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中継アンテナとは?建設内装現場での役割・選び方・設置ポイントを徹底解説

現場ワード「中継アンテナ」完全ガイド|内装工事での意味・実務での使い方・設置のコツ

「中継アンテナって、結局なに?どこに付けて、誰が扱うの?」――初めて現場に入ると、こんな疑問が出てきますよね。本記事は、建設内装現場で職人や監督が日常的に使う現場ワード「中継アンテナ」を、やさしく・実践的に解説する入門ガイドです。意味だけでなく、現場での言い回し、設置の勘所、法令や安全上の注意、トラブル対処までをまとめました。読み終えるころには、現場で飛び交う会話がスムーズに理解でき、施工や調整のときにも自信を持って動けるはずです。

現場ワード(中継アンテナ)

読み仮名ちゅうけいあんてな
英語表記repeater antenna / relay antenna / distributed antenna system (DAS)

定義

建設内装現場で言う「中継アンテナ」とは、屋内や地下など電波が届きにくい場所で、無線電波(携帯電話、トランシーバー、地デジ・BSの共聴系など)を受けて、別の場所へ届けやすくするためのアンテナまたはアンテナ群、さらにそれと組み合わさる中継器(レピーター)や増幅器(ブースター)を含めた設備の総称です。狭い意味ではアンテナ単体を指しますが、現場会話では「中継アンテナ=屋内中継設備一式」をざっくり指すことが多いです。

基本の仕組み

どうやって電波を「中継」するのか

中継アンテナは大きく「ドナー側」と「サービス側」に分かれます。屋外や電波の強い場所で受けるアンテナ(ドナー)で信号を拾い、ケーブル(同軸や光)で屋内に引き込み、屋内のサービスアンテナで再び放射してエリアを作ります。間に増幅器(ブースター)や中継器(レピーター)を入れて、信号を適切なレベルに整えます。要点は、十分な電波レベルを確保しつつ、機器が自分の出した電波を自分で拾ってしまう「発振」を防ぐこと。配置と減衰(距離や壁)でアイソレーション(隔離度)を確保するのがコツです。

用語整理(よく混同される言葉)

中継アンテナ:電波の送受を担うアンテナ。単体名詞。中継器(レピーター):受けた信号を再生・増幅して再送する機器。ブースター:レベルを上げる増幅器(主にテレビ共聴で使用)。DAS(分散アンテナシステム):多数の小型アンテナを建物内に分散配置する屋内通信システム。フェムトセル/スモールセル:携帯キャリアが提供する小型基地局(中継というより小規模基地局に近い)。現場ではこれらをまとめて「中継アンテナ」と呼ぶことがあります。

種類と用途(内装現場で出会うケース)

中継アンテナは用途ごとに性格が異なります。現場でよく出会うのは次の4系統です。

  • 携帯電話・5G/4G用の屋内分散アンテナ(DAS):地下や高層の奥まった場所での「圏外対策」。キャリアや専門業者が設計・施工します。引渡し前の電波測定や配置調整が重要です。
  • トランシーバー(特定小電力・簡易無線)用の中継器アンテナ:大型フロアや地階を跨いだ通話エリアの拡張に。現場の連絡手段を安定化します。機種や周波数に注意。
  • 地デジ・BS/CSの共聴用アンテナ+ブースター:商業施設・ホテル・病院などでテレビ視聴を安定させるための分配ネットワーク。中継という語が使われることがあります。
  • Wi‑Fiの中継(メッシュAP・リピーター機能):厳密には無線LANアクセスポイントの配置最適化ですが、現場会話で「Wi‑Fiの中継アンテナ」と呼ばれることも。電源・PoEや干渉管理がポイントです。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように呼ばれます。意味は近いですが、機器構成が違う場合もあるため、会話で曖昧さを感じたら「どの系統の中継か(携帯・無線・テレビ)」を確認しましょう。

  • 中継アンテナ/リレーアンテナ/屋内アンテナ
  • レピーター(中継器)/ブースター(増幅器)
  • 携帯の中継/DAS(ディーエーエス)/屋内分散アンテナ

使用例(3つ)

  • 「地下で携帯が圏外だから、仮設で中継アンテナ入れてもらえる?」
  • 「4階の特小トランシーバー、端の部屋で切れる。中継器のアンテナ位置、もう少し外周に振ろう」
  • 「客先のテレビがモザイク出る。ブースターの利得と中継アンテナの向きを測って再調整しよう」

使う場面・工程

よく登場するのは以下のタイミングです。

  • 着工〜スケルトン時:電波の素通りが悪い構造(地下、厚いRC、メタル天井)を把握。仮設の連絡手段確保。
  • 配線・下地工程:同軸・LAN・光のルート確保、天井内にアンテナ取り付け下地を用意。
  • ボード・仕上げ前:アンテナ取付位置の最終確認。発振のリスクがないか動作試験。
  • 引渡し前検査:携帯・無線の通話テスト、テレビのチャンネル受信確認を全域で実施し、是正。

