ご依頼・ご相談はこちら
ご依頼・ご相談はこちら

防水モルタルとは?プロが教える特徴・使い方・失敗しない選び方ガイド

防水モルタルの基礎と現場のコツ:用途・手順・失敗を防ぐポイントまで一気に理解

「防水モルタルって何?どこに使うの?普通のモルタルと何が違うの?」——そんな疑問をお持ちの方へ。内装・改修の現場ではごく当たり前に飛び交う言葉ですが、初めて聞くと少しとっつきにくいですよね。本記事では、建設内装現場での実務を踏まえながら、防水モルタルの意味・使いどころ・正しい施工手順・よくある失敗と対策まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。読み終える頃には、現場での会話がぐっと理解しやすくなり、発注や施工の打ち合わせでも安心してやり取りできるはずです。

現場ワード(防水モルタル)

読み仮名ぼうすいもるたる
英語表記waterproof mortar(cementitious waterproofing mortar)

定義

防水モルタルとは、セメントと砂をベースとしたモルタルに、防水剤やポリマー(樹脂)などの混和材を加え、水を通しにくくした材料の総称です。硬化後のモルタルそのものの水密性・緻密性・付着性を高め、浴室・バルコニーの立ち上がり・ピット・スラブ上などの下地防水や、タイル・左官仕上げの下地として用いられます。塗膜防水(ウレタン・FRPなど)の「膜」で止水する方式と違い、セメント系硬化体の性質で水を遮るのが特徴です。ただし弾性は高くないため、動きの大きいひび割れへの追従は不得手で、下地の補修・ひび割れ対策・目地設計とセットで使うのが基本です。

現場での使い方

防水モルタルは、内装や外装の「水がかりがある部位」で幅広く使われます。言い回しや別称、使う場面、関連語までまとめます。

言い回し・別称

現場では次のように略して呼ばれることがあります。

  • 「防モル」「防水モル」:防水モルタルの略称
  • 「カチオン(で押さえる)」:カチオン系ポリマーを含む下地調整材や防水材を指すことがある(厳密には製品や用途が異なる場合があるため要確認)
  • 「樹脂モル」:ポリマー(樹脂)を混ぜるタイプのモルタルの総称として使われることがある

同じ「防水」と言っても、ウレタンやFRPなどの塗膜防水とは別物です。会話の中で「どの工法の防水か」を明確にするのがトラブル防止のコツです。

使用例(現場での言い回し3つ)

  • 「浴室の立ち上がりは防水モル2回塗ってからタイルね。コーナーはメッシュ入れて。」
  • 「ドレン廻りは増し塗りして5mm確保、翌日吸水試験してから次工程に回して。」
  • 「ひび割れはUカットして止水材で一次止水、上から防水モルで被せて養生しておいて。」

使う場面・工程

  • 室内:浴室・洗面・トイレ・厨房の床・立ち上がりの下地防水、タイル仕上げの前処理
  • 屋外:バルコニーやルーフバルコニーの立ち上がり、腰壁、笠木下地、ドレン廻りの補強
  • 設備廻り:受水槽外面・ピット・側溝・マンホール躯体内面の止水・下地防水(用途可否は製品仕様で確認)
  • 工程上の位置づけ:下地補修→下地清掃・含水調整→(必要に応じて)プライマー→防水モルタル1層目→メッシュ挿入(必要時)→2層目→養生→吸水試験→仕上げ(タイル等)

関連語

  • 止水材(急結セメント系など):漏水をその場で止める一次止水に使う
  • カチオン系プライマー/下地調整材:付着力を高めるための前処理材
  • 無収縮モルタル:収縮を抑えたい補修・充填に使用
  • 伸縮目地・シーリング:躯体の動きを吸収し、ひび割れや漏水リスクを下げる
  • 塗膜防水(ウレタン・FRP・シート):仕上げ防水の別工法。組み合わせる場合は相性確認が必須

防水モルタルの種類(ざっくり把握)

