ご依頼・ご相談はこちら
ご依頼・ご相談はこちら

鉄骨錆落としの方法とコツ|現場で失敗しないプロのテクニック完全ガイド

鉄骨の錆落としとは?意味・手順・注意点を内装現場目線で徹底解説

「鉄骨のサビ、どうやって落とせばいい?」「ケレンって何をどこまでやればOK?」——はじめて現場に入ると、こうした疑問だらけになりますよね。この記事では、建設内装の現場で日常的に使われるワード「鉄骨錆落とし」を、プロの目線で、でも初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。意味や使い方はもちろん、現場での正しい手順、工具の選び方、安全対策、失敗しないコツまで、実践的にまとめました。読み終えたころには、明日からの現場で「何をどうするか」が自信をもって判断できるはずです。

現場ワード(鉄骨錆落とし)

読み仮名てっこつさびおとし
英語表記Steel rust removal / Rust cleaning on structural steel

定義

鉄骨錆落としとは、建築の現場で鉄骨(梁・柱・ブラケット・補強プレート等)表面に発生したサビ(酸化鉄)やスパッタ、旧塗膜の浮き、汚れ・油分などを除去し、塗装や被覆など次工程に適した状態へ整える素地調整作業のことです。現場では「ケレン」「ケレン作業」「サビ落とし」と言い換えられることが多く、手工具または電動工具、必要に応じて化学的処理を用いて行います。目的は、サビの再発を抑え、塗料や被覆材の密着性を高め、仕上がりの見栄えと耐久性を確保することです。

現場での使い方

言い回し・別称

内装現場では、以下のような言い方をよくします。どれも基本的には「鉄骨錆落とし」を指しています。

  • ケレン、ケレン作業(1種・2種・3種・4種と強度の目安で呼ぶこともあり、詳細は現場仕様書の指示に従います)
  • 素地調整(そじちょうせい)
  • サビ落とし、サビ取り、磨き
  • グラインダー当てる(電動工具でのケレン)

使用例(3つ)

  • 「この梁、明日までにケレン(鉄骨錆落とし)しといて。浮きサビは全部落として、見える面は#120まで仕上げで。」
  • 「溶接終わったらスパッタ拾って、油分拭き取り→サビ落とし→錆止めまで当日で頼む。」
  • 「ここは露出仕上げだから、角は面が暴れないように当てすぎ注意。塗り前に粉落としと脱脂も忘れずに。」

使う場面・工程

鉄骨錆落としは、以下のような場面で必要になります。

  • 新築での鉄骨現し(あらわし)仕上げ前の下地づくり
  • 改修工事で露出した既存鉄骨の再塗装前
  • 溶接補強部の仕上げ前(スパッタ除去・変色部の処理・バリ取りを含む)
  • 漏水跡や結露で発生した局部的なサビの補修

工程としては、通常「養生→サビ落とし→清掃・脱脂→錆止め塗装→上塗り(必要に応じて)」の順で進みます。火気や粉じん、騒音への配慮、周辺仕上げを傷付けない養生がセットです。

関連語

  • ケレン/素地調整:サビ・旧塗膜・汚れ除去の総称
  • 錆止め(防錆)塗料:ケレン後すぐに塗る下塗り
  • さび転換剤:赤サビを安定化させる薬剤(使える場面は限定)
  • スパッタ:溶接時に飛散・付着する粒状金属
  • グラインダー/ワイヤーブラシ/フラップディスク:代表的な除去工具
  • 脱脂:油分を溶剤や洗浄剤で取り除く処理
  • 素地調整等級(例:St2、St3等):仕上がりレベルの目安として現場指示に使われることがある表現

基本の作業手順(現場基準)

1. 状態を見極める

まず、サビの進行度合い、面積、旧塗膜の状態、油分や汚れの有無、溶接スパッタの付着状況を確認します。赤サビが浮いているだけか、層状に進行して素地が脆くなっているかで、工具と作業量が変わります。見える仕上げ(現し)か否かも重要ポイントです。

