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刷毛塗装の基本とプロが教える失敗しないコツ5選【現場ワード完全解説】

現場で通じる「刷毛塗装」入門:意味・使い方・道具・手順まで丸わかり

「刷毛塗装って、ローラー塗装と何が違うの?」「ダメ込みってどういう意味?」――内装の現場で飛び交うワードは、初めてだと戸惑いやすいですよね。本記事では、建設内装の現場でよく使われる現場ワード「刷毛塗装」について、プロの視点でやさしく、ていねいに解説します。読み終えるころには、現場での使いどころや必要な道具、作業の流れ、失敗しないコツまで具体的にイメージできるはず。今日から恥をかかない言い回しと実践知識を、まとめて身につけましょう。

現場ワード(刷毛塗装)

読み仮名はけとそう
英語表記Brush painting / Brush application

定義

刷毛塗装とは、刷毛(はけ)を使って塗料・保護材・着色材を下地に塗り広げる塗装方法のことです。内装現場では、ローラーや吹付では塗りにくい細部(入隅、出隅、コーナー、サッシまわり、巾木・廻り縁・枠などの取合い)や、仕上げの補修・タッチアップ、木部の着色・オイル仕上げなどで頻繁に用いられます。広い面を主にローラーで仕上げる場合でも、端部の「ダメ込み(先に境界・隅を刷毛で塗っておく作業)」は基本的に刷毛で行います。吹付やローラーと区別されますが、意匠上の理由で全面を刷毛目仕上げにするケースもあります。

現場での使い方

言い回し・別称

刷毛塗装は、現場では次のような言い回し・別称で呼ばれます。

  • はけ塗り/手塗り(ローラー・吹付と区別するとき)
  • ダメ込み(端部・取合い・入隅を先に刷毛で塗る工程)
  • タッチアップ(仕上げ後の部分補修を刷毛で行うこと)
  • 刷り込み(木部や多孔質下地に塗料をよくなじませて塗ること)
  • 刷毛引き(意匠として刷毛の目を残す仕上げ)

使用例(現場での会話イメージ)

  • 「この見切りは先に刷毛でダメ込んで。ローラーはそのあと追っかけて。」
  • 「巾木に飛んでるから、タッチで押さえて。水性だから細めの化繊刷毛で。」
  • 「ローラー目が出たから、端だけ刷毛でなじませてウエットエッジつないで。」

使う場面・工程

  • 内装壁の端部、入隅・出隅、サッシや建具枠の取合いの塗り分け
  • 巾木・廻り縁・枠・見切り材など細幅材の塗装
  • パテ補修部のタッチアップ(色・艶の微調整)
  • 木部の着色、目止め、オイル・ワックスなど含浸系仕上げ
  • テクスチャー意匠の刷毛引き仕上げ

関連語

  • ダメ込み:取合いや隅を先に刷毛で塗る工程。ローラーのはみ出しや塗り残しを防止。
  • タッチアップ:仕上げ後の部分補修。色合わせ・艶合わせを行う。
  • 刷毛目:刷毛の筋跡。意図的に残す場合と、抑える(消す)場合がある。
  • ウエットエッジ:乾く前の塗り端。ここを連続してつなぐことでムラを防ぐ。
  • ケレン:旧塗膜や浮き、汚れを落とす下地調整。ペーパー掛け等。
  • シーラー/プライマー:下地の吸い込み止めや付着向上のための下塗り材。
  • フィラー:段差埋め・肌調整材。パテと合わせて平滑性を確保。
  • ローラー塗装/吹付塗装:刷毛以外の主要塗装方法。適材適所で使い分ける。

刷毛塗装の目的とメリット・デメリット

メリット

  • 細部・取合いへのアクセス性が高く、塗り分けや線出しがしやすい
  • 飛散が少なく、室内や養生が難しい場所でも安全に作業できる
  • 塗り厚や含浸の加減を手でコントロールしやすい(木部の着色・オイルに有効)
  • 補修(タッチアップ)と相性がよい

デメリット

  • 広い面を均一に速く仕上げるのは不向き(作業性はローラーに劣る)
  • 刷毛目が出やすく、ムラ・段差の原因になることがある
  • 道具管理(毛の選定・洗浄・保管)で仕上がりが大きく左右される

必要な道具と代表メーカー

刷毛の種類(選び方の基本)

刷毛は毛材・形状・幅で選びます。塗料との相性が重要です。

  • 毛材の例
    • 化繊(ナイロン・ポリエステルなど):水性塗料と相性がよく、腰があり毛抜けが少ない。
    • 天然毛(豚毛・馬毛など):溶剤系や油性で「含み」が良い。仕上げの伸びが滑らか。
    • 混毛:水性・溶剤の両立やバランスを狙ったタイプ。
  • 形状の例
    • 平刷毛:平面・広めの面に。仕上げの「のび」が出しやすい。
    • 筋違い刷毛(斜めカット):コーナー・見切りの線出しや、巾木のダメ込みに便利。
    • 目地刷毛・角刷毛:入隅・細かい溝・狭所などピンポイントに使う。
  • 幅の目安
    • 10〜20mm:細い見切り、ビス頭のタッチアップ
    • 30〜50mm:枠・巾木・サッシまわりのダメ込み
    • 50〜70mm:広めの平面、木部のオイル仕上げ

