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ダクトファンとは?現場で役立つ選び方・使い方・安全対策ガイド

ダクトファン入門:内装現場で迷わないための基礎知識・選び方・安全運用

「ダクトファンって換気扇と何が違うの?」「どのサイズを選べばいいの?」——初めて現場に入ると、先輩から当然のように飛んでくる現場ワードに戸惑いますよね。この記事では、内装工事の現場で頻出する「ダクトファン」を、プロ視点でわかりやすく整理。意味・使い方・選定のコツ・安全対策まで、今日から実務で役立つ内容だけを厳選して解説します。読み終えるころには、ダクトファンの手配やセッティングで迷わなくなります。

現場ワード(ダクトファン)

読み仮名だくとふぁん
英語表記duct fan(inline duct fan)

定義

ダクトファンとは、ダクト(フレキシブルホースや金属ダクト)に接続し、空気を送ったり排出したりする送風機の総称です。内装現場では、貼り物の溶剤臭や粉じんの排気、地下や閉鎖空間への送気、養生した室内の陰圧化など、仮設換気に使う可搬型の送排風機を指すことが多いです。一方、設備として天井内に据え付ける「ダクト用換気扇(インラインファン)」も広義のダクトファンに含まれます。

現場での使い方

言い回し・別称

現場ではさまざまな呼び方を耳にします。意味は近いですが、ニュアンスで用途が分かれることもあります。

  • ダクトファン/ダクト用送排風機:可搬型の総称
  • ベンチレーター:可搬型の送排風機を指す口語(英語のventilator由来)
  • インラインファン/ダクト用換気扇:天井内などダクト途中に組み込む設備機器
  • 送風機・排風機:用途を強調した呼び方(送気or排気)
  • ボックスファン:消音ケースに入った箱形タイプ

使用例(会話のテンプレ3つ)

  • 「今日は溶剤使うから、φ200のダクトファンで排気、外部に10m伸ばしておいて。」
  • 「粉じん多いから、吸い込み側に簡易フィルタ噛ませて。静圧足りないなら曲げ減らして。」
  • 「この部屋は陰圧キープね。隙間養生して、排気はサッシ下から外へ逃がして。」

使う場面・工程

  • 既存床材の撤去・接着剤作業:溶剤臭の排気・希釈換気
  • 墨出し・コア抜き・はつり:粉じんの排気(集じん機と併用)
  • 塗装・防水下地・FRP作業:可燃性蒸気の希釈換気(防爆型の検討)
  • 地下・機械室・シャフト:酸欠・熱こもり対策の送気
  • アスベスト等の作業区画外:陰圧装置の補助的排気(義務装置の代替ではなく補助)

関連語

  • 風量(m³/h、CFM)/静圧(Pa):選定の基本性能
  • ダクト径(φ):100、150、200、250、300mmなど
  • ダクト抵抗:長さ・曲げ数による圧力損失
  • 送排風・陰圧・希釈換気・局所排気・逆流防止
  • 集じん機・HEPAフィルタ・サイレンサー(消音器)・逆止ダンパ

ダクトファンの種類と特徴

構造で分ける

  • 軸流型(プロペラファン):軽量で大風量。静圧は低め。可搬型ベンチレーターに多い。
  • 遠心型(シロッコ/ターボ):静圧を稼げる。長いダクト・曲げが多い配管向け。ボックスファンやインラインに多い。

設置方法で分ける

  • 可搬型(仮設):ダクトをワンタッチで着脱。内装現場の仮設換気で主流。
  • 据え付け型(設備):天井内や機械室に設置しダクトに接続。建物設備の常用換気。

電源・仕様で分ける

  • AC100V/200V:現場の電源事情に合わせる。大風量や静圧が必要なら200Vが有利。
  • 防爆仕様:可燃性溶剤・粉じん雰囲気では必須検討。通常品の使用は厳禁。
  • 低騒音型:周辺環境や夜間作業で有効。消音ボックスやサイレンサー併用。

選び方のコツ(失敗しない三要素)