2. 養生・安全確保

飛散粉じん・火花・金属片から周囲を守るため、耐火シートやポリシートで養生します。消火器の準備、火気作業の許可申請(現場ルールに従う)、近隣への騒音配慮も忘れずに。個人防護具(防じんマスク・保護メガネ・耳栓・手袋・長袖)を必ず着用しましょう。

3. 工具を選ぶ

軽度のサビや細部は手工具(ワイヤーブラシ、スクレーパー、サンドペーパー#80~#120)。面積が広い、固着が強い場合は電動工具(ディスクグラインダー+ワイヤーカップ、フラップディスク、サンダー)。凹凸や隅部にはベルトサンダーやニードルスケーラーを使う場合もあります。化学的なさび取り剤・さび転換剤は、仕様と安全性を確認のうえ限定的に使用します。

4. サビ・付着物の除去

浮いたサビ、旧塗膜の膨れ、スパッタ、バリを除去します。角(エッジ)は削りすぎると形が崩れるので、当て方と圧を控えめに。面を均一に動かし、当てムラを減らします。深い食われは無理に削り込まず、仕様に応じて補修の可否を監督者と確認しましょう。

5. 研磨の番手を整える

仕上げの見栄えや塗料の密着を考え、最終は#80~#120程度で目を整えるのが一般的です。露出で見える梁・柱は、筋がそろうよう一定方向に当てると見栄えが安定します。

6. 清掃・脱脂

ケレン後は削り粉・ダストを丁寧に除去し、ウエスやブラシで払います。必要に応じて脱脂(シンナーやアルコール系)を行い、油分や汗跡を拭き取ります。溶剤の使用は換気・防爆に留意し、法令と現場ルールに従ってください。

7. 錆止め塗装(下塗り)

ケレン後はできるだけ早く錆止めを塗ります。目安として当日中が推奨です。遅れるとフラッシュラスト(微細な再発錆)が出やすくなります。塗装は指示された材料・膜厚・乾燥時間を順守し、上塗りの可使時間も管理します。

8. 乾燥・再確認

乾燥後、塗り残し・ピンホール・粉残りによるはじきを確認します。必要に応じて追い塗りを行い、次工程に引き渡します。

仕上がり基準とチェックポイント

現場では明確な基準を図面や仕様書で指示されることがあります。一般的なチェック観点は次のとおりです。

  • 浮きサビや脆い旧塗膜が残っていない
  • 粉じんや油分、手脂が残っていない(脱脂済み)
  • 目荒らしが均一で、えぐりや当て傷がない(見える面)
  • 隅・ボルト周り・溶接ビードまわりが十分に処理されている
  • 処理後すみやかに錆止めが塗られている

素地調整の呼び方として、現場で「St2」「St3」「Sa2.5」などの表現が使われることがあります。これは作業の程度を共有するための目安で、具体の到達レベルは現場の仕様書・監督者の指示に合わせて確認してください。

工具・資材の種類と選び方

手工具(軽度~中程度のサビ、仕上げ・隅部)

  • ワイヤーブラシ:面の浮きサビ除去に万能。真鍮・鋼線など線質に注意。
  • スクレーパー(皮スキ):旧塗膜の膨れ、スパッタの引っ掛かり除去。
  • サンドペーパー/エメリーペーパー:番手#60~#120を使い分け。

電動工具(中~重度、広面積)

  • ディスクグラインダー+ワイヤーカップ/ブラシ:固着サビ・旧塗膜に強力。
  • フラップディスク/フラップホイール:削りと仕上げを両立。番手選択が肝。
  • ベルトサンダー:フラット面の筋出しや均しに便利。
  • ニードルスケーラー:凹凸や溶接部のこびりつき除去(騒音・振動に注意)。

化学的処理(条件付き)

  • さび除去剤(酸性など):赤サビを溶解除去。中和・洗浄・乾燥を徹底し、適合塗料を確認。
  • さび転換剤(リン酸系など):除去しきれない軽微なサビを安定化。上塗り適合性と仕様確認必須。

