内装現場で欠かせない「ホウキ」ガイド|種類・選び方・プロの掃き方の極意
現場で「ホウキ持ってる?」「先にホウキ掛けといて」と言われたけれど、どんなホウキを使えばいいのか、どう掃くのが正解なのか……初めてだと迷いますよね。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われる「ホウキ」を、プロの視点でわかりやすく解説。種類や選び方、実際の使い方、掃き筋が残らないコツまで、必要な情報を一つにまとめました。読み終えるころには、「どの場面でどのホウキを持ち出すか」「どう掃けば早くてキレイか」がはっきり見えるはずです。
現場ワード(キーワード)
読み仮名 | ほうき |
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英語表記 | broom / push broom |
定義
建設内装の現場で「ホウキ」とは、床面や巾木際、サッシ溝などに落ちた粉じん・木くず・ビス・テープ片などのゴミを集めるための清掃道具を指します。一般家庭の座敷箒とは異なり、現場では広い面積を効率よく掃ける幅広の「押しホウキ(自在ホウキ)」や、合成繊維の耐久性タイプが主流。用途や工程に合わせて、毛の硬さ・幅・柄(え)の長さ・素材を使い分けるのがプロの基本です。
ホウキの種類と素材
内装の室内掃きに適したタイプ
内装現場の室内床(スラブ、コンパネ、仕上げ直前の下地)で多用されるのは、合成繊維の押しホウキ(自在ホウキ)。毛はポリプロピレン(PP)やPETが一般的で、軽くて水に強く、粉じんにも負けません。毛先が「先割れ」加工されたものは細かい粉の捕集力が高く、パテ粉やボード粉を舞い上げにくいのが特長です。ヘッド幅は450~600mmが標準で、通路が広い新築現場では600mm、狭い区画や什器まわりでは450mmが扱いやすいでしょう。
仕上げ面のキズ・静電気対策向け
床シート・フローリング・タイルカーペットなどの仕上げ施工中や引渡し前は、よりソフトな毛を選びます。超極細合成繊維や、帯電を抑える導電性繊維を混ぜたタイプはホコリの再付着を低減。静電気が強い季節は、静電気防止スプレーを毛に軽く塗布するか、帯電防止ホウキを使うとムラなく仕上がります(ただし、導電が必要な特殊床材はメーカー推奨の清掃方法に従ってください)。
屋外・荒ゴミ用(あらごみ)
出入口や仮囲い外、外部バルコニーの荒掃きには、毛が硬いタイプが便利です。竹箒やシダ箒は砂・落ち葉の集塵力が高い反面、室内のデリケートな仕上げには不向き。屋外専用として使い分け、室内に持ち込まないのが鉄則です。
柄(え)とヘッドの種類
柄は木製とアルミが主流。アルミは軽く、長時間の清掃でも疲れにくいのが利点です。伸縮式は保管・運搬に便利で、身長や作業姿勢に合わせて長さ調整が可能。ヘッドはネジ込み式・クリップ式・ジョイント式があり、現場ではヘッドだけ交換できるジョイント式が経済的です。可動ジョイントの「自在ホウキ」はヘッド角度を変えられ、巾木際や机下の掃き残しを減らせます。
サイズ選びの目安
現場での使い勝手はヘッド幅と柄の長さで変わります。目安は以下の通りです。
- 600mm前後:広い区画・長い通路・躯体スラブの荒掃きに最適
- 450mm前後:区画の多い内装フロア、什器・脚立まわり、仕上げ前の確実な清掃に
- 300mm前後:階段、トイレ、サッシ溝や狭所のポイント清掃用
- 柄の長さは約1200~1500mmが標準。背の高い方や広範囲を掃くなら長め、狭所や斜め掃きが多いなら短めが扱いやすいです
現場での使い方
言い回し・別称
現場では「ホウキ掛け」「押しホウキ」「自在ホウキ」「先割れ(毛)」「荒(あら)用」「仕上げ用」といった言い方をします。「ホウキ入れて」は軽く掃いて、という意味。「山(やま)作って」「山寄せて」は、ゴミを一か所に集める指示です。ホウキとセットで「ちりとり(ダストパン)」を用意するのが基本です。
使用例(3つ)
- 「床シート貼る前に一回ホウキ掛けして、粉をちりとりで回収しといて」
- 「壁パテの粉が乗ってるから、先割れのホウキで優しめに掃いて」