製品ごとに配合や用途は異なりますが、傾向としては以下が代表的です。

  • ポリマーセメント系(2材型・1材型):セメント粉体と樹脂液(または粉末樹脂)で練り、防水性と付着性を両立。タイル下地や浴室の立ち上がりなどで定番。
  • 無機系防水剤混和型:セメントと砂に無機系防水剤を混ぜて練るタイプ。緻密化・撥水性付与で透水を抑制。
  • 速硬・早強タイプ:短時間で硬化するため、短工期の補修や止水後の被覆に向くが、作業時間が短く扱いには注意。
  • 繊維・メッシュ併用タイプ:ひび割れ抑制やコーナー部の補強を目的に、ガラス繊維メッシュ等と組み合わせて使う工法も一般的。

目的(下地防水か、補修兼用か、タイル下地か)と部位(屋内・屋外、床・立ち上がり)によって推奨タイプが異なります。必ずメーカー仕様書を確認しましょう。

性能と確認ポイント

一般的に、各社の技術資料には以下の試験項目が示されます。数値は製品ごとに異なるため、カタログ・SDS・施工要領書で確認してください。

  • 透水性・吸水率(どれだけ水を通しにくいか)
  • 付着強度(下地や上塗りとの接着力)
  • 曲げ・圧縮強度(機械的強度)
  • 耐久性(凍結融解・温冷繰り返し・中性化への抵抗性 等)

防水モルタルは「水を一切通さない魔法の材」ではありません。下地の割れや動き、排水計画、納まり、養生不良などが重なると漏水の原因になります。材料性能と同じくらい、設計・納まり・施工管理が重要です。

配合・練り方の基本(考え方)

最優先は「製品指定の配合と手順に従うこと」です。そのうえで一般論としての考え方を示します。

  • 水量:練りやすさ重視で水を足しすぎると性能低下(強度・防水性・付着)が起きやすい。規定内で最小限に。
  • 混練:ダマを残さないよう攪拌。ハンドミキサーを使い、均一なペースト状に。攪拌後は所定の「熟成」時間を取る指示がある場合も。
  • 下地含水(SSD):下地は乾燥しすぎても濡れすぎてもNG。一般に「表面は湿っているが水膜がない状態(SSD)」が目安。
  • プライマー:カチオン系など、製品指定のプライマーがある場合は必ず使用。

自社配合で作る場合、セメント:砂=1:2〜3程度に防水剤やポリマーを加える方法もありますが、性能のばらつきが出やすいので、初心者や品質重視の場面では既調合の専用材を推奨します。

施工手順(下地処理から養生まで)

現場での基本的な流れです。必ず製品仕様を優先し、以下はチェックリストとして活用ください。

  • 1. 調査・下地処理:浮き・脆弱部・レイタンス・油汚れを撤去。ひび割れはUカット・Vカットし、漏水は止水材で一次止水。
  • 2. 清掃・含水調整:ダストを除去し、下地をSSD状態へ。
  • 3. プライマー:指示があれば規定量・規定時間で塗布し、オープンタイム厳守。
  • 4. 1層目塗り:コテ・ブラシで押さえ込みながら均一に。入隅・出隅は先行して丁寧に塗り回す。
  • 5. メッシュ補強:必要箇所(コーナー・ひび割れ周辺・ドレン廻り)にガラス繊維メッシュ等を挿入し、被覆。
  • 6. 2層目塗り:規定間隔後に増し塗り。所定厚みを確保。
  • 7. 養生:直風・直射日光・急乾燥を避け、適切な湿潤・温度管理。初期24時間は特に注意。
  • 8. 吸水・漏水確認:必要に応じて吸水試験や水張り(仕様要確認)を行い、問題がなければ次工程へ。

よくあるミスは「下地粉塵の残り」「暑さ・風による急乾」「所定厚み不足」「ドレン廻りの段差」「立ち上がりの塗り回し不足」です。最終的に水が集まるのはドレン周辺。最優先で丁寧に納めましょう。