錆止め塗料(下塗り)の例と選び方

  • エポキシ系:密着・防錆性に優れ、内装鉄骨にも実績が多い。
  • 変性エポキシ、ジンクリッチ(亜鉛粉末配合):仕様に応じて採用。上塗り適合と膜厚管理が重要。

代表的なメーカー例(参考):電動工具はマキタ、HiKOKI、ボッシュ。研磨材は3M、トラスコ中山、ノートン、ミルカ。塗料は日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研、中国塗料。さび関連薬剤は呉工業(KURE)など。製品選定は現場仕様書・製品カタログの適合を必ず確認してください。

安全対策と近隣配慮

  • 保護具:防じんマスク、保護メガネまたはフェイスシールド、耳栓・イヤマフ、耐切創手袋、長袖。
  • 火花対策:耐火シート養生、可燃物撤去、消火器常備、火気作業の許可・監視人配置(現場ルール)。
  • 粉じん対策:集じん機付き工具の使用、養生での区画、十分な換気。
  • 溶剤管理:換気・引火防止、静電気対策、使用後のウエスは金属缶で管理。
  • 高所・足場:墜落制止用器具、踏み外し防止、手元足元の整理、コード養生。
  • 騒音・振動:時間帯配慮、近隣・テナントへの事前周知、必要に応じて低騒音工具を選択。

失敗しないコツ(プロの実践メモ)

  • サビの「浮き」を確実に落とす:表面だけ光らせても内部に脆弱層があれば再発します。
  • 当てすぎ注意:角やエッジは形が崩れやすい。面圧は軽く、往復幅とスピードを一定に。
  • 粉落としと脱脂は別作業:粉じん除去→溶剤拭きの順。ウエスはきれいな面で折り返しながら。
  • ケレン後はその日のうちに下塗り:フラッシュラストの予防と工程短縮に直結します。
  • 温湿度の管理:結露面は絶対NG。朝露や雨上がりは乾燥を待つか送風・除湿で整えます。
  • スパッタ・バリの先処理:塗膜下に凸があると後で目立ちます。先に平滑化してからケレン。
  • 見える面は番手を上げて整える:#80→#120と段階を踏むと筋が揃い、上塗りの乗りが安定。
  • 隅・ボルト周りの取り残し対策:小径ブラシや手工具を併用。最終はライトで斜めから確認。

よくある質問(初心者向けQ&A)

Q. ケレンと錆落としは同じ意味ですか?

A. 現場ではほぼ同義で使われます。ケレンは広義の素地調整(サビ・旧塗膜・汚れ・スパッタ除去)のこと。サビ落としは特にサビに焦点を当てた言い方です。

Q. 化学薬剤だけでサビは取れますか?

A. 条件が合えば効果はありますが、物理的除去(ブラシ・研磨)と併用するのが基本です。薬剤後は中和・洗浄・乾燥が必須で、上塗り塗料との適合確認も必要です。

Q. グラインダーで磨き過ぎると何が問題?

A. エッジが丸くなる、面に波が出る、発熱で変色・焼けが出る、基材を薄くして強度を落とすリスクがあります。番手と当て圧をコントロールし、必要以上に削らないのが鉄則です。

Q. どの番手から始めればいい?

A. サビが強い場合は#60~#80で粗削り→#100~#120で整えるのがわかりやすい流れです。見える仕上げは最後に#120程度で筋をそろえると美観が安定します。

Q. ケレン後、どれくらいで錆止めを塗るべき?

A. 可能なら当日中、できるだけ早くが目安です。気温・湿度が高いとフラッシュラストが早いので、午前ケレン→午後錆止めなど工程を寄せると安心です。

Q. 露出(現し)で仕上がる鉄骨、特別な注意は?

A. 当て傷・波・筋ムラがそのまま見えます。角の保護、番手上げ、一定方向の仕上げ、粉残りゼロ、照明で斜めから最終チェックがポイントです。塗料は指定の艶・色・膜厚に従ってください。

現場で役立つチェックリスト

  • サビの進行度合いと範囲を把握したか
  • 養生・防火・消火器・保護具の準備は万全か
  • 工具(手・電動)と番手、スペア消耗材は十分か
  • スパッタ・バリ・旧塗膜の膨れを先に処理したか
  • 粉じん除去→脱脂の順で清浄度を確保したか
  • ケレン→錆止めまでの時間計画は現実的か
  • 塗料の適合・攪拌・希釈・膜厚・乾燥時間を確認したか
  • 見える面はライトチェックで当てムラがないか
  • 写真記録(着工前・中間・完了)を残したか

