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防火扉とは?種類と設置基準・点検方法をプロがわかりやすく解説

  1. 防火扉の基礎から現場の勘所まで。内装工が押さえておきたい実務ポイント
  2. 現場ワード(防火扉)
    1. 定義
  3. 防火扉の種類と構造
    1. 区分(特定防火設備/防火設備)
    2. 材料と内部構成
    3. 形状・方式
  4. 設置基準の考え方(やさしく要点だけ)
  5. 現場での使い方
    1. 言い回し・別称
    2. 使用例(3つ)
    3. 使う場面・工程
    4. 関連語
  6. 施工の勘所(プロがやりがちなミスと回避策)
    1. 1. 枠の通り・水平垂直が甘い
    2. 2. 隙間寸法(クリアランス)の取り違え
    3. 3. スモークシールを“似た材”で代用
    4. 4. 常時開放をゴムストッパーで固定
    5. 5. 勝手な後加工(のぞき穴、サイン、配線穴)
    6. 6. 金物の選定・設定ミス
  7. 点検・メンテナンス方法(現場でできる基本)
  8. 他職種との取り合い(段取りが9割)
  9. よくある質問(Q&A)
    1. Q. 防火扉は常時開けておいてもいいですか?
    2. Q. 表面にフィルムやシートを貼り替えても大丈夫?
    3. Q. のぞき穴やドアガードを後付けできますか?
    4. Q. 扉だけ交換してもいい?枠はそのまま使える?
  10. 代表的なメーカー(例)
  11. 現場で役立つチェックリスト(引渡し前・定期点検の要点)
  12. 用語ミニ辞典(初心者向け)
  13. トラブル事例と対処のコツ
    1. 床仕上げ変更でアンダーカット不足
    2. 気圧差で最後まで閉まらない
    3. 引渡し後に勝手口的に常時開放される
  14. まとめ(今日から現場で役立つポイント)
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防火扉の基礎から現場の勘所まで。内装工が押さえておきたい実務ポイント

「防火扉って、普通のドアと何が違うの?設置や点検はどうすればいいの?」——初めて現場に入ると、こんな疑問を抱く方が多いはずです。防火扉は、火災時に炎や煙の広がりを食い止めるための“最後の砦”。内装工・建具工・設備や電気との取り合いまで、現場では知っておきたいルールとコツがたくさんあります。この記事では、建設内装の現場でよく使われる「防火扉」というワードを、やさしい言葉で実務目線に落とし込み、設置基準の考え方、施工の注意、点検方法、現場での言い回しまで、丸ごと整理して解説します。

現場ワード(防火扉)

読み仮名ぼうかとびら
英語表記Fire door

定義

防火扉とは、火災時に開口部を遮断し、火炎や煙の延焼・拡大を抑えるために設計・認定された扉の総称です。日本では建築基準法に基づき、国土交通大臣の認定(いわゆる「大臣認定」)を受けた「防火設備」または「特定防火設備」に該当する扉のことを実務上「防火扉」と呼びます。常時は人や物の出入りを妨げず、火災時には自動的に閉まって区画を保つことが求められ、扉本体・枠・金物・シール材などを含む“セット”で性能が成立します。

防火扉の種類と構造

区分(特定防火設備/防火設備)

現場では「旧称」で呼ばれることもありますが、現在は以下の二本立てで考えます。

  • 特定防火設備(旧称:甲種防火戸)…火災拡大リスクの高い開口に用いるグレード。厳しい遮炎性能が求められます。
  • 防火設備(旧称:乙種・丙種防火戸)…用途や設置部位に応じた遮炎性能を持つ扉。

どちらも大臣認定の対象で、製品ごとに性能・納まり・使用条件が認定書に記載されています。現場では図面の指定(特定防火/防火)と製品の認定書が一致しているか、必ず確認しましょう。

材料と内部構成

扉の素材は、鋼板(スチール)やステンレス、木製(芯材に難燃・不燃材を組み合わせたもの)などが一般的です。内部には遮炎・断熱のための無機系材料(例:せっこう系、ケイ酸カルシウム系、セラミック系など)が組み込まれ、目地部には耐熱性のシール材や発泡材(熱で膨張して隙間を塞ぐタイプ)が使われます。枠・丁番・ラッチ・ドアクローザーなどの金物も含め、セットで認定されている点が重要です。

形状・方式

  • 開き戸(片開き/両開き/親子)…最も普及。避難経路に多い。
  • 引き戸(片引き/引分け)…通路側スペースが限られる場合に採用。
  • 自動ドアタイプ…火災時は自閉・閉鎖に切り替わる認定品。

なお、「防火扉」と混同されやすい「防火シャッター」は別の設備です。用途・認定が異なるため、図面指定を必ず確認しましょう。

設置基準の考え方(やさしく要点だけ)

詳細は法令・図書・認定書の確認が前提ですが、現場で押さえるべき考え方は次の通りです。

  • どこに必要か…防火区画・竪穴区画(階段、エレベーターホール等)の開口部、前室、機械室や電気室の出入口など、図面に「特定防火」「防火」と明記される場所。
  • 何が求められるか…大臣認定に適合したセットであること、自閉機能を備えること、枠・扉・金物・シールの組合せが認定書通りであること。
  • どう取り付けるか…躯体との取り合い、隙間寸法、アンカー・モルタル充填、周囲の不燃下地、スモークシールの有無など、認定条件を満たす施工。