関連語

  • 分配器/分岐器/タップ、同軸(5C-FB/7C-FBなど)、コネクタ(F型/N型/SMA)
  • ブースター、アッテネータ(減衰器)、避雷器、アース
  • スペアナ(スペクトラムアナライザ)、電界強度計、フィールドテスター
  • フェムトセル/スモールセル、メッシュAP、PoE

選び方(内装現場目線のチェックポイント)

中継アンテナは「何の電波を」「どの範囲で」使いたいのかで選定が変わります。最低限、次を押さえましょう。

  • 対象の電波:携帯(4G/5Gの対象バンド)、トランシーバー(特小/簡易無線の周波数)、テレビ(地デジ/BS)。対象外の機器を選ぶと効きません。
  • 必要エリアと障害物:RC壁、メタル天井、長廊下は減衰が大。アンテナ数・配置を増やす判断材料に。
  • 設置条件:二重天井の高さ、点検口の有無、機器の重量と固定方法(落下防止ワイヤ必須)。
  • 配線ルート:同軸の最短化、曲げ半径と支持間隔、貫通部の防火処理、ケーブルの識別表示。
  • 電源・盤:ブースターや中継器の電源容量、停電時の扱い(非常用電源の対象か)。
  • 見え方・意匠:露出アンテナは仕上げとの取り合いを事前に合意。グリッド天井での位置調整も。
  • 将来拡張:テナント入替や5G追加に備え、空配管や余長を確保。
  • 運用主体:携帯はキャリア・指定業者が扱うのが原則。現場判断で勝手に設置・調整しない。

設置ポイント・施工手順(失敗しない勘所)

位置決めの基本

  • まず現状の電波を測る:入口付近や吹抜け側など「相対的に強い」場所を起点に配置検討。
  • ドナーとサービスは離す:増幅度より十分に大きい隔離(壁・距離・遮蔽)を確保して発振を防止。
  • エリア境界を重ねすぎない:サービスアンテナ同士が過密だと干渉やムラの原因に。
  • 人が集まる場所に寄せる:受付・EVホール・会議室・売場内通路など、利用密度の高い箇所を優先。

配線・固定の注意

  • 同軸の曲げ半径を守る:きつい曲げは損失増・断線の原因。留めは専用クランプで。
  • 金属ダクト・ケーブルラックの活用:熱や荷重の分散、点検性を確保。
  • 貫通部は防火処理:モルタル・充填材・防火パテで仕上げ、ラベルで系統を明示。
  • 落下防止:アンテナ・中継器は補助ワイヤ等で二重に保持。天井材への直付けは避ける。
  • アース:避雷器・ブースターのアース接続を所定の位置へ。ノイズ対策にも有効。

電源・試験・記録

  • 電源投入は段階的に:接続確認→低利得→最終利得。発振や過入力を都度チェック。
  • 試験結果を図面化:アンテナ位置、測定点のレベル、通話可否を平面図に落とし、引渡し資料に。
  • リビルド可能性を残す:点検口・余長・予備ポートで将来の増設に備える。

安全・法令・承認(ここは厳守)

中継アンテナは「電波」を扱うため、機器や用途によっては電波法上の制約があります。特に携帯電話の屋内中継器やセルラーアンプは、キャリアが認定した機器を、キャリアまたはその指定業者の管理で設置・運用するのが原則です。無許可の機器や不適切な設定は電波法違反となり得るため、現場判断での設置・調整は行わないでください。

トランシーバーの中継器は、特定小電力(免許不要)と簡易無線(登録が必要)などで扱いが異なります。型式適合機器の使用、必要に応じた登録・申請、出力やチャンネルの遵守が必要です。テレビ共聴系は無線局免許の対象ではないものの、電気設備としての施工基準や絶縁・接地・防火の要件を満たす必要があります。いずれも、電気・通信の有資格者やキャリア・専門業者との連携を前提に進めましょう。

また、高所作業・感電・落下物などの一般安全も重要です。天井内作業では墜落制止用器具を使用し、停電作業・ロックアウト/タグアウトを徹底。熱源近傍の配線や可燃材への接触を避け、消防設備・避難経路の機能を阻害しないように配慮します。