- 「通路は荒用600ミリで山作って、最後は仕上げ用で仕上げ拭き前の掃き」
使う場面・工程
- 墨出し・レイアウト前:粉じんを除去して基準線が見やすい床に整える
- 軽鉄・ボード工事後:切り粉やビスを回収し、パテ・クロス下地を汚さない
- パテ研磨後:パテ粉の舞い上がりを抑えつつ回収(静かに低い姿勢で掃く)
- 床下地調整・シート貼り前:微粉・砂粒を残さないことで密着不良や膨れを防止
- タイルカーペット・OAフロア:糸くずや切り粉を都度掃除し、仕上がりムラを回避
- シーリング・塗装前:埃の付着防止。特に入隅・サッシ際は丁寧に
- 引渡し前クリーニング:掃き→集塵機→拭きの下処理として
関連語
- ちりとり(ダストパン):集めたゴミを受ける道具。ゴム縁付きが床当たり良好
- 集塵機(業務用掃除機):微粉や有害粉じんを安全に回収。HEPA対応が望ましい
- ブロワ:隙間の粉を吹き出す。室内での多用は粉の舞い上がりに注意
- モップ・ダスター:仕上げ面の最終クリーニングに併用
- 養生材:粉が溜まりやすい養生端部・テープ際は重点清掃ポイント
掃き掃除の基本手順(プロの流れ)
- 準備:エリアを区切り、出口方向に向かって掃く導線を決める。ちりとりとゴミ袋を先回り配置
- 荒掃き:大きなゴミ・切り粉・砂利を硬めのホウキで山に集め、ちりとりで回収
- 粉じん回収:先割れ・柔らかめのホウキで低い角度(毛先を寝かせ気味)にし、ゆっくり押すように掃く
- 際・入隅:ヘッド角度を変えて巾木際・柱まわり・サッシ溝の粉を手前に引き出す
- 最終チェック:光を背にして床面を斜めから見て、粉の筋や取り残しを確認
- 仕上げ前:必要に応じて集塵機で微粉を吸引し、拭き取りにバトン渡し
ポイントは「毛先に仕事をさせる」こと。力任せに押し付けず、毛先が床をなでるイメージで進めると粉が舞いません。
仕上げを傷つけないコツ
床仕上げ材の表面は思った以上にデリケートです。特にビニル床シートやフローリングでは、砂粒一つがスクラッチの原因になります。掃く前に、目視で砂粒や金属片を先にピックアップ。仕上げ面はやわらかい毛のホウキに持ち替え、毛先を軽く当てて一方向へ静かに進めます。木目や溶接目地の方向に沿って掃くとキズが目立ちにくく、粉の線も残りません。巾木・金物・見切りといった異種素材の境目は、角度を浅くして毛先だけを触れさせるのがコツです。
よくある失敗と対策
- 粉が舞って余計に汚れる:スピードを落とし、毛を寝かせて押し掃き。必要に応じて軽く霧吹き(仕上げ材を濡らさない範囲)や集塵機併用
- 掃き筋が残る:先割れの柔らかい毛に変更し、一方向で長めのストロークに統一
- 取り残しが多い:作業区画を小さく区切る。照明を低い角度から当てて確認
- 仕上げにキズ:荒用と仕上げ用を別管理。屋外用ホウキを室内に持ち込まない
- 毛がすぐ開いてコシがなくなる:保管は毛を上向きに吊るす。重い物を載せない、濡れたまま放置しない
ホウキと掃除機・ブロワの使い分け
ホウキは「集める・ならす」のが得意。作業の合間に素早く清掃でき、電源も不要で静かです。一方、微細粉じんや健康リスクのある粉(例:既存塗膜粉じん等)は、フィルター性能を備えた集塵機の領域。ブロワは隙間の粉を吹き出せますが、屋外や無人エリア向けで、室内では粉が舞い戻ることがあります。基本は「荒掃き=ホウキ」「微粉=集塵機」「隙間の押し出し=最小限のブロワ」です。
メンテナンスと保管
終業時に毛先のゴミを手でしごき、軽く水洗い。油分や接着剤が付いた時は中性洗剤で洗い、完全乾燥してから保管します。吊り下げ保管で毛の変形を防ぎ、屋外用・室内用・仕上げ用をラベル分けして混用を避けます。ヘッドが外せるタイプは、毛が開いたらヘッドのみ交換。柄は定期的に緩みを点検しましょう。
衛生・安全への配慮
掃き掃除は粉じんを舞い上げやすいため、必要に応じて防じんマスクや保護メガネを着用します。既存建築の改修で粉体の成分が不明な場合は、安易に乾式で掃かず、上長の指示・施工計画・メーカー資料に従って集塵機や湿式清掃を選択してください。特定の有害物質が懸念される場合は、法令および現場ルールに基づく対策が優先されます。
