう。

Q. 必要な資格はありますか?

A. 適用は機種・設置形態・荷重で変わります。玉掛け作業の教育、高所作業の墜落防止措置は広く求められますが、詳細は現場の安全衛生責任者と関係法令、メーカー取説で必ず確認してください。

まとめ:ホイストを正しく使えば、内装工事はもっと安全で速くなる

ホイストは、内装現場での「安全に、効率よく、確実に」荷を動かすための基本ツールです。意味や種類、ウインチとの違い、選び方、安全対策を理解しておけば、段取りの質が上がり、ムダな待ち時間や事故リスクを大幅に減らせます。次にホイストが必要になったら、この記事のチェックリストをそのまま打合せ・発注・KYに活用してください。現場は準備八割。正しい機種選定と安全な運用で、作業の品質とスピードをしっかり底上げしていきましょう。