仕上げ厚みと必要数量の目安

製品・配合で変動しますが、一般的な目安は以下です。

  • 標準塗り厚:1層あたり約1〜2mm、2層で合計2〜4mmとするケースが多い
  • ドレン・コーナー:応力集中しやすく漏水リスクが高いため、局所的に厚め(例:合計3〜5mm)
  • 材料必要量:厚み1mmあたり約1.6〜2.0kg/m²(比重や配合で変動)。例えば合計4mmなら約6.5〜8.0kg/m²が目安

必要数量は「面積×厚み×単位質量」で算出し、ロス分(5〜15%程度)を見込みます。試し練り・試し塗りで感覚を掴むと精度が上がります。

よくある失敗と対策

  • ひび割れが出た:急乾燥・厚塗り一発・水多すぎが原因になりやすい。薄塗り多層・適切養生・水量厳守・メッシュ併用で対策。
  • 剥離した:粉塵残り・油分・プライマー省略・下地の動きが要因。下地処理の徹底と規定プライマー使用、目地計画の見直し。
  • 漏水が止まらない:ひび割れ追従が必要な部位、躯体の動きが大きい、ドレン納まり不良。止水材で一次止水→防水モル→必要に応じて塗膜防水の併用や目地・シーリングの再設計。
  • 白華(エフロ)発生:過度の含水・排水不良・施工後の水掛かりが原因。水の滞留を避け、乾燥・養生と納まり改善。
  • 色むら・表面不良:練り水量のばらつき・攪拌不足・施工間隔の不統一。配合管理と工程管理で抑制。

選び方のポイント(部位・目的別)

  • 屋内のタイル下地(浴室・洗面・厨房):ポリマーセメント系で付着性・防水性のバランスが良いもの。メッシュ併用可否も確認。
  • 屋外立ち上がり・笠木下地:耐候性・耐久性、上塗り(塗装・仕上げ)との相性を確認。温度・湿度条件の許容範囲も重視。
  • 補修兼用(クラック・欠損):可使時間・早強性・付着性のバランス。ひび割れ幅と下地の動きに応じて、無収縮やメッシュの採用を検討。
  • 仕上げとの相性:タイル・石・塗膜防水・塗装など、次工程のプライマー・接着剤との適合性をカタログで必ず確認。
  • 試験成績・仕様書の充実度:透水・吸水・付着などのデータが明確で、施工要領が具体的な製品は現場管理がしやすい。

既存防水との相性・下地について

既存がウレタン・FRP・シートなどの塗膜防水の場合、上から防水モルタルを直接施工するのは基本的に推奨されません。撤去または適合するプライマー・下地処理が必要です。既存タイルの上からの場合も、付着性を確保できる専用プライマーやサンディング等の前処理が求められます。相性はメーカーの適用表で必ず確認してください。

環境条件・安全衛生

  • 施工可能温度:多くは5〜35℃が目安(凍結・結露・直射の条件下では施工しない)。
  • 養生:風・直射日光・高温での急乾燥を避け、初期硬化はとくに注意。必要に応じて湿潤養生。
  • 安全衛生:アルカリ性の粉体。皮膚・目の保護(手袋・ゴーグル)、粉じん対策(マスク)を徹底。SDS(安全データシート)を事前に確認。
  • 保管:直射日光・湿気を避け、未開封で期限内使用。開封後は早めに使い切る。

メーカー(代表例)

以下は日本国内でセメント系防水・補修材、ポリマーセメント系材料などを取り扱う代表的な企業例です(五十音順)。具体的な製品名・仕様は各社公式情報で確認してください。