代表的な刷毛・塗装用具メーカー(例):

  • 大塚刷毛製造株式会社:刷毛・ローラー・副資材まで幅広く展開する国内大手の塗装用具メーカー。
  • 好川産業株式会社:プロ向けの刷毛・ローラー・養生資材を扱う老舗メーカー。

塗料・仕上げ材の例(内装でよく使うもの)

  • 水性エマルション塗料(内装壁):低臭・速乾で室内向き。刷毛は化繊系が扱いやすい。
  • 水性/油性ウレタン・アクリル(木部・建具):耐久性・耐擦傷性を求めるとき。
  • ステイン(染色)・シェラック・ラッカー(木部の着色・下地調整):広がりやすいので薄く刷り込む。
  • オイル/ワックス(亜麻仁油系などの含浸仕上げ):素材の質感を活かす。ウエスと併用することも多い。

補助ツール

  • マスキングテープ・マスカー・養生シート:はみ出し防止と飛散対策
  • 受け缶・塗料カップ・コーム(刷毛しごき):適量化と毛並みの整え
  • サンドペーパー(#180〜#320など)・ケレン道具:下地調整
  • 刷毛洗い液(水性=水、油性=専用シンナー):道具のメンテナンス
  • コテバケ・ミニローラー:面と端部のなじませ作業に併用

作業手順(室内木部・建具の刷毛塗装)

木部・建具の刷毛塗装は、素材の吸い込みと木目を読むのがポイントです。

  • 1. 下地確認・ケレン
    • 汚れ・油分・ワックスを除去。旧塗膜は密着を確認し、浮きは除去。
    • サンドペーパーで素地調整。木目に沿って#180→#240など段階的に整える。
  • 2. 養生
    • 見切り、床、金物を丁寧にマスキング。テープは塗装面から少し離して平行に。
  • 3. 目止め・シーラー(必要に応じて)
    • 吸い込みが激しいとムラの原因。シーラーやサンディングシーラーで均一化。
  • 4. 着色(必要に応じて)
    • ステインは薄く塗り、すぐに拭き取り。色ムラを避けるため一方向に刷り込む。
  • 5. 上塗り(クリヤーやウレタン等)
    • 刷毛に含ませすぎない。塗り出しは「置いてから引く」。角でダマを作らない。
    • 木目に沿ってのばし、最後は軽く「目を通す」。ウエットエッジを保つ。
  • 6. 乾燥・中間研磨
    • 規定乾燥後、#320程度で軽く足付け。埃を払ってから次層へ。
  • 7. 仕上げ・養生撤去
    • 艶と色を確認。テープは塗膜が軟らかいうちに斜めに引いて剥がすとエッジが綺麗。

作業手順(内装壁・ボード補修部の刷毛塗装)

  • 1. パテ処理
    • 段差をなくし、肌を既存面に合わせる。吸い込みを抑えるため適切に乾燥。
  • 2. シーラー
    • 補修部にだけでも良いが、境界が目立つ場合はブレンドゾーンを広めに。
  • 3. ダメ込み
    • 入隅・見切りを筋違い刷毛で先行。塗り厚はローラーの膜厚に近づける。
  • 4. 面のなじませ
    • ローラーで面を転がし、端部は乾く前に刷毛で軽く「ならす」。
  • 5. タッチアップ
    • 色・艶を合わせ、小面積でぼかす。艶消しは境界が出やすいので特に薄く。

プロの実践テク5

  • 1. 希釈と粘度を朝一で決める:気温・湿度で塗料ののびは変わる。刷毛目が出やすい日はわずかに希釈し、作業スピードに合わせて粘度を調整。
  • 2. 刷毛の「含み」を整える:乾いた新品は毛がはねやすい。試し塗りで馴染ませ、受け缶の縁で軽くしごいて適量化。
  • 3. ウエットエッジを意識:角・端から塗り出し、乾く前に次のストロークを重ねる。途中で休むなら区切れるラインまで。
  • 4. 抜き取りで仕上げる:最後の一引きは軽圧で長く通す。往復せず、戻りストロークは最小限。
  • 5. 道具を分ける:水性用と溶剤用、白系と濃色系で刷毛を分ける。色移り・ダレ防止に直結。

よくある失敗と対処法

  • 刷毛目が目立つ:粘度が高い・塗り重ねすぎが原因。わずかに希釈し、ストロークを長く一定に。中間研磨で整える。
  • タレ・スジ:含ませすぎ、角の溜まり、遅い追っかけが原因。端部は先に薄く、コーナーに溜めない。ウエットエッジを保つ。
  • はじき・密着不良:油分・ワックス残りが原因。脱脂・シーラーの見直しを。
  • 色ムラ(木部):吸い込み差。目止め・試し塗り・拭き取りの徹底。
  • 境界が出る(タッチアップ):艶合わせ不足。艶消しは特に境界を広めにぼかし、薄く重ねる。

