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遮光カーテンとは?現場での役割・選び方・施工ポイント徹底解説

遮光カーテンを現場目線でやさしく解説—意味・選び方・施工のコツ

「遮光カーテンって、普通のカーテンと何が違うの?」「ホテルみたいに朝日が漏れないようにするには、どう選べばいい?」――内装の現場でよく飛び交うこのワード、初めてだと少しとっつきにくいですよね。この記事では、建設内装のプロの視点で、遮光カーテンの基本から現場での使い方、選定・採寸・施工のポイントまでをやさしく解説します。読み終えるころには、仕様打合せや見積・発注、取付チェックまで自信をもって対応できるはずです。

現場ワード(キーワード)

読み仮名しゃこうカーテン
英語表記Blackout Curtain

定義

遮光カーテンとは、外光の侵入を大きく抑えることを目的に作られたドレープ(厚地)カーテンの総称です。生地自体に光を通しにくい糸を織り込んだり、裏面にコーティングを施したり、裏地を重ねたりすることで高い遮光性を確保します。ホテル客室、寝室、AVルーム、病室、写真スタジオ、会議室など、明るさの制御やプライバシーが重要な空間で採用されます。

現場での使い方

言い回し・別称

現場では次のように呼ばれることが多いです。

  • 遮光ドレープ(「ドレープ=厚地カーテン」の遮光タイプという意味)
  • 暗幕(特にスタジオ・舞台・写真向けのより強い遮光を指すことが多い)
  • 遮光裏地付き(通常生地に遮光裏地を縫い合わせた仕様)
  • 1級遮光・2級遮光などの等級呼称

使用例(会話イメージ・3つ)

  • 「客室は1級遮光で。ボックス内天付け、サイドはリターン付けて光漏れ止めましょう。」
  • 「会議室はプロジェクター使うので、2級以上が推奨。中央はマグネットランナーも追加で。」
  • 「寝室で南面が強いので、裏地を遮光に変えて二重仕立て。裾にウェイト入れて落ち感出します。」

使う場面・工程

使われるシーンは、ホテル・宿泊、医療・福祉施設、学校・ホール、オフィス会議室・集中ブース、住居の寝室・子ども部屋など。工程は以下の流れが基本です。

  • 仕様打合せ:遮光等級、防炎の要否、色・素材、縫製仕様(ヒダ、リターン、裏地有無)を決定
  • 現地採寸:レール位置・下地・窓形状確認、寸法計測、光漏れ対策の可否確認
  • 発注:等級・生地番号・縫製仕様・フック仕様(A/B)・開き方・仕上がりサイズを明確化
  • 取付:レール・ブラケット固定、カーテン吊り込み、動作と光漏れのチェック
  • 検収:防炎ラベルの有無、等級・寸法・縫製・光漏れと開閉性を確認

関連語

  • ドレープ/レース(厚地/薄地)
  • 遮光等級(1級・2級・3級)
  • 防炎ラベル(消防法に基づく防炎性能表示)
  • カーテンボックス/リターン金具/マグネットランナー
  • Aフック・Bフック(見た目と隙間に影響)
  • 1.5倍ヒダ・2倍ヒダ(ボリュームとドレープ性)
  • 遮熱・断熱(付随性能として期待されることが多い)

遮光等級の考え方と選び方

流通上は一般に1級・2級・3級の遮光等級が用いられます。数値の表し方や試験の方法はメーカーにより表記に差がありますが、目安は次の通りです。

  • 1級遮光:ほぼ光を通さず、昼間でも室内がかなり暗くなります。寝室、ホテル客室、映像ルームに適します。
  • 2級遮光:明るさをしっかり抑え、薄暗くします。会議室や教室、住居の寝室で「真っ暗すぎない」環境に。
  • 3級遮光:まぶしさを軽減し、視線もある程度遮ります。リビングやワークスペースなどバランス重視に。

注意点として、どの等級でも「縫製や取付の隙間」があると光漏れが起きます。等級は「生地の遮光性」の目安であり、暗さの体感は設置方法や窓条件にも左右されます。

素材・構造の違い(特徴とメリット・注意点)