  • アイカ工業(タイルメント):タイル・石材用接着剤や下地調整材、プライマーなど内装仕上げ分野の製品を幅広く展開。
  • エレホン化成工業:コンクリート補修・防水材の専業メーカー。下地調整材やセメント系防水材のラインアップが豊富。
  • シーカジャパン(Sika):グローバルに展開する建設化学品メーカー。ポリマーセメント系防水材・補修材・接着材などを提供。
  • 太平洋マテリアル:プレミックスモルタルや無収縮モルタルなど、土木・建築向けのセメント系材料を展開。

同じ「防水モルタル」でも、屋内外・仕上げ種別・施工条件で適否が変わります。最新のカタログ・施工要領書・SDSを必ず確認し、疑問点はメーカー技術窓口に相談しましょう。

ケーススタディ:浴室の立ち上がりを防水モルで仕上げる

状況:在来浴室の改修。タイル仕上げ予定。床・立ち上がりを更新し、漏水を防ぎたい。

  • 1. 下地確認:既存タイル撤去後、躯体の浮き・欠損・クラックを点検。漏水があれば止水材で一次止水。
  • 2. 清掃・含水:粉塵除去し、下地をSSDに調整。
  • 3. プライマー:指定のカチオン系プライマーを塗布。
  • 4. 1層目:床から立ち上がりへ連続して塗り回す。入隅は先行。ドレン廻りは段差をなくしハの字に面取り。
  • 5. メッシュ:入隅・ドレン周辺にガラスメッシュを挿入して被覆。
  • 6. 2層目:所定間隔を守って増し塗り。合計厚み2〜4mmを確保。
  • 7. 養生:24時間以上、急乾を防ぎながら静置。必要に応じて吸水試験を実施。
  • 8. 仕上げ:タイル張りへ。接着剤・プライマーは防水モルとの適合品を使用。

ポイント:立ち上がりと床は「面で連続」させ、切れ目がないこと。コーナーとドレン廻りを最重視。厚み不足・急乾燥・粉塵残りは剥離・漏水の典型原因です。

用語補足(初心者がつまずきやすいポイント)

  • 一次止水/二次防水:止水材でその場の漏水を止めるのが一次止水。防水モルタルや塗膜防水で水の経路を断つのが二次防水。両方必要な場面が多い。
  • SSD(表面飽水乾燥):下地表面に水膜がなく、内部は湿っている状態。付着・硬化に好ましい。
  • 可使時間:練り上げ後に施工に使える時間。過ぎた材料は原則使用不可。
  • 養生:材料が性能を発揮できるよう温度・湿度・風などの環境を管理すること。

チェックリスト(発注・施工前の確認)

  • 部位・用途に適した製品か(屋内外、床/立ち上がり、上にタイル/塗装など)
  • 下地処理の段取りは?(浮き撤去・クラック処理・清掃・含水)
  • プライマーの指定は?(種類・希釈・オープンタイム)
  • 必要厚み・層数・メッシュの要否を決めているか
  • 施工可能温度・天候・養生方法の計画は?(風・日射・雨天対応)
  • 数量算出は厚み込みでロスも含めたか
  • 次工程(タイル・防水・塗装)との適合性はカタログで確認済みか

まとめ:防水モルタルを使いこなすコツ

防水モルタルは、セメント系の“下地防水”として、浴室やバルコニーの立ち上がり、ドレン廻りなどで大活躍します。ただし「材料を塗ればOK」ではなく、下地の補修・含水調整・プライマー・厚み確保・養生までがワンセット。さらに、躯体の動きが大きい場所や既存工法との取り合わせは相性確認が欠かせません。まずは製品の施工要領書に忠実に、そして現場ではコーナー・ドレンなどの弱点部位を最優先で丁寧に。これが失敗を防ぐいちばんの近道です。疑問があれば、遠慮なくメーカーの技術窓口や経験者に相談しましょう。正しい段取りと基本の積み重ねで、安心できる“水仕舞い”を実現できます。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
  • 情報の扱い:記事は現場経験・法令・公的資料を根拠に作成。広告掲載時は本文中に明示します。
  • Web:
  • 電話:03-6823-3631
  • お問い合わせ:お問い合わせフォーム