制御ケーブルの基礎から現場の指示の読み解き方まで:迷わず選べる・間違えないための実践ガイド
「制御ケーブルって何?VVFやLANとどう違うの?」「図面に『CVV 0.75sq×4C』って書いてあるけど、どれを買えばいいの?」——内装や設備の現場に入ると、こんなモヤモヤを抱えがちですよね。この記事では、建設内装の現場でよく飛び交う“制御ケーブル”という言葉の意味から、種類、用途、選び方、そして指示の読み解き方まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。現場ですぐ使えるチェックポイントと、よくある失敗例もあわせて紹介するので、今日から迷いなく手配・施工ができるようになります。
現場ワード(制御ケーブル)
| 読み仮名 | せいぎょけーぶる |
|---|---|
| 英語表記 | control cable |
定義
制御ケーブルとは、機器のオン・オフ指令、接点信号、センサー出力、計装信号など「制御や監視のための低電圧・微小電流の信号」を安全・確実に伝えるケーブルの総称です。照明や動力へ電力を供給する“電力ケーブル(例:VVF)”とは用途が異なり、誤動作を防ぐために芯数(C数)やシールド(遮蔽)の有無、柔軟性、耐熱・難燃性など、信号品質と取り回しに配慮した構造になっているのが特徴です。
基本の種類と型式記号の読み方
制御ケーブルは、外観が似ていても内部構造や用途が異なるため、型式記号で使い分けます。現場でよく見る表記と読み方のポイントを押さえましょう。
- 代表的な型式の例
- CVV:ビニル絶縁・ビニルシースの制御用ケーブル。汎用で広く使われます。
- EM-CEVV/CEVV:環境配慮(エコ)型のビニル系制御ケーブル。建物仕様で指定されることがあります。
- CVV-S(またはS付表記):遮蔽(シールド)付き。ノイズ対策が必要な回路で使用。
- サイズ・芯数の表記例
- 0.5sq/0.75sq/1.25sqなど:導体断面積(太さ)。制御回路は細物〜1.25sq程度がよく使われます。
- 2C/4C/8C/10Cなど:芯数(コア数)。制御信号の本数にあわせて選定。
- ×(かける)表記:例「CVV 0.75sq×4C」=CVVの0.75平方ミリ、4芯。
- その他の仕様
- 柔軟(ソフト)タイプ:可とう性が高く、機器接続や盤内配線に扱いやすい。
- 遮蔽(シールド):編組やアルミラップなど。外来ノイズやクロストーク対策として使用。
- ツイストペア:対ノイズ性を高めるため、2本1組で撚ってある構造。
注意:型式記号や細かな表記はメーカー・規格で揺れがあるため、必ず図面・仕様書とメーカーのカタログを確認してください。
用途と内装現場での具体例
制御ケーブルは、空調・衛生・電気設備のさまざまな「制御・監視」回路で使われます。内装の現場でよく出る場面を挙げます。
- 空調設備の制御
- 空調機(AHU/FCU)の運転・停止信号、異常信号の受け渡し
- 温湿度センサー、差圧スイッチの信号配線
- モーター弁、ダンパー(開閉器・アクチュエーター)の制御
- 中央監視・BAS(ビル自動化)
- 機械室の制御盤から各機器・フロアの端末へ多芯ケーブルで配線
- 監視点数が多い系統では8C/10Cなど多芯ケーブルを採用
- 照明制御・リレー制御
- スケジュール制御やセンサー連動の信号線
- 人感・明るさセンサー、押しボタンスイッチの接点配線
- 警報・監視回路(仕様による)
- 設備異常のパトライト・ブザー駆動用接点信号
- 水漏れ検知テープからの信号ライン(専用ケーブル指定の場合あり)
電力を供給する「強電」(例:コンセントや照明主回路)とは別物です。誤ってVVF等で代用したり、逆に制御ケーブルで電力回路を担わせたりしないように、用途の違いを明確にしましょう。
選び方の手順(迷わないための実務フロー)
制御ケーブルの選定は「仕様確認→系統の把握→条件整理→型式決定」の順で進めると迷いません。
- 1. 図面・仕様書を確認
- 図面の凡例・配線表・ケーブル表をチェック(例:「CVV 0.75sq×4C」等)。
- 難燃・環境配慮・遮蔽の要否、色分けルール、端末処理の指定を確認。
- 2. 信号・点数の把握