遮光カーテンの代表的な作り方は次の3タイプです。

  • 練り込み(織り)タイプ:生地の中に黒糸等を挟み込む三層織り等。風合いが柔らかく、ひび割れが少ないのが利点。濃色ほど遮光性が上がることが多い。
  • コーティングタイプ:裏面に樹脂コーティング。高い遮光性を得やすいが、折れ筋の白化や経年での剥離・ベタつきに注意。直射日光・高温多湿環境では寿命が短くなる場合あり。
  • 裏地(二重仕立て)タイプ:表生地+遮光裏地。意匠性をキープしながら遮光性と断熱性を高められる。重量は増えるためレールの耐荷重に注意。

共通の留意点として、用途により防炎性能が求められることがあります。ホテルや病院、学校、飲食店などの多くの施設では、防炎性能を有し防炎ラベルが付与された製品を選定します。仕様書と法令要件を必ず確認しましょう。

採寸と発注のポイント(現場で迷わないために)

フックと丈の基準

  • 採寸基準は「レールのランナー芯(芯地)」から。Aフックはレールが見える納まり、Bフックはレールを隠す納まりです。
  • 丈の目安:掃き出し窓は「ランナー芯〜床」から-1cm程度。腰窓は「窓枠下端+15〜20cm」または思い切って床まで垂らすと遮光性が上がります。

幅とヒダの考え方

  • 仕上がり幅はレール有効幅に対して、縫製仕様(1.5倍ヒダ・2倍ヒダ等)でボリュームを確保。ボリュームが少ないと生地の重なりが浅くなり、光漏れの原因になります。
  • 両開きの場合は片側の仕上がり幅を指定し、中央の重なり(オーバーラップ)を忘れずに。中央の合わせにはマグネットランナーが有効です。

光漏れ対策を前提にした寸法・仕様

  • 上部:カーテンボックス内に天付けが理想。ボックスがない場合はBフック+正面付けでレール上の隙間を小さく。
  • サイド:リターン(側面折り返し)縫製+リターン金具で壁面に密着。サイドを壁に沿わせるほど光が回り込みにくい。
  • 中央:マグネットランナー、もしくは重なり量を多めに指定。
  • 裾:ウェイトバーや形態安定加工で落ち感を出すと生地が暴れにくく、隙間も軽減。

光漏れを減らすディテール集

  • カーテンボックス:見栄えと遮光性の両立。天付けで上からの漏れをカット。
  • リターン金具+リターン縫製:サイドからの回り込み光を抑える定番。
  • マグネットランナー:中央合わせの浮きを防ぎ、映像投影の環境を安定。
  • サイドマグネット・面ファスナー:スタジオや暗幕用途でさらに徹底。
  • レール選定:天井埋込レールや意匠レールでも、遮光重視ならランナー構造と耐荷重を確認。

施工手順と現場チェックリスト

基本手順

  • 下地確認:木下地/軽鉄/コンクリなど。アンカーやビスの選定を適切に。
  • ブラケット位置出し:水平器でレベル出し。両端+中間に均等配置し、たわみを防止。
  • レール取付:規定トルクで固定、ランナー個数を確認。
  • カーテン吊り込み:フックの高さ調整(A/Bフック)、ヒダ山を整える。
  • 動作確認:スムーズな開閉、引き代、中央重なり、端部の干渉をチェック。

チェックリスト

  • 等級・色番・縫製仕様が発注通りか(検収票・ラベル確認)
  • 防炎ラベルの有無(必要用途では必須)
  • 上部・サイド・中央の光漏れの有無(昼間に実光で確認)
  • 床擦り・寸足らずがないか(丈の見直し)
  • 開閉の軽さ・引っ掛かりなし・音鳴りなし
  • 外周仕上げ(ほつれ・うねり・歪み)が許容範囲か

用途別の選び方(失敗しない実例)

  • ホテル・宿泊:1級遮光+防炎はほぼ標準。ボックス天付け、サイドリターン、マグネットランナーで徹底的に光漏れ対策。
  • オフィス会議室・研修室:2級以上。日中の投影を想定し、中央合わせとサイド対策を確実に。色はダークグレーなど映り込みが少ない中間濃色が無難。
  • 医療・福祉:防炎は必須。病室や検査室は1〜2級、共用部は3級など場所により使い分け。抗菌・消臭・防汚加工が選択肢に。
  • 住居の寝室:1級が人気。朝の光に敏感でなければ2級も快適。裏地(二重)で断熱・保温性もアップ。
  • スタジオ・写真・舞台:暗幕相当の高遮光+サイド固定。光漏れチェックを厳しめに。