1. 必要風量の目安

簡易には「必要換気回数 × 室容積(m³) = 必要風量(m³/h)」で概算します。臭気・溶剤作業の希釈換気なら10〜20回/hを目安、粉じんが多いならさらに上乗せ。例えば30m²・天井高2.6m(容積78m³)の室を15回/hなら、約1,170m³/hが目安です。

2. 静圧(ダクト抵抗)に余裕

ダクトが長い、曲げが多い、フィルタ併用などは圧力損失が増え、カタログ風量が出ません。曲げは極力大きなRで少なく、長さも短く。選定は余裕を見て、性能曲線の「実使用点」で確認しましょう。

3. ダクト径と接続互換

よく使う可搬型はφ200やφ250が万能。既存のフレキ、窓パネル、養生開口のサイズと合わせ、異径アダプタの有無も確認。機器側の吐出・吸込口径が合っていないと性能が落ちます。

セッティング手順と現場のコツ

基本手順

  • 排気先を決める:第三者に風が当たらない安全な屋外へ。臭気の戻りに注意。
  • ダクト取り回し:極力まっすぐ。曲げはゆるく。踏まれる箇所は養生。
  • 接続:バンドで確実に固定。漏れ箇所は養生テープでシール。
  • 吸込側の離隔:壁や養生から距離を取り、吸い込み口を塞がない。
  • 運転確認:風向矢印と回転方向、異音・振動、風量感をチェック。

よく効く小ワザ

  • 陰圧化:吸気はドア下や開口から自然流入、排気はダクトファンで外へ。隙間は適度に残す。
  • 臭気の戻り対策:排気先を風下にし、開口部から離す。逆止ダンパやサイレンサーで逆流・騒音を軽減。
  • 粉じん低減:吸込側に簡易プレフィルタ(不織布)をかませて羽根汚れを抑える。

安全対策(必ず押さえるポイント)

  • 防爆要件:有機溶剤・可燃性蒸気・可燃性粉じんの恐れがある場合、非防爆機器は使わない。防爆仕様の検討と管理者への事前確認が必須。
  • 電源:ドラムリールは必ず全長引き出し。過熱防止。漏電遮断器の有無を確認。
  • 騒音・飛散:吸込側に異物吸い込み防止のネット、吐出側は人通り・近隣への配慮。
  • 固定:高所や通路近くでは転倒・落下防止の固定。ケーブルは段差プレートで養生。
  • PPE:粉じんや臭気作業では防じんマスク、保護眼鏡、耳栓を適切に使用。
  • 法令:有機溶剤、有害物、粉じん、石綿等の作業は関連法規(有機則・粉じん則・石綿則など)に従い、必要設備(例:負圧除じん装置)を必ず使用。

メンテナンスと保管

  • 清掃:羽根・ケーシングの粉じん付着は風量低下と振動の原因。定期拭き取り。
  • 点検:異音・発熱・振動・電源プラグの緩み、フレキの破れを確認。
  • フィルタ:併用時は目詰まりチェック。負荷増でブレーカーが落ちる原因になります。
  • 保管:乾燥状態で保管。ダクトは無理に折り曲げず、潰さない。

トラブルと対処法

  • 風量が出ない:吸込口が塞がれていないか、ダクトが長すぎ・曲げ過多・潰れがないか確認。フィルタ目詰まりも点検。
  • ブレーカーが落ちる:過負荷・延長コードの容量不足・ドラム未展開の熱。別回路使用や機器容量の見直し。
  • 異音・振動:異物混入や羽根汚れ、設置面の共振。停止して清掃・再固定。
  • 臭気が戻る:排気先の位置見直し、逆止ダンパ・サイレンサー追加、開口の圧力バランス調整。