性能は「時間」や「遮炎条件」などで規定されますが、具体の数値・条件は製品の認定書に従います。現場の判断で金物を変えたり、穴あけ・加工を行うと、認定外となる恐れがあるため厳禁です。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では以下のような言い方をよくします。

  • 防火扉/防火戸(ぼうかど)
  • 特防(特定防火設備の略)
  • 防火ドア(一般的呼称)
  • 甲(旧称を引きずって「甲」などと略す現場もあるが、正式表記ではないため注意)

使用例(3つ)

  • 「ここは竪穴区画だから特防の両開き入るよ。枠先行、躯体補修まで段取りして。」
  • 「スモークシールは認定どおり黒のL型ね。勝手に交換しないで、メーカー手配で。」
  • 「常時開けたいなら電磁式の開放金物にして防災盤連動を確認。ドアストッパーでの固定はNG。」

使う場面・工程

代表的な流れは以下の通りです(現場条件により前後あり)。

  • 墨出し・開口確認(クリアランス/下地種別/スラブ段差)
  • 枠の先行取付(レベル・通り・振れ止め、アンカー打ち、モルタル充填等)
  • 周囲の不燃下地・耐火間仕切りとの取り合い処理(目地幅・シール)
  • 扉吊り込み(丁番調整、ラッチ・ドアクローザーの設定)
  • スモークシール等の装着(認定指定の型・位置・長さ)
  • 自閉・閉鎖試験、解錠・施錠確認、連動設備(防災盤)との試験

関連語

  • 防火区画/竪穴区画/前室
  • 大臣認定(認定書)/遮炎性能
  • 自閉装置(ドアクローザー、フロアヒンジ)
  • ラッチ/丁番(ヒンジ)/シリンダー錠
  • スモークシール(膨張材)/気密材
  • 電磁式開放装置(火報連動)
  • 防火シャッター(別設備)

施工の勘所(プロがやりがちなミスと回避策)

1. 枠の通り・水平垂直が甘い

わずかなねじれや傾きでも、ラッチが掛からない・自閉しない原因に。レーザーで通りを出し、対角寸法を確認。溶接・アンカー固定後はモルタル(または指定材料)でしっかり充填し、空洞を残さないこと。

2. 隙間寸法(クリアランス)の取り違え

扉と枠、扉下端のアンダーカットなど、認定で許容範囲が決まっています。床仕上げの厚み(タイル、長尺シート、カーペット等)を見込んで設定。完成後に「擦る」「閉まりが甘い」を防ぎます。

3. スモークシールを“似た材”で代用

見た目が同じでも性能は別。メーカー指定の型番・長さ・貼付位置を厳守し、油分・ホコリを除去してから施工。コーナー部は切り欠きと圧着を丁寧に。

4. 常時開放をゴムストッパーで固定

火災時に閉まらなければ本末転倒。常時開けたい場合は、大臣認定に適合する電磁式開放装置+火報連動を採用。電気工事と試験をセットで段取りします。

5. 勝手な後加工(のぞき穴、サイン、配線穴)

扉・枠への穴あけ、金物追加、フィルム厚みの変更などは、認定外加工となる恐れが高く原則不可。サイン類はメーカー推奨の位置・方法で。疑問点はカタログと認定書、メーカー技術窓口で確認しましょう。

6. 金物の選定・設定ミス

ドアクローザーの番手、ラッチストライクの調整、丁番ビスの締め不足などは自閉性能に直結。クローザーのスピード・ラッチング角度を現地で微調整し、風圧・気圧差がある場合は強めに設定します。

点検・メンテナンス方法(現場でできる基本)

法定点検の詳細は専門家の業務ですが、日常管理・引渡し前のチェックとして以下をおすすめします。

  • 外観:歪み、凹み、腐食、ビス浮き、塗装剥離、扉の擦り確認
  • 表示:大臣認定ラベルの有無・型式の一致、表示が読める状態か
  • 自閉:全開からの自然閉鎖、最後まで確実にラッチが掛かるか(風や気圧差があっても閉まるか)
  • クリアランス:三方・下端の隙間が認定範囲内か、床見切りとの干渉の有無
  • 金物:丁番のガタ、ビスの緩み、ラッチ・ストライク位置、クローザーの油滲み
  • シール:スモークシールの欠損・剥がれ・汚れ、扉面との当たり具合
  • 開放装置:電磁ホルダー・防災盤連動の作動試験(感知器発報で自動閉鎖するか)
  • 周囲仕上げ:枠まわりシールのひび割れ、可燃物の取り付け(掲示板・装飾)有無

不具合を見つけたら、むやみに調整・改造せず、施工会社またはメーカーに相談を。防火扉は「元の認定状態」に戻すことが最優先です。

他職種との取り合い(段取りが9割)

