現場で言う「サンダー」って何?用途・種類・安全な使い方まで現役内装職人がやさしく解説
「サンダーって、結局なにを指してるの?」「グラインダーと違うの?」――内装や改修の現場に入ると、先輩が当たり前のように「サンダーかけといて」「サンダー当てといて」と言いますよね。初めて聞くと戸惑うのは当然です。本記事では、建設内装現場で日常的に使われる現場ワード「サンダー」を、意味・使い方・工具の種類・安全ポイントまで、プロの目線でわかりやすく整理します。読み終わるころには、指示の意図がスッと理解できて、安心して作業に入れるようになります。
現場ワード(キーワード)
読み仮名 | さんだー |
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英語表記 | Sander / Angle Grinder(Disc Grinder)※文脈により変わる |
定義
内装・建設現場の会話で言う「サンダー」は、文脈で2通りの意味で使われます。もっとも一般的なのは「ディスクグラインダー(アングルグラインダー)」の俗称です。金属やコンクリートを切断・研削・バリ取りする電動工具で、「サンダー当てといて=グラインダーで削っておいて」の意味になります。一方、木部や塗装下地の研磨で使う「オービタルサンダー」「ランダムサンダー」「ベルトサンダー」など本来の“Sander(研磨機)”を指す場合もあります。現場ではどちらも「サンダー」と呼ばれるため、指示を受けたら「どのサンダーですか?(グラインダーですか?木工用ですか?)」と確認するのが安全で確実です。
現場での使い方
言い回し・別称
・「サンダーを当てる」:グラインダーやサンダーで表面を削る、バリを取る、面を整えること。
・「(ディスク)グラインダー」:正式名称。職種や会社によっては「グラインダー」で統一。
・「ディスク」「砥石(といし)」「刃(は)」:装着するアタッチメントの呼び方。
・「当て勘」「面出し」:押し当てる力加減、面の精度を整えること。
使用例(3つ)
- 「LGSの切り口、サンダーでバリ取ってから建て込んで。」(軽量下地の端部処理)
- 「役物のステンレス、焼け出ないようにフラップで優しくサンダー当てて。」(仕上げ品の研磨)
- 「巾木見切りの干渉部、ダイヤで少しだけサンダー入れて逃がしといて。」(モルタル・タイル・コンクリートの微調整)
使う場面・工程
- 軽量鉄骨(LGS)や曲げ板の切断後のバリ取り・面取り
- 金物(アングル、フラットバー、ブラケット)の調整・サビ落とし
- コンクリートの出っ張り除去、タイル・モルタルの断面調整(ダイヤモンドブレード使用)
- 木口の研磨、塗装前の下地調整(オービタル/ランダムサンダー)
- 既存シーラーや接着剤痕の剥離・目荒らし(研磨ディスク)
関連語
- ディスクグラインダー/アングルグラインダー:L字形で側面回転の一般的なグラインダー
- オービタルサンダー/ランダムサンダー:木工・塗装下地の面研磨に使うサンダー
- ベルトサンダー:ベルト状研磨材で大量に削るサンダー
- ダイヤ(ダイヤモンドブレード):コンクリ・タイル用の刃
- フラップディスク:仕上げ寄りの研磨ディスク(羽根状)
- ワイヤーカップ:サビ落とし・塗膜剥離用
「サンダー」と呼ばれている工具の種類と仕組み
ディスクグラインダー(アングルグラインダー)
回転軸に砥石や切断砥石、ダイヤモンドホイールを取り付けて、高速回転で研削・切断する工具。100mm(4インチ)クラスが一般的で、鉄・ステンレス・アルミ・コンクリートなど多用途。火花と粉塵が多いため養生と安全管理が重要です。
オービタル/ランダムサンダー
平らなパッドが小刻みに振動(オービタル)またはランダム軌道で回転振動し、紙やすりで面を整える工具。木工・建具・塗装下地に使います。集じん機と接続できる機種が多く、粉塵対策がしやすいのが特徴です。
ベルトサンダー
エンドレスベルトの研磨材が回転し、材料を一気に削る工具。面の段差修正や大量の削りに強い反面、削れ量が大きいので仕上げには不向き。木工場や躯体補修の場面で見かけます。
共通の基本
いずれも「適切なアタッチメントの選定」「正しい押し当て角度」「過負荷をかけない」の3点が要。間違った刃や番手を使うと焼け・傷・逆に時間がかかるなどのトラブルになります。
代表的なアタッチメント(砥石・刃・アクセサリ)と用途