ローラー・吹付との比較(使い分けの考え方)

  • ローラー塗装:広い面を均一に速く仕上げたいときの主役。端部は刷毛でダメ込み後、ローラーで本塗り。
  • 吹付塗装:意匠性・肌感を重視、広面積でスピードが必要な場合に有効。ただし飛散管理が必要で内装では制限が多い。
  • 刷毛塗装:細部・見切り・補修・木部の含浸仕上げに最適。全体を刷毛で意匠仕上げにする場合もある。

結論として、内装では「刷毛(細部)+ローラー(面)」の組み合わせが基本。局面の要求品質・環境・工程を踏まえた使い分けが鍵です。

品質・安全管理のポイント

  • 仕様遵守:メーカーの施工仕様書(希釈率、塗布量、乾燥時間)を守る。
  • 環境管理:温度・湿度・換気を確認。低温多湿は乾燥遅延・白化の原因。
  • 養生の精度:マスキングの直線性が仕上がりの印象を決める。剥がすタイミングも重要。
  • 安全衛生:溶剤使用時は火気厳禁・換気徹底。保護手袋・マスク・保護メガネを着用。
  • 廃材処理:刷毛洗い液・シンナーの廃液は法令・自治体ルールに沿って適切に処理。

ミニ用語集(刷毛塗装まわり)

  • 見切り:異なる仕上げ材の境界。直線性・にじみの有無が評価基準。
  • 含み:刷毛が保持できる塗料量。作業性と仕上がりの鍵。
  • 腰(コシ):刷毛の弾力。線出し・押さえのやりやすさに影響。
  • フェザータッチ:外周を薄くぼかすタッチ。タッチアップで境界を消す。
  • ブリード:下地からの色移り。シーラーや専用下塗りで対策。

FAQ(よくある質問)

Q1. 初心者でも刷毛塗装はできますか?

可能です。まずは小面積で練習し、適切な希釈・ストローク・ウエットエッジのつなぎを体感しましょう。水性塗料と化繊刷毛の組み合わせは扱いやすくおすすめです。

Q2. 刷毛はどうやって洗うのが正解?

水性塗料は水でよく揉み洗いし、石けんで仕上げて形を整えて乾燥。油性・溶剤系は塗料メーカーの指定シンナーで洗い、最後は中性洗剤で脱脂してから毛をそろえます。

Q3. 刷毛目を出したくない時のコツは?

わずかな希釈、長めの一方向ストローク、最後の軽い「目通し」、乾燥前の重ね塗り禁止が基本。乾燥が早い環境では作業幅を狭め、ウエットエッジを切らさないことが重要です。

Q4. どの刷毛を選べばいい?

水性は化繊、溶剤は天然毛や混毛が目安。見切り・コーナーは筋違い刷毛、枠・巾木は30〜50mmの平刷毛、タッチアップは細幅を使うと扱いやすいです。

Q5. 壁紙の上に刷毛塗装できる?

壁紙の種類と状態により可否が変わります。一般的なビニルクロスは下地処理と適合する下塗り(シーラー)を用いれば可能なケースがありますが、可塑剤移行や密着の問題が起きやすいため、必ず小面積で試験施工を行い、塗料メーカーの仕様を確認してください。

現場で使えるチェックリスト

  • 下地:汚れ・油分なし/吸い込み均一か
  • 環境:温湿度・換気OK/乾燥時間を確保できるか
  • 道具:塗料と刷毛の相性/幅と形状の選定は適正か
  • 工程:ダメ込み→面の塗装→タッチアップの順序
  • 仕上げ:刷毛目・境界・艶ムラの最終確認

初心者が最初に覚えるべき「ひと言」

現場では、短く正確に伝えることが大切です。以下のひと言が言えると通じやすくなります。

  • 「この見切り、筋違いでダメ込んでからローラー回します。」
  • 「端が乾く前にウエットエッジつなぎます。」
  • 「タッチは艶合わせしてからフェザーでぼかします。」

まとめ:刷毛塗装は「細部」と「仕上げ」を決める要

刷毛塗装は、単なる代替手段ではなく、細部の精度と全体の印象を決める重要な工程です。ダメ込みやタッチアップ、木部の仕上げなど、内装の現場では毎日のように登場します。適切な刷毛選定、下地と環境の管理、ウエットエッジやストロークの基本を押さえれば、ムラや刷毛目は確実に減らせます。今日からは、道具を使い分け、言い回しを押さえ、現場で自信を持って「ここは刷毛でいきます」と言えるはず。小さな面の積み重ねが、仕上がり全体のクオリティを底上げします。まずは手元の一本から、丁寧に整えて現場に臨みましょう。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
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