メンテナンスと耐久性

  • 洗濯表示を確認(家庭洗濯可・ドライ限定など)。コーティング生地は摩擦・折り癖に注意。
  • 定期の埃払いでカビ・臭いを予防。結露が多い窓は除湿・換気を心がける。
  • 直射の強い窓は経年劣化が早まりやすい。数年単位でのリニューアル計画が現実的。
  • フック・ランナーは消耗部品。開閉が重い時は早めに交換。

代表的メーカー・ブランド(現場でよく登場)

  • TOSO(トーソー):カーテンレールや関連金具の大手。各種レール・ブラケット・ランナーのラインアップが豊富。
  • タチカワブラインド:レール・ブラインド・ロールスクリーンなど窓まわり製品全般に強み。
  • ニチベイ:ブラインドやスクリーンの大手。レールやメカ類も多数展開。
  • 川島織物セルコン:カーテンファブリックの老舗。意匠性が高く、遮光生地のバリエーションも豊富。
  • サンゲツ:総合内装材メーカー。カーテン・壁紙・床材までトータルで提案可能。
  • リリカラ/シンコール/東リ:内装材の総合メーカー。遮光カーテン生地、防炎対応品の選択肢が広い。

メーカーにより遮光等級の表記や試験方法、縫製仕様の標準が異なるため、カタログ・仕様書で必ず確認しましょう。

ロールスクリーンやブラインドとの比較(どれを選ぶ?)

  • 遮光ロールスクリーン:面で遮るため隙間が少なく、窓枠内に納めれば見た目すっきり。上下の光漏れはカーテンより抑えやすいが、サイドのスリットは残る。
  • ブラインド(アルミ):遮光性は限定的。光のコントロールは得意だが、完全暗室には不向き。
  • カーテン:生地・色・質感の自由度が高く、断熱・吸音も多少期待できる。ディテール次第で遮光性能を伸ばせるのが強み。

「完全な暗室」が最優先であれば暗幕+補助遮光(サイドガイド等)、「雰囲気+遮光」のバランスなら遮光カーテンがおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 1級遮光なら完全に真っ暗になりますか?

生地自体は非常に暗くできますが、取付条件(上部・サイド・中央の隙間)や窓のサイズ・方位で光漏れは起こり得ます。ボックス天付け、リターン、マグネットランナーなどのディテールで対策しましょう。

Q2. 寝室には何級が良い?

「朝日で起きたくない」「夜勤明けで昼に眠る」なら1級、「真っ暗すぎるのは苦手」なら2級が目安。居住者の好みとライフスタイルに合わせて選定してください。

Q3. 賃貸でも取付できますか?

既存レールがあれば、カーテン交換だけでOK。レール新設やボックス増設は管理規約の確認が必要です。原状回復を考えるなら、ビス穴を最小限に抑える金具や突っ張り式は要検討(耐荷重には注意)。

Q4. 濃い色のほうが遮光性は高い?

同仕様なら濃色のほうが遮光性が高い傾向はありますが、織り・コーティング・裏地の有無など構造の影響が大きいです。等級と実物サンプル(実光での確認)で判断しましょう。

Q5. 防炎は必ず必要?

ホテル、病院、学校、劇場、飲食店など、多くの施設用途では防炎性能が求められます。物件の用途・規模に応じた法令要件を確認し、防炎ラベルの付いた製品を選びましょう。

現場で役立つミニTIPS

  • 採寸は昼間の明るい時間に。実環境の光で漏れ方をイメージできます。
  • レール位置は窓より高め・広めに設定すると回り込み光を抑制しやすい。
  • 重い二重仕立てはランナー・レールの耐荷重を必ず確認。ブラケットを増やすのも有効。
  • 仕上がり後の写真撮影は、光漏れの有無が分かるようにカーテン周囲も写すと品質記録に便利。

まとめ:遮光カーテンは「生地選定×納まり」で決まる

遮光カーテンは単に「濃い色の厚地カーテン」ではありません。等級・素材・縫製仕様を目的に合わせて選び、取付時の納まり(ボックス、リターン、中央処理)を丁寧に詰めることで、はじめて満足いく暗さと快適性が得られます。現場では「防炎の要否」「採寸基準(ランナー芯)」「光漏れディテール」の3点を合言葉に、仕様書とサンプルで確認を重ねましょう。迷ったときは、標準を1級遮光+リターン+マグネットランナーに設定し、用途ごとに微調整するのが実務的です。この記事が、発注・施工・検収の不安を解消し、現場でのコミュニケーションをスムーズにする一助になれば幸いです。