- 切断砥石(レジノイド)/金属用:鉄・ステンレスの切断。横方向のこじりは厳禁。
- オフセット砥石(研削砥石):バリ取り、面出し。角度20~30度を目安に軽く当てる。
- フラップディスク:羽根状の研磨布で仕上げ寄りの研磨。ステンレスの焼けを抑えたいときに便利。
- ダイヤモンドブレード(乾式)/セグメント・ターボ等:コンクリ・モルタル・タイル・石材の切断や面取り。
- ダイヤカップ(研削用):躯体の出っ張り除去、段差修正。粉塵が多いので集じん必須。
- ワイヤーカップ/ブラシ:サビ落とし、旧塗膜・接着剤残渣の除去。
- ファイバーディスク+ラバーパッド:金属の面研磨。番手違いで荒~仕上げを調整。
- サンディングペーパー(オービタル/ランダム用):木部研磨、塗装下地の目荒らし。番手は#60~#320程度で段階的に。
安全ポイント(現場で必ず押さえるべき基本)
グラインダー類は便利な反面、事故が起きやすい工具です。以下は最低限のチェックリストです。
- PPEの徹底:保護メガネ(できればフェイスシールド)、防塵マスク(対象粉じんに応じた規格)、耳栓、手袋、長袖。
- カバー(ガード)は外さない:火花方向の制御と破砥時の防護に不可欠。
- 砥石の適合確認:回転数(最高使用周速度)・材質・サイズを本体に適合させる。割れ・欠けは即廃棄。
- リングテスト(砥石打音点検):ビトリファイド砥石等は軽く叩いて澄んだ音か確認(割れを発見)。
- 無負荷で試運転:取り付け直後は1分ほど回して振れや異音がないか確認。
- 切断砥石に横押しは禁止:側面荷重は破砥の原因。切るときはまっすぐ。
- ワーク固定:万力・クランプで材料を固定。手で持ったまま切らない。
- キックバック対策:刃のかみ込みが出やすい向き・姿勢を避け、体の正面を外す。
- 火花・粉塵の養生:可燃物の撤去、火気養生シート、消火器常備。周囲への配慮と作業許可。
- コード・バッテリー点検:被覆破れ、端子の発熱、再起動防止機能(再始動防止)を確認。
- 集じん・換気:ダイヤ研削は粉じんが多い。集じんカバー+集じん機を併用し、シリカ粉じん対策。
- 休止時は完全停止を待つ:テーブルや床に置く前に回転が止まるまで待つ。刃を上向きに立てかけない。
「サンダー」の選び方(内装現場向けの実用基準)
- サイズ:100mmクラスは取り回し◎。125mmは面出し効率◎。用途と手当たりで選ぶ。
- 電源:充電式は機動力重視(18V/36V)。有線は連続作業・パワー安定。現場電源事情で使い分け。
- モーター:ブラシレスは耐久・効率が高くメンテも楽。負荷制御やブレーキ付きは安全性向上。
- スイッチ:パドル(デッドマン)タイプは安全、スライドは連続作業が楽。作業姿勢で選定。
- 安全機能:キックバック軽減、ソフトスタート、再起動防止、過負荷保護、無線連動集じん(サンダー側は少ないがあると便利)。
- 握りやすさ・重量:細径ボディ・低重心は疲労軽減。長時間の面出しは振動値の低い機種が有利。
- 防じん・耐久:粉じんが多い環境に強いシール構造は寿命に直結。
代表的なメーカー(日本の内装現場でよく見るブランド)
- マキタ(Makita):国内現場の定番。充電式ラインナップが豊富で、グラインダーもサンダーも選択肢が広い。
- ハイコーキ(HiKOKI/旧日立工機):パワー感と耐久性に定評。安全機能付きモデルが多い。
- ボッシュ(Bosch):欧州系。グラインダー、ランダムサンダーともにバリエーションがあり、集じん適性が高いモデルも。
- パナソニック(Panasonic):充電工具に強み。現場用途に合わせた堅牢設計のディスクグラインダーを展開。
- 京セラ(KYOCERA/旧リョービ):コストパフォーマンスに優れ、軽作業や予備機としても人気。
- ミルカ(Mirka):木工・塗装下地向けランダムサンダーの評価が高く、粉じん対策に優れたシステムを展開。
- フェスツール(Festool):仕上げ研磨分野で支持。集じんと組み合わせた高品位な下地づくりに強い。
基本の使い方(ディスクグラインダー編)
- 準備:対象材と目的を確認し、適合する刃(砥石・ダイヤ)を選定。最高回転数とサイズ適合を再確認。
- 取り付け:電源を抜いてから装着。付属レンチで確実に締付。刃の回転方向指定があれば合わせる。
- 点検:ガード位置を調整。スイッチ類の動作、コード・バッテリーの状態をチェック。