代表的なメーカー・製品の例
- 山崎産業(CONDORブランド):プロ清掃向けラインナップが豊富。押しホウキやちりとりの定番が揃い、サイズ・毛質の選択肢が広いのが特長
- テラモト(TERAMOTO):業務用清掃用品の老舗。現場で使いやすい堅牢なホウキから仕上げ向けのソフトタイプまで幅広い
- アズマ工業:清掃道具の専業メーカー。軽量で扱いやすい室内向けホウキや細部清掃ツールに強み
- トラスコ中山(TRUSCO):プロツール総合ブランド。現場調達しやすい規格品が多く、コスパ重視の押しホウキも入手しやすい
上記は一例で、現場によって支給品・指定品が異なる場合があります。調達前に現場ルールを確認しましょう。
購入前・持出前のチェックリスト
- 用途区分:荒用か仕上げ用か、屋外か室内か
- 毛質:硬さ・先割れの有無・帯電対策の要否
- サイズ:ヘッド幅(450/600mmなど)と柄の長さが作業環境に合うか
- ジョイント:ヘッド交換可能か、既存の柄規格と合うか
- 付帯品:ちりとり(ゴム縁付き)、ゴミ袋、ブラシ(毛の手入れ用)
- 保管方法:吊り下げ場所や持ち運びケースが確保できるか
細かい粉に強くなるプロの工夫
ボード粉やパテ粉は軽く舞いやすいので、ホウキの毛先に微量の湿り気を持たせると回収率が上がります。とはいえ濡らしすぎはダマや筋の原因。霧吹きで床面にうっすら湿りを与える程度がベター(仕上げ材を濡らす場面では不可)。また、掃く前に養生端部や入隅の粉を小型ブラシで手前に出しておくと、ホウキのひと掃きが効きます。
ホウキのエチケット(共有現場でのマナー)
共用のホウキは、使い終えたら毛先のゴミを落とし、屋外・屋内をまたがないよう戻し場所を守るのが基本。屋外用で室内を掃くのは避け、仕上げ面には仕上げ用のみを使用。次の人が気持ちよく使えるよう、ちりとりのゴミは袋にまとめて口を縛ってから廃棄します。
ミニ用語辞典:覚えておくと現場が早い
- ホウキ掛け:ホウキで全体を掃くこと。「一回ホウキ掛けて」=下地の粉を落としておいて
- 先割れ:毛先が細かく分かれた加工。微粉の回収に強い
- 自在:ヘッド角度が変わる構造。入隅や什器下で取り回しが良い
- 山(やま):掃き集めたゴミの小山。ちりとりで回収するための集積
- 荒掃き・仕上げ掃き:段階的な清掃。荒掃きで大物・砂を先に除去し、仕上げ掃きで微粉を取る
よくある質問(Q&A)
Q. 先割れのホウキはいつ使うべき?
A. パテ粉やボード粉のような微細な粉じんを回収したいとき、仕上げ前の最終掃きに最適です。荒い砂粒や切り粉が多い場面は、まず硬めの毛で荒掃きしてから先割れに切り替えます。
Q. フローリングはホウキで傷つきませんか?
A. 砂粒や金属片が挟まると傷の原因になるため、先に目視で拾い、柔らかい毛のホウキを軽い力で一方向に掃くのが安全です。気になる場合は不織布モップやダスターを併用してください。
Q. 静電気でホコリが戻ってしまいます。
A. 帯電防止タイプのホウキや、軽い霧吹きで床の静電気を抑えると改善します。乾燥が強い季節は、清掃後に集塵機+微湿拭きのセットが効果的です。
Q. ホウキはどのくらいで交換しますか?
A. 使用頻度・環境によりますが、毛先が広がりコシが戻らなくなったら交換サイン。月単位で酷使する現場ならヘッドだけを定期交換するとコストを抑えられます。
Q. ブロワで飛ばした方が早くない?
A. 室内では粉塵が舞い上がり、別エリアに拡散するリスクが高いです。基本はホウキと集塵機の併用で、ブロワは屋外や無人エリア、換気が十分な場面に限定しましょう。
まとめ:ホウキを使い分ければ、仕上がりと段取りが速くなる
内装現場の「ホウキ」は、ただの清掃道具ではありません。工程のつなぎを滑らかにし、仕上げの品質とスピードを底上げする現場の相棒です。荒用と仕上げ用、毛の硬さと幅、柄の長さを現場に合わせて選ぶ。毛先に仕事をさせ、静かに一方向へ掃く。屋外用と室内用を混ぜない。この基本をおさえるだけで、粉の舞い上がりやキズを防ぎ、次工程の精度がぐっと上がります。今日から「ホウキ掛け」を、ただの掃除ではなく、品質を上げる一手として味方につけてください。