  • 電気:電磁開放、火報連動、常時開放スイッチ、非常電源の系統確認。試験は電気・管制盤立会いで。
  • 内装(壁・天井):不燃下地の種別、枠周りの防火シール、見切り材。ボードの突き付け・クリアランスに注意。
  • 設備(空調・換気):気圧差で閉まりが悪くなる場合があり、クローザー設定を調整。防煙垂れ壁との干渉も確認。
  • 金属工:枠先行・躯体アンカー・モルタル詰めまでの分担。監理者と納まり図で決着してから着工。

よくある質問(Q&A)

Q. 防火扉は常時開けておいてもいいですか?

A. 可能ですが、認定に適合する電磁式開放装置等で「火災時に自動閉鎖する」仕組みが必須です。ゴム製ドアストッパー等での固定はNGです。

Q. 表面にフィルムやシートを貼り替えても大丈夫?

A. 仕上げ材・厚み・貼付方法によっては認定外になる恐れがあります。メーカーが指定する化粧材・施工要領に従い、事前に承認を取りましょう。

Q. のぞき穴やドアガードを後付けできますか?

A. 原則不可。穴あけや金物追加は認定の前提を崩します。必要な場合はメーカーのオプション設定・認定範囲で手配します。

Q. 扉だけ交換してもいい?枠はそのまま使える?

A. 多くの認定は「枠+扉+金物のセット」で性能が成立します。扉のみ交換は適合しない場合があるため、型式一致の一式交換が基本です。

代表的なメーカー(例)

防火扉は「認定が命」です。以下のような大手メーカーが、非住宅・住宅向けの防火ドアをラインアップしています。製品ごとに認定条件が異なるため、必ず最新カタログと認定書を確認してください。

  • 文化シヤッター株式会社:金属建具・防火設備の大手。防火ドア、防火シャッター等を幅広く展開。
  • 三和シャッター工業株式会社:防火設備全般を国内で広く供給。現場支援体制も整備。
  • YKK AP株式会社:スチールドアやアルミ建材の総合メーカー。防火戸仕様のドアを各種展開。
  • 株式会社LIXIL:住宅・非住宅の建材総合メーカー。用途別の防火ドアラインアップあり。
  • ナブコシステム株式会社(NABCO):自動ドアの大手。防火仕様の自動ドアを扱う。

メーカーが異なれば、同じ「防火扉」でも納まり・金物構成・シールの指定が異なります。混載せず、仕様統一が基本です。

現場で役立つチェックリスト(引渡し前・定期点検の要点)

  • 図面と型式:図面指定(特定防火/防火)と製品の大臣認定が一致しているか
  • 枠:レベル・通り・対角寸法、アンカー固定、モルタル充填の有無
  • 扉:反り・歪みなし、面内ガタつきなし、表面傷の補修
  • 金物:番手・型番一致、ビス増し締め、ラッチ・クローザーの調整完了
  • シール:スモークシールの連続性、角部の納まり、剥離なし
  • 隙間:三方・下端のクリアランスが認定範囲内
  • 連動:電磁開放の復帰、感知器発報による自動閉鎖の確認
  • 周囲:可燃物の取り付けなし、枠周りの防火シール・見切りの仕上げ良好
  • 表示:避難誘導サイン、使用上の注意ラベルの掲示
  • 記録:調整値・試験結果を写真付きで残し、認定書とセットで保管

用語ミニ辞典(初心者向け)

  • 大臣認定:国土交通大臣が性能を認めた証明。製品・型式ごとに交付され、施工・使用条件が詳細に記載。
  • 自閉装置:扉を自動で閉める金物(ドアクローザー、フロアヒンジなど)。防火扉では必須。
  • スモークシール:扉と枠の隙間を煙が抜けにくくするシール材。熱で膨張するタイプもある。
  • 竪穴区画:階段室やエレベーターホール等、上下階へ火煙が広がりやすい部分を区画する考え方。
  • 防火区画:火災の延焼を一定範囲に留めるための区画。開口部は防火設備で塞ぐ。

トラブル事例と対処のコツ

床仕上げ変更でアンダーカット不足

対応:仕上げ厚み変更時は早期に共有。扉下の見切り・丁番位置・クローザー設定で吸収できるか確認。難しければ型式の再選定も検討。

気圧差で最後まで閉まらない

対応:クローザーのラッチング強化、戸当たりの摩擦低減、空調の風量調整。根本は空調との調整がポイント。

引渡し後に勝手口的に常時開放される

対応:使用者へ「防火扉の目的」と禁止事項を説明。必要なら電磁式開放+連動に改修提案。掲示で注意喚起。

まとめ(今日から現場で役立つポイント)

防火扉は「出入りしやすく」「いざという時は確実に閉まる」ことが使命です。その性能は、製品そのものだけでなく、正しい取り付けと適切な点検で初めて発揮されます。現場では、図面指定と大臣認定の一致、枠の精度、金物・シールの認定準拠、常時開放の扱い、連動試験の実施を徹底しましょう。困ったときは、認定書とメーカー技術資料に立ち返るのが鉄則です。この記事が、現場でのコミュニケーションや段取り、品質確保の一助になれば幸いです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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