- 必要な回路数(接点の数、センサー数)を数え、芯数に反映。
- 将来増設が想定される場合は、予備芯を1~2対(または数芯)見込むことが多い。
- 3. 外来条件の整理
- ノイズ源(インバータ、動力ケーブル、発電機等)との近接が避けられない → 遮蔽付を検討。
- 屈曲・可動部がある → 柔軟タイプを検討。
- 天井内・シャフト・盤内など、敷設環境に合わせて難燃・耐油・耐熱の要件を仕様書で確認。
- 4. 導体サイズの決定
- 制御回路の消費電流・距離・許容電圧降下などを総合し、0.5/0.75/1.25sq程度から選ぶのが一般的。
- 盤メーカー推奨や機器取説の指定がある場合はそれを優先。
- 5. 最終決定
- 型式(例:EM-CEVV、CVV-S)× 導体サイズ × 芯数 で発注名を確定。
- 色・識別、端末(フェルール、圧着端子、シールドの接地方法)まで決めると手戻りが減ります。
施工のポイント(不具合とクレームを防ぐコツ)
- 信号品質の確保
- 動力ケーブルとの長距離並走は避ける。交差は直角で短く。
- 遮蔽付を使う場合、シールドの接地方法(片側接地か両側か)は仕様・機器メーカー指示に従う。
- 敷設・固定
- 過度な引張・ねじれ・急曲げは避け、メーカー推奨の最小曲げ半径を守る。
- 天井裏・ラック・ダクト内は、沿わせ方と固定ピッチを整えて、他線と区分・結束する。
- 識別と端末処理
- 芯線の色・番号を台帳化し、両端でラベル表示。盤内端子台の表示と一致させる。
- 端末は指示に合わせて、圧着スリーブ・フェルール端子・Y形端子などを適正工具で施工。
- 試験・引き渡し
- 導通・結線チェック、誤配線の有無を相手側と相互確認。
- 必要に応じて絶縁抵抗測定(メガー)やノイズ確認を実施し、記録を残す。
- 安全・資格
- 制御回路でも、工事の内容によっては電気工事士の資格が必要になる場合があります。元請・電気工事会社・管理者の指示と法令に従ってください。
現場での使い方
言い回し・別称
- 制御ケーブル/制御線:最も一般的な呼び方。
- コントロールケーブル:英語表記の直訳で現場でも通じます。
- CVV(シーブイビー):型式で呼ぶことも多い。遮蔽付は「CVVエス」と呼ばれることも。
- 信号線:広い意味での総称。通信ケーブルと混同しないよう注意。
使用例(3つ)
- 「このダンパー用にCVV 0.75の4心で1本、盤まで引いといて。予備で2芯余らせてOK」
- 「インバータの横通るから、ここだけ遮蔽付(CVV-S)に切り替えよう。シールドは盤側片側接地で」
- 「中央監視のI/O増設あるから、10C1条追加。色分けは図面の結線表に合わせて」
使う場面・工程
- 配線ルートの現調:ノイズ源・可動部・貫通部の確認。
- ケーブル手配:型式・sq・芯数・長さ・端末アクセサリ(端子・フェルール・ラベル)。
- 敷設・固定:ラック・天井上・床下・管内通線、引張管理、結束、表示。
- 結線・試験:端末処理、導通・極性・シールド接地確認、成果図反映。
関連語
- VVF(電力ケーブル):電源供給用。制御用途と混同注意。
- 通信用ケーブル/LAN(Cat6など):データ通信系。制御ケーブルとは規格・用途が異なる。
- センサーケーブル:機器メーカー指定の専用品が必要な場合あり。
- 端子台/I/O/シールド/ツイストペア/多芯:制御配線で頻出の用語。
よくある失敗と回避策
- 芯数不足での手戻り
- 原因:増設やリモート表示を見落とし。
- 対策:結線表の最終版で点数を洗い出し、予備芯を確保。
- ノイズでの誤動作
- 原因:動力線と長距離並走、遮蔽なし、シールドの処理ミス。
- 対策:遮蔽付の採用、ルート分離、シールドの正しい接地。
- 端末の識別不備
- 原因:ラベリング漏れ、色分け不統一。
- 対策:ラベルを両端に、図面番号・回路名で管理。色/番号のルールを統一。
- 盤内の取り回し不良
- 原因:余長の団子、最小曲げ半径違反。
- 対策:余長はリング状に整えタイ留め、曲げ半径はメーカー推奨を遵守。
代表的なメーカー例(五十音順)
国内では大手電線メーカー各社から制御ケーブル(CVV系、エコタイプ、遮蔽付など)が幅広く供給されています。以下は現場で流通の多いメーカー例です。