よくあるトラブルと対処

  • 圏外や通話が不安定:ドナー側の電波が弱い/サービスアンテナの密度不足。屋外アンテナ位置の再検討、指向性アンテナの採用、アンテナ増設で改善。
  • ハウリング(発振)のような症状:自分の出力を自分で拾って増幅している可能性。アンテナ間の距離を離す、遮へい(壁・金属板)を増やす、利得を下げる。
  • テレビのモザイク・ブロックノイズ:過入力やチャンネル間干渉、接栓不良が多い。ブースター利得を適正化し、接栓(F型)のやり直し、減衰器でレベル調整。
  • ノイズ・干渉:LED電源やインバータ機器がノイズ源になることも。配線ルートを離す、フェライトコア等で対策。
  • 一部キャリアだけ弱い:携帯の周波数帯がキャリアごとに異なるため。対応バンドの機器か、キャリア別の設計が必要。勝手な増幅は不可、キャリアと協議。
  • 断線・接触不良:同軸の無理な曲げ、ステップでの踏みつけ、端末処理不良が典型。曲げ半径・支持間隔を守り、圧着・芯線長を規定通りに。

代表的なメーカー・サービス(参考)

中継アンテナや関連機器は、用途ごとに専門メーカーがあります。以下は日本の現場でよく目にするカテゴリと例です(導入は設計・仕様に基づき選定してください)。

  • テレビ共聴・屋内アンテナ系:日本アンテナ、マスプロ電工、DXアンテナなど。ブースター、分配器、各種屋内アンテナを展開。
  • 業務用無線・中継器:アイコム、JVCケンウッド、モトローラ・ソリューションズなど。特定小電力・簡易無線の中継器やハンディ機を提供。
  • 携帯屋内ソリューション:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル各社の屋内対策(DAS/スモールセル等)。キャリアの承認・指定工事会社による構築が前提。

施工時のコミュニケーション(誰と、何を擦り合わせるか)

  • 現場監督・電気/通信業者:系統(携帯/無線/テレビ)、仕様、ルート、盤・電源、試験方法。
  • キャリア・専門業者:携帯の屋内対策は必ず相談。仮設対応の可否、恒久設備のスケジュール。
  • 設計・意匠:アンテナの見え方、意匠天井・什器との取り合い、点検口の位置。
  • 消防・設備:スプリンクラー・感知器との離隔、無線機器の設置による影響の有無。
  • テナント・運用側:サービスエリアの優先順位、夜間作業や停電試験の段取り。

予算・スケジュールの考え方

中継アンテナのコストと工期は、対象(携帯・無線・テレビ)、面積、アンテナ本数、配線距離、盤・電源の有無で大きく変わります。携帯の屋内対策はキャリア調整や電波測定が入るため、余裕を持った計画が必要です。仮設での暫定対策(レンタルの無線中継器など)と、竣工時の恒久設備を分けて段取りするとスムーズです。具体的な金額・納期は、現地調査・設計条件により変動するため、早めに関係者と協議しましょう。

現場チェックリスト(実務で使える要点)

  • どの系統の「中継」か(携帯/無線/テレビ)を明確化したか。
  • 必要エリアと優先順位を地図化したか(平面図・ゾーニング)。
  • アンテナ位置は発振・干渉リスクを回避しているか(隔離確保)。
  • 配線ルートは最短・安全・可視化(ラベリング・配線図)できているか。
  • 落下防止・防火貫通処理・アースは規定通りか。
  • 電源容量・停電時運用・保守アクセスは問題ないか。
  • 携帯系はキャリア承認・専門業者のスケジュールを押さえたか。
  • 試験記録(測定点・レベル・通話品質)を残したか。
  • 将来増設に向けた空配管・余長・予備ポートを確保したか。

用語ミニ辞典(初心者向け)

  • 中継アンテナ:屋内で電波を行き渡らせるためのアンテナ(やその系統全体の通称)。
  • 中継器(レピーター):受けた信号を再生・増幅して再送する機器。
  • ブースター:主にテレビ信号のレベルを上げる増幅器。
  • DAS:分散アンテナシステム。小型アンテナを多数設置して屋内をカバー。
  • ドナーアンテナ:屋外など電波の強い場所から信号を拾う側のアンテナ。
  • サービスアンテナ:屋内に電波を供給するアンテナ。
  • アイソレーション:相互に影響しない「隔離度」。発振防止の鍵。

まとめ:中継アンテナを味方にすれば、現場の「つながる」が変わる

中継アンテナは、電波の通りにくい屋内・地下で通信やテレビ視聴を成立させるための「縁の下の力持ち」です。現場では、意味の取り違えを防ぐために「どの系統の中継か」をまず確認し、配置・配線・安全・法令の4点を丁寧に詰めることが成功の近道。携帯系はキャリア・専門業者と、無線やテレビは適切な資格・機器で、段取り良く進めましょう。仕上げの美しさと同じくらい、「つながる品質」も建物の価値を左右します。この記事が、あなたの現場での判断と段取りの一助になれば幸いです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

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  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
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