代表的なメーカーと特徴

以下は日本の現場で入手しやすい、または採用実績のある代表例です。

  • Panasonic(パナソニック):天井埋込形のダクト用換気扇でラインアップが豊富。住宅〜非住宅まで幅広い。
  • 三菱電機:ダクト用換気扇の定番ブランド。静音性や省エネ性に強み。
  • テラル(TERAL):業務用送風機・インラインファンを幅広く展開。静圧の高い機種も充実。
  • 荏原製作所(EBARA):産業用送風機の大手。大容量や特殊仕様に強み。
  • スイデン(Suiden):可搬型の送排風機・ベンチレーターで現場実績多数。ダクトやアクセサリも入手容易。
  • 日動工業:ポータブルベンチレーターや延長コード等、仮設電源まわりと合わせて手配しやすい。
  • TRUSCO(トラスコ中山):プロツールの定番。自社ブランド含め、ダクト・異径アダプタ・アクセサリの品揃えが豊富。

サイズ・性能の目安(実務感覚)

  • 可搬型(軸流):φ200〜φ300で1,000〜3,000m³/h程度。短〜中距離の排気・送気に。
  • ボックス/遠心:同等口径でも静圧に余裕。ダクト長が10mを超える、曲げが多い場合に有利。
  • 住宅系ダクト用換気扇:ダクト径100〜150mmが一般的。小部屋の常時換気・局所換気に。

チェックリスト(現場投入前に)

  • 用途確認:送気か排気か、希釈換気か陰圧か、防爆要件の有無
  • 必要風量・静圧:室容積、換気回数、ダクト長・曲げ数、フィルタ有無
  • 口径・接続:φサイズ、異径アダプタ、バンド・テープ、逆止ダンパ
  • 電源:電圧・容量、ドラムリール、漏電遮断器、夜間騒音対策
  • 排気先・安全:第三者養生、戻り臭対策、ケーブル養生、固定方法

ミニ用語辞典(覚えておくと会話が楽)

  • 静圧(Pa):ダクト内で押し進める力。長い・曲がるほど必要。
  • 風量(m³/h):1時間あたりの空気量。ニオイや粉じんの薄め・排出の指標。
  • 陰圧:室内が外より低圧になる状態。臭気・粉じんの外部漏れを防ぎやすい。
  • サイレンサー:ダクトの騒音を減らす部材。
  • 逆止ダンパ:逆流を防ぐ弁。停止時の戻り臭対策にも有効。

よくある質問(Q&A)

Q. 何φを用意しておけば無難?

可搬型ならφ200が汎用。広い室や長い配管が想定されるならφ250以上も候補に。既存のフレキや窓パネルのサイズと合わせて選びましょう。

Q. 送気と排気、どっちがいい?

臭気・粉じんを外へ出したい場合は基本「排気主導(陰圧化)」。送気は作業者の快適性向上に有効ですが、汚れを拡散させないよう排気とセットで運用します。

Q. 防爆型が必要かどうかの判断は?

有機溶剤(トルエン、キシレン等)や可燃性粉じんの可能性があるなら、現場責任者・安全衛生担当と協議して防爆要件を確認。迷ったら通常品の使用は避けるのが原則です。

Q. 風量が足りない時、すぐ買い替えるべき?

まずは取り回し改善(短く・まっすぐ・曲げ削減)、吸込口の確保、フィルタ清掃。改善が難しければ静圧の高い機種や口径アップを検討します。

現場でそのまま使えるフレーズ集

  • 「吸込側ふさがってる。離隔取って、ネット入れて。」
  • 「曲げ多すぎるからR大きくして一本減らそう。」
  • 「ドラム出し切って。熱持つと落ちるよ。」
  • 「排気先ずらして、戻り臭が出ない位置に。」
  • 「今日は陰圧で運用、出入口は片側だけ開けて。」

まとめ

ダクトファンは「風量・静圧・口径」を押さえて選び、「取り回し・排気先・安全」を丁寧に管理すれば、内装現場の快適性と生産性が大きく向上します。難しく見えても、手順はシンプル。用途を明確にし、余裕のあるスペックを選定して、現場に合った運用(陰圧化・希釈換気・送気補助)を心がけましょう。今日からは自信を持って「ダクトファン回しておいて」と指示できるはずです。

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執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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