- 沖電線(OKI Electric Cable):機器用・通信・制御ケーブルを広く展開。
- 倉茂電工(KURAMO):制御・ロボット・FA向けなど可とう性の高い製品に強み。
- 古河電気工業(古河電工):電力・通信用から制御用まで総合的に供給。
- 昭和電線(SWCC):建築・産業向けの各種電線をラインアップ。
- フジクラ:通信・電子・産業用ケーブルで実績多数。
- 住友電工(住友電気工業):各種電線・ケーブルを総合展開。
同じ「CVV」でも、柔軟性やシース材、遮蔽構造、環境配慮仕様などの違いがあるため、図面指定とカタログスペックの整合を必ず確認しましょう。
チェックリスト(発注前・施工前に確認)
- 図面・仕様書の型式指定(例:EM-CEVV、CVV-S)を確認した。
- 導体サイズ(sq)と芯数(C)、必要本数・長さを積算した。
- 遮蔽の要否、柔軟タイプの要否、難燃・耐油などの条件を確認した。
- 端末アクセサリ(端子、フェルール、グランド)の選定を終えた。
- 敷設ルートで動力線と分離できる計画になっている。
- ラベル表示のルール(回路名、ケーブル番号)を決めた。
- 試験方法(導通・絶縁)の合意を取った。
用語ミニ辞典:制御ケーブルまわりでよく出る言葉
- 芯(しん)/芯線:ケーブル内部の導体。多芯=多数の信号を1本のケーブルで運べる。
- sq(平方ミリ):導体断面積の単位。太いほど電流に余裕があり、電圧降下にも強い。
- 遮蔽(シールド):外来ノイズの影響を減らすための金属箔・編組。接地処理が要点。
- I/O:入出力。盤やコントローラの入出力端子群を指す。
- 端子台:ケーブルの芯線を接続する台。番号で管理し、図面と一致させる。
通信ケーブル・電力ケーブルとの違い(混同防止)
制御ケーブルは「制御・監視の信号」を主目的にしたケーブルです。データ通信(LAN、光ファイバ等)は通信規格に適合した専用品、電力供給は電力用ケーブル(例:VVF)を使用します。同じ“信号を伝える”でも、規格・許容電流・インピーダンス・ノイズ耐性が異なるため、互換的な代用は避け、用途に合ったケーブルを選びましょう。
FAQ(よくある質問)
制御ケーブルはどの太さを選べばいい?
機器の仕様・回路の電流値・配線距離で決まります。制御回路では0.5~1.25sq程度がよく使われますが、最終的には図面・機器取説の指定を優先してください。
遮蔽(シールド)は必ず必要?
常に必須ではありません。インバータや大電流動力線と近接するなどノイズリスクがある場合や、仕様書に指示がある場合に採用します。シールドの接地方法は機器の推奨に従いましょう。
色分けやラベルはどこまでやる?
両端の端末部でケーブル番号・回路名・芯番号が読み取れることが大切です。現場・発注者のルールに合わせ、成果図と一致する表示を徹底してください。
内装業者でも配線してよい?
制御回路でも、工事の内容によっては電気工事士の資格が必要となる場合があります。元請・電気工事会社の指示と法令に従い、資格者が必要な範囲は適切に手配しましょう。
小ワザ・実践メモ(現場で効く)
- 多芯ケーブルは端末で「どの芯を何に使ったか」を写真・台帳で残すとトラブル時に早い。
- 余長は小さく折り返さず、大きめの輪でまとめると心線に優しい。
- ノイズが気になるルートは、短い区間だけでも遮蔽付に切替える判断が有効な場合あり(要承認)。
- 盤側で片側接地を採用する指示が多いが、必ず仕様を確認して統一する。
- 第三者が見ても分かるケーブル番号表示にしておくと、改修・点検が格段に速い。
まとめ:制御ケーブル選定の要点
制御ケーブルは「何の信号を、どこからどこへ、どれくらいの品質で届けるか」を具体化したものです。型式(CVV・エコタイプ・遮蔽付など)、導体サイズ、芯数、敷設環境、端末処理、ラベリングまでを一気通貫で整えれば、誤動作・手戻り・検査不合格を防げます。迷ったときは図面と仕様書、機器取説、メーカー資料を優先し、現場の状況(ノイズ源・ルート・可とう性)を丁寧に見直しましょう。今日の現場から、正しく選んで、きれいに仕上げる——それが信頼される内装・設備の仕事につながります。