- 試運転:無負荷で1分ほど回し、振動・異音がないか確認。
- 作業姿勢:足場を安定させ、体の正面を刃の進行方向から外す。火花の向きを制御。
- 当て方:研削は20~30度で軽く当て、面で削る。切断はまっすぐ、こじらず、無理に押し込まない。
- 冷却・休止:連続負荷時は小休止を挟み、刃の焼けや本体の過熱を防ぐ。
- 後処理:完全停止を待ってから置く。刃はケース保管、粉じんは掃除・点検。
木工・塗装下地のサンダー(オービタル/ランダム)基本
- 番手の上げ方:#80→#120→#180→#240…と段階的に。飛び番は傷が残りやすい。
- 圧力:押し付けすぎず、機械の自重+αで当てるのが基本。
- 目詰まり対策:メッシュペーパーや多穴ペーパー+集じんで能率UP。
- エッジの当てすぎ注意:角はすぐ落ちる。端部は軽く通す程度に。
よくある失敗と対処
- 切断が曲がる:こじっている可能性。刃の侵入角を浅めに、複数回に分けて切る。ガイドを使う。
- 砥石が早く減る・焼ける:過大な押し付け、番手不適合。速度を落とし、適材適刃へ変更。
- ステンレスの焼け・変色:フラップディスクの番手を上げ、発熱を抑える。冷却休止を挟む。
- 粉じんがひどい:集じんカバー+集じん機を併用。乾式ダイヤは特に養生と換気を強化。
- 振れ・ビビり:フランジ・ホイルの当たり面を清掃し、センタリングをやり直す。劣化砥石は交換。
- キックバック:切り込み過ぎや保持不良が原因。材料固定と切断方向を見直し、負荷変動に備える。
現場での伝え方・聞き方(誤解を減らすコツ)
- 「どのサンダーですか?」:グラインダーか、木工用サンダーかをまず確認。
- 「刃は何で?」:金属用砥石、ステンレス用、ダイヤ(セグ・ターボ)、フラップなど具体化。
- 「対象材と仕上げは?」:鉄・SUS・アルミ・モルタル・タイル・木部、仕上げの有無で選定が変わる。
- 「火気・粉じんの許可は?」:火花作業の申請、養生、作業時間帯などを確認。
- 「集じんの有無は?」:近隣や同時作業者への配慮として重要。
法令・現場ルールの基礎知識(概要)
現場・元請のルールに準拠するのが大前提です。一般的には、
- 火気作業管理:グラインダーは火花・高温粉じんが出るため、火気作業扱いとなる現場が多い。作業届・許可、立哨、消火器・火花養生が求められることがあります。
- 粉じん対策:シリカ等を含む粉じんは健康リスクがあるため、適切な防じんマスク・集じん・換気の実施が必要。
- 騒音配慮:時間帯や周囲の作業と調整。必要に応じて防音パネルや連絡体制を整備。
- 感電・墜落災害対策:コード養生、足場・脚立の安全確保、上部作業時は落下防止。
詳細は各現場の安全衛生協議会・施工計画書に従ってください。
メンテナンス・保管のポイント
- 清掃:使用後はエアブローやブラシで粉じんを除去。吸気口の目詰まりは発熱と寿命低下の原因。
- 刃の管理:砥石・ダイヤは専用ケースで割れ・湿気を防止。最高使用期限の表示がある製品は遵守。
- 可動部点検:フランジ・ナット・ガードの変形や破損確認。ガタつきは即交換。
- 電装:コードの被覆破れ、バッテリーの異常発熱・膨れをチェック。ブラシモーターはカーボンブラシの摩耗点検。
- 保管:乾燥・防塵環境で。現場搬入時はケースに収納し、刃は外して運搬するのが安全。
内装職人が実務で使い分ける基準(簡易フローチャート)
- 金属の切断=ディスクグラインダー+金属用切断砥石(SUSは専用品が安心)
- 金属のバリ取り・面出し=オフセット砥石→フラップで整える
- コンクリ・タイルの切り欠き=ディスクグラインダー+ダイヤモンドブレード(養生+集じん)
- 躯体の出っ張り除去=ダイヤカップ+集じんカバー
- 木部の下地研磨=ランダムサンダー+番手を段階UP(#80→#120→#180→#240)
まとめ:迷ったら「用途・刃・安全」の3点確認
現場で「サンダー」と言われたとき、まずは「どのサンダー(グラインダーor木工用)」「対象材」「求める仕上げ」を確認し、適切な刃を選ぶ――これだけで仕上がりと安全性は大きく変わります。火花や粉じんを伴う作業だからこそ、PPE・養生・機能付きの本体を活用し、無理をせず段階的に進めるのがプロのやり方です。明日からは自信を持って「サンダー当てときます」と言えるはず。疑問があれば、遠慮なく周囲に「どのサンダーか」「刃は何を使うか」を確認して、確実・安全・きれいな仕上げを目指しましょう。