用語辞典ミニガイド(押さえておくと安心)

  • 浮きサビ:表面にふくれ・粉化して付着力が弱いサビ。必ず除去。
  • 地鉄(じがね):塗膜やサビを除去した素の鉄面。
  • フラッシュラスト:短時間で出る微細な再発錆。ケレン後の放置や湿度が原因。
  • エッジ(角)養生:角が削れすぎないよう当て方を調整・保護する配慮。
  • 密着性:塗料が素地にどれだけしっかり付くかの性質。素地調整と脱脂がカギ。

工程の前後関係(内装目線の流れ)

鉄骨のサビ落としは、溶接・躯体調整が終わり、金物取り合いが固まった段階で実施するのが一般的です。ケレン→錆止め→上塗りが済んだ後に石膏ボードや仕上げ材を近接施工すると、粉じんや火花のリスクが減らせます。既に仕上がりが近い場合は、養生を厚めにし、粉じんのゾーニング(区画)を意識しましょう。

トラブル事例と対策

  • 塗膜のフクレ・剥離:原因は粉残り・油分・水分残りが多い。清浄度を厳守、乾燥時間を確保。
  • サビの再発:浮きサビ取り残し、錆止めの遅れ、結露環境。工程短縮と湿度管理で予防。
  • 見栄えムラ:番手の混在、当てムラ、部分的なえぐり。研磨方向の統一と段階仕上げで改善。
  • 周囲の焼け・焦げ:火花養生不足。耐火シート追加と火花方向の管理で回避。

まとめ(初心者へのメッセージ)

鉄骨錆落としは、ただ「鉄をピカピカにする」作業ではありません。サビ・汚れ・旧塗膜・スパッタを適切に除去して、塗料や被覆がしっかり密着できる「素地」を作るのが仕事の核心です。ポイントは、状態の見極め・安全と養生・工具と番手の選択・粉落としと脱脂・当日中の錆止め。この基本を外さなければ、仕上がりも耐久性も大きく向上します。

現場では「ケレン」「St2で頼む」「見える面は#120で」などの短い指示が飛びますが、この記事の内容を踏まえれば、指示の意味がきちんと理解でき、段取りと品質を両立できます。迷ったら、仕様書と監督者に確認。安全第一で、確実に。今日のひと手間が、明日の不具合を確実に減らします。

株式会社MIRIX/ミリックスのロゴ
執筆者: 株式会社MIRIX(ミリックス)

内装工事/原状回復/リノベーション/設備更新(空調・衛生・電気)

  • 所在地:東京都港区白金3-11-17-206
  • 事業内容:内装工事、原状回復、リノベーション、設備更新(空調・水道・衛生・電気)、レイアウト設計、法令手続き支援など内装全般
  • 施工エリア:東京23区(近郊応相談)
  • 実績:内装仕上げ一式、オフィス原状回復、オフィス移転、戸建てリノベーション、飲食店内装、スケルトン戻し・軽天間仕切・床/壁/天井仕上げ、設備更新 等
  • 許可・保険:建設業許可東京都知事許可 (般4)第156373号、賠償責任保険、労災完備
  • 品質・安全:社内施工基準書/安全衛生計画に基づく現場管理、是正手順とアフター基準を公開
  • 情報の扱い:記事は現場経験・法令・公的資料を根拠に作成。広告掲載時は本文中に明示します。
  • Web:
  • 電話:03-6823-3631
  • お問い合わせ:お問い合わせフォーム